【20】リスタート・クエスト(マルチエンディング 2)
※呪術廻戦編で、未来の時間軸のIF話。
※序盤から、物騒な要素があります。
※キャラが原作とは異なり、読者様の意向に沿わない性格になる可能性あり。
※未登場の原作キャラの二名が不憫枠となっております。
※他の連載(TOX連載)の先の大きなネタバレが含まれております。
以上の事から、お読みになられる際はご注意ください。
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「ごめんね、舞香ちゃん」
教会にある植物の世話をしている時、拉致されてしまった。
…幼い頃から付き合いのある夏油 傑に。
今年の春頃、舞香は18歳を迎えてすぐに正式にヴァルハラ教団のシスターとなった。
聖職者になる夢が叶った時、舞香の脳裏にこれまでの記憶が蘇った。
シスターとなるまでに、ギルドのエージェントとしての依頼も含めて様々な出来事や事件があった。
無事に解決できてよかった…そう思える案件は少なくなかった。
逆に後味が悪かったり、切なくて悲しい結果に終わった事もあった。
悲喜こもごもな事を幾度となく経験していき、舞香は色んな人々と知り合う事ができた。
シスターになっても、エージェントとの二束草鞋で頑張っていこう。
そう決意してから…約四ヶ月後。
7月後半、高校の終業式を終えて寮へ向かおうとした。
その時、日課である植物の水やりを忘れている事に気付き、中庭の方へ行った。
水魔法のシャワーで植物に満遍なく水やりをしている最中、傑と遭遇した。
「舞香ちゃん」と名前を呼ばれ、舞香は足を止めると視界が暗転してしまった。
意識を失う直前に、冒頭の謝罪をかけられたのだ。
「おはよう」
目覚めた時、視界に映ったのは傑だった。
ベットの上に寝かされていたらしく、頭痛等がなく、すんなりと起き上がる事ができた。
服装は、意識を失う前に着ていた夏用のセーラー服。
乱された形跡は特にないので、内心 安堵の息を漏らす。
「傑さん、ご無沙汰しております」
「うん、久しぶり」
黒いTシャツとジーンズのラフな服装を纏った傑は、笑いながら挨拶してくる。
彼が高専直属ではなく、フリーの呪術師となった事は記憶に新しい。
親友である悟にもたまにしか連絡をよこさず、彼が愚痴を零していた事を思い出す。
「傑さん、どうして…」
何故、自分を誘拐したのか?
その理由を尋ねようとした時、傑は舞香の顔前に出して右手を出して待ったをかける。
「今から話すよ。折角だから、食事をしながら…ね」
「いただきます」
テーブルに置かれたのは、デミグラスソースとホワイトソースがかかったハンバーグオムライス、
葉野菜とツナのサラダ、クルトン入りのコーンスープだった。
食事の挨拶をしてから、オムライスをスプーンで掬って一口食べる。
「おいしい…」
卵はふわふわであり、デミグラスソースは濃い目の味付けだ。
濃い味のソースを卵がしっかり受け止めており、ちょうどいい塩梅になる。
ハンバーグはジューシーで、卵とチキンライスと合わせると別の美味しさが生まれてくるハーモニー。
サラダもヒンヤリしており、葉野菜がシャキシャキして、ツナとドレッシングの組み合わせが合っている。
まろやかなコーンスープも、舞香の好きな味付けだ。
「そうか、よかった…高専にいた頃は、時間がある時に簡単なものしか作らなかったからね。
一人生活で自炊し始めてから、上達できた事が証明できて嬉しいよ」
手料理を褒められて嬉しかったのか、傑はほっとしたような表情でそう言うと、オムライスを食べ始める。
「此処に連れて来た一番の理由はね…君に会いたかったからだよ」
傑は食べるのを一旦止め、スプーンを皿の横に置いた。
そうして、舞香を誘拐した理由を語り始めた。
数年前に、傑が携わった【星漿体】の護衛と抹消任務。
それが、彼にとって大きな転機となった。
