【14】契約しましょう
「あのね…豊臣様や…他の人達からよ」
市はほんのりと笑いを浮かべながら即答した。
それを聞いた加奈は「ええっ―――!」と驚愕な顔をした。
あたかも背景に、ガビーンという効果音がつきそうな感じで。
「だって…豊臣様は、加奈にしつこいくらい求婚してくるもの…。あの時の事を忘れずに…加奈は迷惑しているでしょう」
「ええ…いえ、その件に関しては今、豊臣様と協議中ですので」
「それにね、武田様と上杉様のところも…貴女と関係を深くしようと、忍を度々送っているし、他の領地の人達も貴女を気に入っている人多いわ」
加奈は些か信じられなかった。
私ってそんな逆ハー的なキャラじゃないですよ…と言いそうになった。
だが、実質的にエクレシアであり、天界とも直接的な繋がりのある加奈とコネを作りたい武将はたくさんいる。
武田と上杉等…多数の武将達は、加奈自身の人間性(この場合はエクレシア性というべきか)を評価している。
市は、それが嬉しいと思う反面、モヤモヤした嫌な感覚になる。
(加奈を親友と思っているのは、市だけだもの)
いわゆる【嫉妬心】だ。
自国の利益や欲望のために、接近する輩も中に入る…だからこそ、市は“親友”として守らなくてはならないという思いが強くなった。
そんな市の気持ちを後押ししたのは、夫である長政だった。
『市よ、友とは時に助け合い、支え合ってこそ成り立つ関係だ。すなわち、正義! 友が窮地に陥るならば助けるのが道理だ!』
さらに、以前…他のエクレシアから形式契約の事をちらっと耳にしていた市は、いい案が思い浮かんだ。
それこそ…「形式契約をする事で、欲深い人達から加奈を守る」というアイディア。
形式契約は、エクレシアが認めた人でしか交わす事の出来ない繋がり。
これで、加奈と契約を結べれば、欲深い人達はあきらめがつくのではないか…。
それに、契約を交わすと言う事は、術者の近くにいなくてはならない。
そうなれば、加奈は術者である自分の住む近江へ来なくてはならなくなる。
まさに…市にとっては願ったり叶ったりな事だ。
「ねぇ、だから…契約しましょう」
「は、はぁ…そうですねー」
市の説明を聞いた加奈が「どうしよう…」と冷や汗をかきながら困惑気味に思案する。
市の気持ちは嬉しいのだが…些か突出し過ぎる考え方に少し引いてしまう。
キラキラした懇願の眼差しを向ける市に対して、加奈が返答を決めかねていると…さらに事態が急展開が…。
「ちょっとちょっと、困るんだよね~。そんな無茶苦茶な要求したら!」
「加奈、この際だ! 謙信様と契約をかわしてくれ!」
天井から…元上司の猿飛佐助と…以前、居候していた先でお世話になったかすがが降りてきた。
いつから、上にいたんですか! という風に突っ込みたくなる加奈。
さらに…外からドドドドドッと駆け込んでくる音が響く。
「加奈様! この石田三成が恐れながら秀吉さまの代行として迎えに上がりました!」
「いつのまにぃ―――!」
「ダメ…闇色さん。加奈は市と契約が決まったのよ」
「貴様ぁあああ! そんな空事が通じる訳ないだろう!」
「あのさ、加奈は武田の忍だったんだよ? 和解もしたしさ…だから上杉側と契約するのはなしって事で」
「そんなたわごとが通じるか! 加奈は上杉の空気があってるんだ! 貴様のいるむさ苦しい武田等に渡してたまるか!」
「ちょっと、それ言わないでよ! 地味に傷つくんだけど!」
市と三成が言い争いをする中、佐助とかすがも討論勃発。
「とっ…ともかく皆さん! 落ち着いてくださ―――い!!」
加奈は必死で4人を説得し終えるまで、かれこれ数時間を有する事となったらしい。
さて…加奈にとって最初の契約者を現れるのでしょうか。
【おわり】
◇◇◇ ◇◇◇◇◇ ◇◇◇
【あとがき】
BASARA編後日談の小話です。
加奈は、本編中に市と仲良くなりました。
今回、形式契約を結ぶか否かの話題となりましたが…
結末は、設定を拝見されると分かります。
・
