【19】リスタート・クエスト(マルチエンディング 1)
※呪術廻戦編で、未来の時間軸のIF話。
※一方的な不穏要素のある甘い展開があります。ご注意ください。
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「舞香、みぃーつけた~♪」
青空を彷彿とさせる瞳が、こちらを捉えたのだろう。
瞼を閉じていたから、あくまで推測である。
ギルドの任務続きで、身体の疲労感が回復しきれていなかった。
そういう時は、昼休みを利用してお気に入りの場所で一休みする。
学生がほとんど来ない学園の屋上で、壁に背中を預けてゆっくりと瞼を閉じた。
以前は、学園内にある中庭の大きな樹を背にして眠るのが定番だった。
最初に違和感に気付いたのは…一年前の秋頃。
あの時は夢現であったので、勘違いかと思った。
それが現実だと知ったのは、三日後。
目を閉じて、いつでも眠れる状態になった時、彼の声が聞こえてきたのだ。
(悟さん…?)
瞼を開けようかと思ったその刹那、耳元にこう囁かれた。
「呪いをかけるよ、舞香」
(ほわい…!?)
物騒な言葉を囁かれ、胸がざわめいてしまう。
何か嫌われるような事をしただろうか…
「早く俺の花嫁になって…」
続けて言われた言葉に、先程とは違う意味で衝撃が走る。
額に何かが押された…そう感じた直後に、唇に柔らかい感触がした。
同時に、唇を通して呪力がこちらへ伝わってくる。
「その身も心も…俺にちょうだい」
瞼を開ける事ができなかった。
知らない間に、口付けされていた事や不穏な要素を孕んだ愛の言葉をかけられていた事。
その事実をすんなりと受け止められる程、舞香は余裕がなかった。
心が激しく揺らめいて、彼の顔を直視できる勇気が出なかったのだ。
(…どうしよう)
その日、舞香は体調不良と言う理由で、学園の授業を全て欠席した。
風邪と任務以外で休んでしまった、入学してから初めてのさぼりであった。
あの日以来、舞香は庭園内で一休みする事を避けた。
定期的に眠る場所を変更していき、彼と接触した際は冷静に思考を働かせて対応した。
幸い、こちらが起きていた事は、当の本人は気付いていないようだ。
不自然がないように対応できていたとは思う。問題ないはず。
小さく高鳴る鼓動を悟られないようにするのは…なかなか大変だったけれど。
(このまま、内緒にしておこうかな…)
好意を抱かれている事自体に、嫌悪や忌避の気持ちはない。
幼い頃から付き合いがある彼の本音に触れて、嬉しさと愛おしさが音を奏でるように心を震わせた。
それでも、夢を叶えたい気持ちの方が勝った。
その気持ちが、渦巻く感情の湖に溺れそうになる自分を現へ戻してくれた。
…彼の花嫁になる事はできない。
彼の手を取る事は、聖職者になる事を諦めなければならないから。
(ごめんなさい。悟さん…)
心の中で踏ん切りをつけた十数分後、まさかその彼が此処に辿り着くとは思わなかった。
学園の屋上は安全面のため、一部の関係者を除いた一般の学生や外部の人間は入れない仕組みとなっている。
周辺にも結界を張っているはずなのに―――
「なぁ、舞香…起きなよ」
狸寝入りはするな、と遠回りな言い回しで忠告される。
「起きなきゃ、実力行使するぞ」
いつになく圧の込めた声。
これは大人しく言う通りにしなければ…危ういと思った。
徐に瞳を開けていくと、至近距離に彼の顔があった。
「あのさ、気付いてるよな」
「……」
「一年前辺りから昼寝する場所を変えているから、もしかして…とは思ってた。
一番の安全地帯が此処だって目星をつけてからは、結界を解除するのに何度か挑戦してたんだ」
―――“ようやく壊す事ができた”
達成感に満ちた表情で語り、グッと拳を握る彼にほんの少し寒気を感じた。
彼の瞳が初めて出会った頃の、ざわざわして落ち着かない色に見えてしまう。
「悟さん、私は―――」
このままだと、彼の空気に呑み込まれてしまう。
言葉を紡ごうとするや、それが遮られてしまった。
…彼に唇を塞がれてしまったから。
唇を重ねた時間は一分に満たない、刹那の間だけ。
それでも体感的に長く感じてしまったのは、熱を孕む眼差しを向けられているからだ。
「やっと…捕まえた……ッ!」
ぎゅっと抱擁され、甘い声で紡がれたのはやはり物騒な言葉だった。
逃げたいのに、逃げられない…
危機的状況に、舞香は瞼を閉じて現実逃避したくなった。
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