当代の【星漿体】である少女…天内理子は結果的に、天元とは同化しなかった。
任務は失敗に終わったが、天元との交渉の結果、理子は自由を手に入れる事ができた。
現在は、世話係の黒井美里と共に遠い異国で暮らしている。
問題は…その過程で、傑が非術師の悍ましさに触れてしまった事だ。
――――【盤星教 時の器の会】
理子の命を狙ったその過激な宗教団体は、天元の同化失敗という目的は果たせたものの、
理子を五体満足で逃がしてしまった事を失態と捉え、非常に許せなかったようだ。
その事で、【盤星教】の信者の大半は、計画の邪魔をした高専関係者やヴァルハラ教団のギルドに対して
罵声をあげたり、危害を加えようとした(後に、ヴァルハラ教団の報復処置により、全員撃沈したが)
その時の出来事が、傑の心に深い影を落とす事となった。
一年後、特級呪術師である九十九由基と出会い、彼女との会話で「非術師」への負の感情が露わになった事。
後輩である七海と灰原が、上層部の画策で等級違いの任務に行かされてしまい、殺されかけた事。
さらに、絶対無二の相棒である悟が、強くなっていく事に対する羨望と嫉妬…
自分だけが取り残されてしまった現状への悲哀と喪失感。
それらの要因が積み重なっていき、傑はもう非術師に対する憎悪が止められなくなった。
そして、地図にも載っていない集落で、呪霊を討伐する任務を受けた事が、傑の未来を決定付けてしまう。
非術師の住民達に、術師の才能のある双子の姉妹が虐待を受けていた。
心に貯め込んでいた負の感情が蓋を開けてしまい、容赦なく噴流していってしまう。
傑がもう我慢する事を止めようとした、のだが…
「今でも、一般の人達と関わるのが嫌ですか?」
「大分緩和したとは思う。でも、いけ好かない奴らは『猿』だと感じているよ」
住民達に手をかけようとした傑を、間一髪防いだのが…舞香だった。
その一件以来、傑は藤基家に所属するカウンセラーにお世話になった。
そのおかげで、非術師に対する負の感情を抑えられるようになり、心にゆとりを持てるようになった。
悟ともお互いの心情を暴露し合って、徹底的に殴り合いをしたらしい(硝子曰く、高専が半壊したとの事)。
舞香がシスターに任命された同時期、傑は高専を中退した。
自動的に専属の呪術師として所属していたら、非術師と関わる確率が高くなる。
「だから、フリーになる事を選んだんだ」と傑は改めて語った。
「こんな私に失望したかい?」
傑は寂しそうに尋ねるが、舞香は首を緩慢に振る。
「誰だって、全ての人を許容できる訳ではありません。
私も、傑さんと同じように、盤星教やあの集落の人達が犯した所業を今でも許せません。
そういう人達には自分の罪を後悔するくらいの罰が下る事を、主神レナス様に進言いたしますね」
「ハハハ、女神様に進言するなんて…君も意外と容赦しないタイプだね」
舞香の回答に満足したのか、傑は満面の笑みを浮かべる。
「お願いがあるんだ、舞香ちゃん。
少しの間だけでもいいんだ…君と過ごす時間がほしい」
傑は真面目な表情となり、頭を下げた。
「フリーの呪術師として、仕事の依頼はそこそここなしている。
だが、非術師と関わっていると、思いの外 ストレスが溜まってしまってね…」
このままだと、高専の時と同様に心に負担が押し寄せてしまう。
酷くなったら、今度こそ非術師を殺めてしまうかもしれない。
そんな最悪の事態を防ぐためにも、傑は監視役となる人材が必要となった。
「そのような重要な役割を…私でいいんですか?」
「うん、君だから頼みたいんだ」
舞香の利き手に、そっと自らの手を添えるように重ね、傑は改めて懇願する。
暫しの間、舞香は逡巡した結果…
「分かりました」
傑からの依頼を引き受ける事にした。
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