第4話【兎は語る】
「………」
薄らと目を開けて、視界に移ったのは見慣れた木造りの天井と…ダンテだった。
「おそよう」
「…どのくらい寝てた?」
起きた第一声は、時間を確認するものだった。
「昼食、もう済ませちまったぞ」
「…そう」
リーシェは瞼を閉じて静かに呟くと、徐に身体を起こそうとする…が、ふらついてしまい、ダンテが咄嗟に支えた。
「今日は休んでろ。此処の所、まったく寝てなかっただろ」
「…ばれてたんだ」
リーシェが微かに目を見張る。
仕事が立て続けになったり、睡眠をとる時間もなかった。
「俺の目は節穴じゃねえんだよ。…適度な睡眠と飯をとらねぇと本番で実力が発揮できなくなるぞ」
「ふふ…貴方が良い見本ね」
リーシェがクスッとおかしそうに笑うと、ダンテは「うるせぇよ」と彼女の唇を人差し指で抑える。
リーシェを再びベッドへ座らせると、ダンテは近くの椅子に腰をおろした。
「『挑戦状叩きつけられた』って言ってたな。―――あいつの目的は何なんだ?」
「…正直に言わないといけない?」
「当たり前だろーが」
ほれ、言えよ…とリーシェの右の頬をむにゅっとつまむ。
いたいいたいと、大袈裟に目を細めるリーシェ。
ダンテは、つまんでいた指を放す。
つままれた所を指先で擦りながら、リーシェは眉毛を少しさげて口を開く。
「…解ったよ。でも、あんまり面白くない話ではないけど…いい?」
【兎は語る】
同時刻―――
「やぁ…また来たんだね」
「団長の命令なんで、大人しく【輝石】になってください」
動く奇妙な掃除機をもった黒髪の眼鏡の女性に、普賢は苦笑する。
「よぉ、あんたが『ダン』か」
「……何者かは知らないが、闘気を流して、此処にいるチーグル達をおびえさせないでもらえないか?」
「いい目をしてるじゃねぇか、気に入ったぜ!」
森で座禅を組んで瞑想にふけっていた時に、突如現れた野性的な大男に、ダンは大いに眉を寄せる。
「……?」
「どうしたの…加奈?」
「いえ、なんか…誰かが潜んでいるような」
「気の所為じゃない?」
「(『絶』を使っているのに、私の気配に気付くなんて…なかなかやるね)」
友達の市と、お茶を楽しんでいた加奈は「そうですね」と返事するも、不安感が拭いきれない。
彼女の勘は当たっていた…侵入者が天井にいる事に。
侵入者の背後には同じく、潜んでいた各領土の手錬れ……彼等を見えない糸で縛りあげて、動けないマリオネットと化していた。
後に、やってきた迷彩服の忍により明らかになる。
『蜘蛛』の魔の手は、着実に他のエクレシアにも及んでいた。
【つづく】
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