【6】魔神族の王子の回想


※外伝連載【Brand new page】の番外編

※主に『七つの大罪』の登場人物(メリオダス)視点の物語。

※メリオダスの幼少期の描写は、この小説内の想像の産物です。

※この小説では、魔神王は本来の姿とは別の姿へ変身できる設定にしています。

※オリキャラが登場します。


※今回の話には、原作の第271話以降のネタバレが含まれています。

単行本派の読者様はご注意ください。


※外伝連載を含める当サイトの小説内のエスタロッサは、原作とは大きく乖離する設定となります。

原作沿いを好まれる方は、お読みになるのは回避する事をお勧めします。



*** ***** ***



昔話を語ろうか。

あれは人間の年齢で言えばどのくらいか…ともかく、俺はまだまだ世の中なんて知らねえ純粋な子どもだった。

小せえ子どもは遊ぶ事が大好きだ…そんな事はどの種族でも共通だろう?


だけど、俺の身分は王族であり、魔神王…親父の跡取り息子だ。

学ばなきゃならねえ事がいっぱいあった。

剣や魔法の実技ならまだマシだったが、座学なんて退屈だった。

椅子に大人しく座って、世話役のチャンドラーの長ったらしい話を聞くなんて暇で暇で仕方ねえ。


「坊っちゃん! ぼっちゃーん! どこにいるのですかー!?」


だから、俺は座学の時間をちょいちょいサボって遊びに出かけた。

最初はチャンドラーの追跡を避けるのに必死だったが、すぐに慣れて難なく身を隠せるようになった。


「あ、メリオダス様」

「おー、カルマディオス。ごくろー」

「どこに行かれるんですか?」

「息ぬき」


途中で上位魔神達と遭遇しても、挨拶そこそこに素早く移動していく。

俺に「勉強はどうした?」とか訊く奴なんて、そうそういない。

親父か、チャンドラーと同じ側近の奴らぐらいだ。


「今日はここにするか…」


隠れ場所の中でも一番居心地がよかったのは、城にいくつかあった空き部屋だ。

本来なら使用人が使う部屋だが…結婚を理由に家庭に入る者もいて、部屋が空く事なんて珍しくなかった。

部屋は必要最低限の家具やベッドしかなかったが、俺にとってはちょうどいい隠れ場所だった。


「ふぅ…自由だぁー」


ベッドで寝転がりながら、何気なく声を出してみる。

どうせ…束の間の自由時間だ。

暫くしたら、チャンドラーがやってきて軽々と片手で抱きかかえて連行される。

説教のフルコースの後で、課題を追加されるのが目に見えている。


それでも、この時の俺の中に「サボらない」という選択はなかった。

そうしなければ、精神的に限界がきてしまうと幼いながらも分かっていたのだ。



「…さま、メリオダス様」



横になってゴロゴロしていると、いつの間にか眠っていた。

名前を呼ばれて、目を開けると…いたのは師ではなく一人の若い女だった。


「…だれ?」

「お初にお目にかかります、メリオダス様。本日からこの部屋を使わせて頂く事になりました『クローディア』と申します」


新しい住人がいつのまにか、部屋に来ていた。

その人物…クローディアが言うには、番である旦那の都合で城に住む事になったようだ。

水色のウェーブがかった長い髪、幼かった俺から見ても美人で、血生臭い戦いとは縁がなさそうな優しい雰囲気の人だと思った。


(おっきい…)


その上、男心を刺激しそうな豊かな双丘の持ち主だった(誤解しないでほしいが、俺の好みはエリザベスだけだ)。

クローディアは、無断で爆睡していた俺を叱る様子もなく、「まだ眠っていても大丈夫ですよ」と気遣いの言葉を返してくれた。


「いーよ…もう目が冴えちまった」

「あらあら」

「これからどうするか…ん?」


背伸びしていると、クローディアの後ろに籠がある事に気付いたんだ。


「それは…?」

「あぁ、もう一人紹介しなくてはなりませんね」


クローディアは手で籠を引き寄せると、俺の視界に入るように籠の中身を見せた。


「あっ…」


籠の中には小さい赤ん坊がいた。

ふさふさしたした黒みがかった銀髪に、ふっくらした体。

初めて見る赤ん坊に、俺はもっと近くで見ようとベッドから降りて籠に近づいた。


「息子の『ヴァイスハルト』です」

「ヴァイス、ハルト…」

「今年の夏に生まれた子です。名前は夫と考えてつけました」


クローディアの説明は一応耳に届いていたが、それ以上に俺は赤ん坊…ヴァイスハルトに目が釘付けだった。

そぉーと人差し指で頬を押してみた。


「おぉー…」


…柔らかかった。

ぷにぷにと何度も頬を触っていると、ヴァイスハルトが薄らと目を開けた。

漆黒色の大きな瞳が、俺を捉えると触れていた指を掴まれた。


「ふふ、ヴァイスはメリオダス様の事が気に入ったようです」

「…そうなのか?」

「あの人…夫が同じ事をすると、泣いてしまうんですよ」


クローディアの夫は、普段から息子の事を溺愛していてしょっちゅう頬などを触っているらしい。

調子に乗りすぎて、ヴァイスハルトを泣かしてしまい、その都度クローディアが叱っている事を本人が教えてくれた。

人差し指を掴まれたまま、俺はヴァイスハルトを見つめる。


「あー」


まだ言葉を喋られない赤子は、俺を見ても怖がらず笑っていた。

それが俺にとって驚きであり、嬉しくもあった。


「今日のヴァイスはご機嫌ね。メリオダス様のおかげですね」

「…そうかな」


クローディアの言葉に、俺は胸がくすぐったい気分になった。

小さな手で包まれた指は温かくて…気付いたら笑みを零していた。

それから、すぐに迎えに来て連れていかれる間際まで『赤ん坊に夢中になっていた』とチャンドラーが言っていた。


「ヴァイス、またな」


それが…俺とヴァイスとの最初の出会いだった。



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