色々噺(その他)


【フローリングスリープ】




『カナンって寝相悪いね。なんでベッドがあるのに真下の床で寝るのさ』


と、守銭奴の黒テルテル坊主ちゃんから言われた事がある。

我ながら、変な癖がついてしまったとは思うけれど、なかなか直せない。


「…ナン、カナン。起きろ!」


薄ら目を開けると、親友のアンジールが腕を揺さぶっている。


「ふぁ…なんじ?」

「午前9時だ。あと少しで加奈がやってくる」


親友の話を聞きながら、カナンは口元を手を覆いながら欠伸をする。


「うーん、じゃあ…加奈ちゃんがきたら起こして…zzz」

「寝るなら、ベッドで眠れ」


アンジールは、呆れながら再び夢の世界を向かおうとする友の額をぺチッと平手打ちした。


現在、二人は病院の当直をしている。

午前4時頃まで、研究資料をつくっていたカナンはようやく資料を作り終えると、そのまま床へと倒れ込むように就寝した。

当直医専用のベッドがあるにも関わらず、床で熟睡してしまうカナンの癖に気付いたのは、つい最近の事だ。


何故、そんな習慣がついてしまったんだと以前尋ねたところ、カナン曰く…


「滞在している世界でね…遊びに来る子ども達がベッドでお昼寝するの。それ以来、床で眠る癖がついちゃって…」


床で眠ると身体に負担がかかるぞ、と注意したが、ちゃんと、クッションを枕代りにしているから大丈夫と笑いながら返された。

だが、病院のフローリングで何もしかずにそのまま眠るのはいただけない。


アンジールはハァと息を漏らしつつ、カナンを持ちあげてベッドに寝かしつけた。

すると、コンコンッと扉をノックする音がした。


「ハァハァ、お待たせしました! 交代の水無月で…あっ…」


走ってきたのか、息切れしながら喋る加奈。

ふと、視線をあげればベッドで熟睡しているカナンの姿が目に入った。

アンジールは、しーと口元に人差し指を当てる。


「すまない…少しだけ休ませてあげてくれ」

「…ふふふ、分かりました」


アンジールは苦笑して言う。

加奈は瞬きしてつつも…寝ているカナンをみて、和やかな気持ちになり、自然と口元が綻んだのだった。





【おわり】

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