第1章:誘拐事件は危険な出会いの始まり
「あの…皆さん、大丈夫ですか?」
フィリアは、思わず部屋の外へ出て声をかけずにはいられなかった。
寸胴鍋とおたまを交互に持ち、ネズミにシチューをぶっかけようとしているバルド。
しかし、ネズミには当たらずに綺麗なカーペットはところどころ変色している。
自らも猫の衣装をきて、ネズミを追いかけるも逆に集めてきた猫達にかまれているフィニ。
折角、設置したネズミホイホイに逆に自分が捕まってしまったメイリン。
そして…ネズミを虫とり網でのほほんとおいかけるタナカさん。
「おう、嬢ちゃん! すまねえが、今オレ達は見てたら分かるだろーが、取り込み中だ!」
「ギャー! かまないでぇええ!!」
「足にネズミホイホイがぁ―――! 助けてですだぁ~!」
「ほほほっ~」
「…はい。大変そうですね」
「悪いが、この戦に巻き込まれたくなけりゃ部屋で大人しくしてな! あっ、ごらっ待ちやがれェ!」
ちょろちょろと素早いネズミに、四人(約一名楽しそう)は悪戦苦闘しているようだ。
♪♪♪~ ♪♪♪~
そんな彼等を少し後方から眺めているフィリアは…ハミングをし始めた。
「へっ…」「あれっ?」
「はい?」「ほほほっ」
すばしっこく逃げていたネズミ達が、ぞろぞろとバルド達の足元をかいくぐり、一斉にある方向へ駆けていく。
そう…ハミングしているフィリアのもとへ。
「ふんふんふーん♪ ふんふんふーん~♪」
ちゅー ちゅちゅ? ちゅちゅちゅー!
フィリアの足元にぞろぞろと輪を囲む形で集まるネズミ達。
「すごーい! ネズミ達が、お客様の歌聞いてるよ~!」
「あんなにたくさん…今なら捕まえられますだ!」
フィニとメイリンがそろ~とネズミ達のもとへ近づこうとするが、「いや、待て…」とバルドが制止する。
「今一歩踏み出すと、あいつらこっちに気付いてまた逃げちまうぞ」
「じゃあどうするだか?」
バルドの目がフィリアに向かう…すると、彼女は視線に気付いたようだ。
ぱちぱちと数回瞬きして、アイコンタクトしてきた。
「…あの嬢ちゃんに任せてみるか」
バルドの言葉で、四人は様子見する事にした。
「ふんふんふーん♪ ふんふふふーん♪」
フィリアはにこっと微笑むとそのままハミングしながら、歩いて移動する。
つられるようにネズミ達も、ちょこちょこと彼女の後を追っていく。
窓が開いたバルコニーへやってくると、屈んでネズミ達にこう言った。
「さぁ、お帰りなさい」
ちゅー、ちゅちゅ~、ちゅちゅちゅー!
フィリアの言葉に、「YES!」と言うように、ネズミ達は一列ずつ並ぶと二階の壁をつたって、外へでていった。
その光景を壁に隠れてみていた四人は、おおっ~! と歓喜する。
「嬢ちゃん、やるなぁー!」
「あのネズミ達を歌で追い出すだなんて…!」
「すごいです! どーやったらそんな事できるんですか?」
「ふふふっ…ちょっとしたネズミよけの歌を創作しただけですよ」
「創作…って今作ったのかよ!?」
「どんなマジックですだか!?」
「その歌教えてくださーい♪」
バルド、メイリン、フィニが、フィリアに次々と質問攻めをしていると…
「まったく…何してるんですか。あなた方は」
タイミングを待っていたかの如く、後方から別の声がした。
ぎくっと三人が一斉に振り返ると…
「お客様になんて事をさせているんですか…」
そこには、愛想よく笑っているもののこめかみに青筋を立てている執事の姿があった。
「「「あっ(げっ)! セバスチャン(さん)」」」
「あらっ…先程の執事さん」
次の瞬間、廊下の一部で雷が鳴り響いた。
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