Brand new page(関連話)


※外伝連載【Brand new page】の番外編

※『七つの大罪』のある勢力の物語。

※原作のある登場人物の視点で物語が進みます。

※原作223話以降のネタバレが含まれているので、単行本派の方はお読みになる際はご注意ください。



*** ***** ***



これは、私がまだ幼かった頃の話。

その日は、とても特別だった。


「エリザベス様、お越しになられましたよ」


世話係の侍女から言われ、私は読んでいた本を閉じた。

いつも忙しい母が、私の元へ来たからだ。


「おかあさま、おひさしぶりです」


母は女神族を束ねる長…【最高神】の地位についていた。

娘である私は、久方ぶりに母に会えた事を喜んだ。


「エリザベス、今日は会わせたい者がいます。ついてきなさい」


母はそう告げると、私の手を引いて部屋を移動する事になった。

廊下を歩いていると、母に仕えている他の人達は頭を下げたり、傅いたりして道を開けてくれる。

その光景と母を交互に見つめながら、私は前を歩いていく。


時々、母と会話をしながらある場所に辿り着いた。

大きな厳重な扉…見た事のない部屋。

大柄の同族の兵士二人が見張りについて、重々しい雰囲気にちょっとだけ気後れしてしまう。


「通しなさい」

「「はっ」」


母の命令で、兵士達は扉を開けた。

部屋の中に入った瞬間、〝風”が舞い込んできた。

正確に言うと…強い魔力の一部。

濃度の高いそれに、思わず「きゃっ」と小さく悲鳴を上げてしまった。

怯える私に対して、母は言った。


「しっかりしなさい」

「うぅ……」

「よく感じなさい。この魔力は…貴女を害するものですか?」


母に問いかけられ、私は恐る恐るその魔力と向き合った。

不思議な事に…ついさっきまでこわいと感じていたそれは、ふわりと春の風のように心地よかった。

それに、微かに甘いお菓子に似た匂いがして…なんだか、心がほんわかと温かくなっていく。


「…こわくない」

「そう、〝正しく認識できた”ようで嬉しいわ」


正直に感想を言ったら、母は微笑を浮かべて「よくできました」と褒めてくれた。

その時の母は最高神としてではなく、どこにでもいる一人の母親としての優しさが溢れていた気がする。

当時の私は、そんな些細な変化など分からなかったけれど、母に褒められて純粋に嬉しかった。


部屋の中央に天蓋付きのベッドがあった。

そのベッドの傍には、見慣れた人がいた。


「最高神様、それに…エリザベス様も。お越しいただき、至極光栄にございます」


リュドシエル…黒い長い髪の細い目の男の人。

母の側近の一人で、母への忠誠心が高い人だ。


「リュドシエル、状況は?」

「只今、サリエルが『彼女』の領域へ入っております。目覚めるまで少々時間がかかるかと…」


リュドシエルの後ろで肘掛椅子に腰かけたまま、眠っている少年がいる。

名前はサリエル…見た目はちょっと年上の男の子だけれど、私よりもかなり年齢を重ねている。


「どうして、サリエルはねているの?」


私は話をする二人を見上げる形で質問した。

すると、リュドシエルがこちらへどうぞと椅子を用意してくれた。

そこに座った私は、あっ…と声をあげた。


「サリエルは只今、重要な任務を遂行するために〝この子”の夢の領域へ赴いております」


リュドシエルの説明を聞きながら、私はベッドの方へ自然と目が向かう。


そこに、一人の女の子が眠っていた。

見た目は私と同じくらい。

薄い金色の肩まである長さの髪に、私と少しデザインが違う白と青の色を使った衣装を着ている。

そして、気付いたの。

…あの温かい魔力を放っているのが、この女の子なんだって。


「エリザベス、紹介しましょう」


私は母へ視線を移す。

母は、眠るその子の髪を優しく撫でながら教えてくれた。



「この子の名前は『ミスティリア』

エリザベス…いずれ貴女の側近の一人となるかもしれない者よ」


母の言葉に、私は目を瞬かせるとその子へ視線を戻した。

…これが、私とミスティリアの出会いだった。




【彼女の名は…】




「はじめまして」


私は、眠るミスティリアに挨拶する。

ミスティリアは生まれてから、ずっと目覚めた事がない。

ある事が原因で、彼女は夢の世界でしか行動する事ができない。

さらに、強力な魔力を秘めているため、それを狙う悪い人から身を守るために、最高神がいるこのお城に住む事となった。

そんな複雑な諸事情を…母自ら教えてくれた。


この時、母と一部の側近の人達だけが夢の世界にいるミスティリアと会う事が可能だった。

ミスティリアは、おかしな歌を唄ったり、まだ小さいのにお菓子をつくる事が大好きなちょっとヘンな明るい子らしい。


「おかあさま、エリーもあいたいです」

「ならば、夢渡りの術を学びなさい。努力すれば、彼女と会う事ができますよ」


母のアドバイスを聞いて、私は「はい!」と大きく頷いた。


…夢の中にいるこの子と会いたい。


同じ年頃の友達がほしかった私のささやかな願いが叶ったのは…一年後。

そして、私にとって、彼女…ミスティがかけがえのない親友になるのはそう遠くない未来の話。





【おわり】

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