【5】女神族の長の目論見


※外伝連載【Brand new page】の番外編

※『七つの大罪』のある勢力の物語(4)

※ある人物(エリザベスの実母)視点で話が進みます。


※特定の種族(魔神族)に対して、差別的・不快な表現があります。

お読みの際はご注意ください。


※小説内では、女神族の生殖方法を『胎生』に設定しています。


※この話は好みが別れる内容となっています。

人によっては不快な気分にさせてしまう可能性があるので、お読みの際はご注意ください。



*** ***** ***



『生まれ変わったら…今世と同じように自分の好きな生き方をしたい』



かつてのアナタはそう言った。

あの時の台詞は…今でも記憶に刻まれている。

異世界に迷い込み、力を制限され、姿形まで変わらざる負えなかった「私」を救ってくれたアナタ。



アナタは数奇な運命を背負っていた。

【最初のアナタ】は、どのような存在だったのかは分からない。

けれども、アナタにとって特別なものであった事は傍から見て察していた。

アナタの中では【最初のアナタ】の記憶が、異なる世界で生きた【別のアナタ】の記憶と共に存在していた。


―――幾度となく転生を重ねてきた『魂』


あの時のアナタは、世界を股にかける『治癒術士』として【14回目】の人生を歩んでいた。

その世界の流れに大きな影響を与えた人物として名を残し、多くの者達に慕われていた。

アナタは【14回目】の生を終える前に、ささやかな希望を口にした。

いずれ、星の大海に数多くある世界のひとつで生まれ変わる…その時に、自分の願いが叶うように。



アナタが【14回目】の人生に幕を下ろした後、私は元の世界に帰還した。

力を取り戻した私は、内政に取り組んだ。

敵対部族との些細な小競り合いが続く中、体制の見直しや同胞達の育成に力を入れていく。

争いを失くす事、全ての敵を消す事は不可能だ。

それでも、一時的にでも…停滞の時間を生み出す事はできる。

いずれ、この世界に生まれ落ちるだろう【新しいアナタ】が力を開花させるまでの間だけでも…束の間の平穏を過ごさせてあげたい。



アナタがいなくなった後、あの世界の導き神と取引をした。

アナタが【15回目】に…新しく生まれ変わる場所を、私の故郷である世界にしてもらう事。

世界の変革のために、アナタの手助けをした貢献と多少の知識を対価として。



『これだけは約束してください。

【あの人】がどんな種族になろうとも、かつてと違う人になろうとも…

決して【あの人】の生き方を否定し、心を壊すような所業はしないでほしい』



去り際に、あの世界の導き神がその言葉を送ってきた。

…【忠告】というべきだろうか。

私と彼の者は敵対関係になりうるほど、険悪だったわけではない。

ただ、彼の者とは一定の距離までしか歩み寄れない境界線があった。

世話になった事には感謝の念はあれど、世界の枠を超えてまで心を通わせる気にはなれなかった。




何年…何百年か経過した頃。

とうとう『その時』が訪れた。

複数の色の光の粒子を流しながら、見る者を魅了する美しい輝きを放つ【魂】

そう…紛れもないアナタだった。


【魂】はふわりと舞い散る粉雪の如く浮遊しながら、探索をしていた。

探しているのは…器となる【肉体】を生み出す者。

あの時点で、私が縁結びした同胞の夫婦はいくつもおり…新しいアナタを生み出すための母体は既に準備していた。

だから…後は、優しくアナタの【魂】を誘うだけだった。


私とした事が迂闊だった。

邪魔をする者の気配に気付かないなんて…。

【魂】を誘導するため…手を差し伸べようとした際に、天空から数条の太い雷が降り注いだ。

アナタは雷撃の威力で、どこかへ飛ばされてしまった。

あれほど、精神がかき乱された出来事はない。


妨害をした者は誰なのかは、判明している。

忌まわしき敵対部族の王であり、世界の異物共の長である…あの男だ。

沸々と湧き上がる負の感情を制御しながら、私はアナタの行方を探した。




アナタを見つけるのに時間がかかってしまった。

幸いな事に、【魂】は同胞の夫婦を次の肉親に選んでいた。

縁結びした一組で、良人の方は城で護衛兵を務めている者だ。

護衛兵の令室は、その時二人目の子を体内に宿しており、案の定「アナタ」だった。

かつての…【14番目】のアナタは血縁者に恵まれなかったと言っていた。

安心しなさい、【15番目】の肉親はまだ見ぬアナタの事を愛している。

今世では、温かい家庭で健やかに育まれる事になるだろう。


順調にいけば、アナタはいずれ私の元に来る事になる。

次代を担う長となる私の娘…エリザベスの側仕えに任命するつもりだ。


―――早くアナタに会いたい。


あの頃の記憶はなくとも、新しいアナタをこの手で抱きしめてあげたい。

もう遥か昔となった…【あの時】に交わした約束を今こそ果たすのだ。




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