【8】第一回 ヴァイス語検定試験


【メリオダスの回答】


(A)料理人(レベルは不明)


(B)《東の国の料理王》


(C)《付き人は主人公を外見で侮り、料理を味わっていないくせに『まずい』と独断と偏見で決めつけた。

その所為で、料理王に恥をかかせる展開になった。

少なくとも、俺だったらこんなやつを側近にはせずに雑兵にして叩き直してやる》


(D)カツドン


(E)《料理王は主人公の味に屈服した。

主人公は料理人としての質の良さを証明した。

後に、料理王と協定を結んだ影響で、多くの敵から挑戦状をたたきつけられる試練に立ち向かう事となった》



*** ***** ***



(おいおいおい…【レベル】って…【屈服】って、【協定】とかどうしてそんな展開になるんだよ)


答えは大体合っているのに、メリオダスが個人的な感想と見解を加えた所為か、内容に物騒な要素が漂っている。

仮に、メリオダスが料理界のトップだったら別の意味で深刻な問題が出てきそうだ。

確実に…付き人の男性が可哀想なポジションになるだろう。

評価に悩み、なんとか採点を終えたヴァイスはエスタロッサの回答欄へ視線を移した。



*** ***** ***



【エスタロッサの回答】


(A)りょうりがすきな子ども


(B)《料理の王様》


(C)《付き人は主人公の料理が『まずい』と決めつけた上で、他のお客さえも混乱させて店にダメージを与える戦術に打って出た。

しかし、主人公の圧倒的な料理の味に反撃されてしまい、結果惨敗。

将来的に、付き人の座から一番下の地位へ降格される可能性が高いと思われる》


(D)カツドン


(E)《老人は主人公の料理の味に心奪われて、付き人の失敗をフォローする代わりに主人公と友好条約を結んだ。

それがきっかけで、主人公は敵対勢力と戦う事となり、激しい戦いを繰り広げる宿命を背負う事となった》



*** ***** ***



(えっ、ええ~…?? これって…あの長文で、この答えを書いたエルの発想がすごくないか…)


(C)と(E)の答えを読んで、一瞬違うジャンルの小説の一文を読んでいるかのような錯覚がした。

元となったのは【グルメ漫画】なのに、彼等の回答がジャンルを【戦記】へフルチェンジさせてしまっている感がある。

あと、付き人に対してやけに辛辣な展開を望んでいる点が兄弟で共通している。


(戦いを経験しているから、こういう書き方になるのかな…んっ?)


答案用紙の欄外の部分に、メリオダスとエスタロッサ…それぞれコメントが書かれていた。


『カツドンって、新しいメニューなのか? また試作品ができたら教えてくれ』

『テストを受けさせてくれてありがとう! また新作のカツドンができたら、一番に俺に食べさせてくれよ!』


二人のコメントを見て、ヴァイスはふふっと口元が緩んだ。


(カツドンは今は無理だけど…代わりに、カツサンドをご馳走するよ)


こうして、初めてのテストの採点は終了した。




【第一回 ヴァイス語検定試験】




「二人ともお疲れ様」


テスト用紙をメリオダス達に返却して、結果を告げた。


「メルは、漢字の読み方と置き換えを重点的に練習していこうか」

「ああ、分かった」

「エルは…まずは基礎をきちんと覚えよう。漢字の正しい読み方とか、ね」

「ぶぅー、自信あったのにな…」


今後の課題と取り組みを話し合っていると、ある人物が家にいる事に気付いた。


「あっ、ゴウセルさん。いらっしゃい」

『こんにちは。お邪魔してるよ』


ヴァイスがテストの採点に集中している間に、ゴウセルは訪れたようだ。


『モンスピートに頼まれたんだ…デリエリへメッセージを伝えるために此処に来た』


ゴウセルの目的は、モンスピートの伝言をデリエリへ伝える事だった。


「絶対、帰らねえぞ」


デリエリはぶすっと不貞腐れた顔で、ゴウセルと視線を合わそうとしない。


『ふむ、説得してモンスピートのもとへ送るのが理想だったが…それを達成できる確率は低そうだ』

「ごめん。リリの気持ちが落ち着くまで待ってもらえないかな」

『分かった。モンスピートとラギネ(デリエリの姉の名前)には、俺から話しておこう』


デリエリとヴァイスの意向を汲み取り、ゴウセルは二人に連絡する事を約束してくれた。



『一応、メッセージは伝えておこう。

【デリエリは悪くないよ。自信を持っていいからね】』



モンスピートの口調を真似て、ゴウセルはその伝言を告げた。

その内容を聞くや、デリエリはハッと目を見開いて彼の方を見つめる。

彼女の反応に、ゴウセルは口元に弧を描く。


「よかったね、リリ」

「……うん」


ヴァイスが穏やかな表情で声をかけると、デリエリは神妙な面持ちでコクリと頷いた。


『ふぅ…これで用件は終了だ。あとは時間をおけば、懸念事項は自然と解決されるはずだ』

「ん、どういう事?」


ゴウセルの意味深げな言葉に、エスタロッサは疑問符を浮かべて聞き返す。

すると、ゴウセルは唇に人差し指を押し当てながら「ナイショ」と呟く。


「そうか…なら、こっちは何もせずに済みそうだな」


彼が言いたい事を察したのか、メリオダスだけは興味なさそうに応じていた。



その回答が分かったのは、一ヶ月後の事。

三名の魔神族が、所属している部隊から辺境の地へ飛ばされたり、実質上の地位を降格されてしまった。


…その三名の顔ぶれに、デリエリがかなり驚いていた事。

…対象となった内の一人がモンスピートの顔を見るなり、顔面蒼白となってそそくさと退散した事。

…その対象者の行動に対して、モンスピートが失笑していた事。


(モンさんって…リリが絡むと行動力が半端ないな)


その事から真相を理解したヴァイスは、ぎこちない笑みを浮かべてしまう。

改めて、育ての親の本気モードが如何に凄いのかを実感した出来事となった。





【おわり】

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