第5話【能力覚醒】
流星街で生まれて、まっ白な私を拾ってくれたのは…風変りな人だった。
「お前、名前はあるのか?」
「………」
「おっと、まずはこっちから自己紹介しないとな…俺は――――」
彼の名前は《タカフミ・スドウ》
拾ってくれた時は無精髭蓄えた小汚いおっさんだと思ったが…翌日、起きてみたら別人になっていた。
髭を剃って、髪を整えた彼は20代にみえるほど若返っていた。
当時、まだ意識がハッキリしていない私でさえも、「この人だれ?」と小首を傾げる程、彼の変身ぶりは明白だった。
タカフミは、相変わらずぼぉーとしている私に気分を害する事なく、苦笑しながら頭をぽふぽふと撫でた。
「…うーん、やっぱだんまりか…?」
「……う…ん」
「お! 今『うん』って言ったか!?」
「……うん」
「そうか、じゃあお前は名前を言えるか?」
「……うん?」
「あのな…『うん』じゃなくてな、な・ま・えだ」
「な~?」
「………って、無理か」
タカフミははぁ、と深く溜息をつくと、後頭部をぽりぽり掻く。
「うっし…じゃあ、お前の名前を俺がつける!」
「……つ…け?」
「そうだな…ルルリエ、ブランシェ、セレス…とかどうだ?」
「……」
「イヤか…じゃあ…『リーシェ』は?」
「……!」
――――…ザァアアア…
その名前で呼ばれた時、私の脳裏に砂嵐が流れ、…俄かに映像が流れた。
*** ***** ***
『……ト、その絵本、いつも読んでいるけど、好きなのね』
『うん!』
『絵本にでてくる、どの子が好きなのかな~?』
『この子…灰ウサギの【リーシェ】!』
『主人公の白いうさぎちゃんじゃなくて?』
『白うさぎの【マリー】も好きだよ。
でもね…リーシェはもっと大好きなの!
かしこくて、マリーを助けてあげるの。いい子でしょ!』
ぼんやりとして、顔が見えなかった。
でも、“その子”と傍らにいる女性は…まっ白な私の心をとても懐かしい気持ちにさせた。
*** ***** ***
「おーい…どうした?」
「り…しぇ」
「…おっ、気に入ってくれたか! じゃあ…今日からお前は『リーシェ』だ。よろしくな」
タカフミは笑いながら、その名を何回も呼んだ。
私は…こうして『リーシェ』となった。
タカフミのもとで暮らす事になった私。
タカフミは意外にも頭がよかった。
随分な言い方だが、見た目が軽そうな感じだし、初対面の人は外見から人を判断する傾向が強いから致し方ない。
彼は、私が生まれたばかりの存在なのだと理解したのか、まずは生活の基礎を学ばなければならなかった。
歩き方や食事の仕方や文字の書き方…今思えば、随分と丁寧に教えてもらった気がする。
記憶がおぼろげなのでなんともいえないけれど、最初は四苦八苦していたと思う。
でも、だんだんと慣れていって、1ヶ月経過した頃には、年相応になったとタカフミは言っていた。
「タカフミ、これなに?」
「呼び捨てかよ…目上の人には“さん”つけねぇと失礼にあたるんだぞ。ま、俺は『父さん』と言ってもいいけど…」
「タカフミは“とうさん”じゃない」
「…あー、父さんってのは名前じゃなくてだな」
「タカフミは、たかふみだよ」
「…もういい。お前が呼びやすいように呼んでくれ」
「たかふみー」
それから、タカフミの事は『タカさん』と呼ぶ事で決着がついた。
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