色々噺(その他)


【A surprising mask】



ある夜の番組をみていた屋敷の主とその配下達…。


《今からいう話を聞いて、保護者の人達…特に父親の方々はショックを受けないでください》


その特集の前に、注意書きの様なものが流れた。

その前置きに…イタチは嫌な予感がした。

こういう前置きをするのは、大抵、父親側にとってあまり気分がよくないパターンが多い。

家庭で、家族団らんでこういうタイプの放送をみた後に、父親の肩身が異様に狭くなってしまうものなのだ。

イタチが真っ先に視線が向いたのは、主であるヴァンスだった。


ヴァンスは、特に何も気にするそぶりも見せずに、CMを眺めている。

このCMの後に、その内容が流される…。


「早くしてほしいな…CMばっかりだ」

「うりゅ~、じれったいね」


(もう少し長くCMのままでいい…)


イオンとさくたろうは、肝心の良い所でCMに切り替わったために、退屈そうにブーブー言っている。

傍にいるイタチの心中が、真逆である事を彼らは全く気付かない。


「あっ…変わった」


番組が再開してしまい、イタチは警戒の色を強める。

そして…始まるや否やこういう題目が…


《母親が幸せな時、子どもも幸せ 父親の幸せは関係ない!?》


ピキリッと石化してしまいそうになった。


(序盤からかッ―――!)


『英国の4万世帯を対象に10~15歳の子どもにアンケートを行った所、こういう結果が出たそうです』


ゲスト出演している誰かがそう言った。

すると、チーンとベルを鳴らして別のゲストが関連した話題を口にする。


『英国の大学が、バングラディッシュで母親がいない子どもを調査したところ、乳児の10歳までの死亡率が約25%に上昇しました。

父親の場合はほとんど変わりないという結果が得られました』


(余計な事を―――!)


内心、焦りながらぎこちなく主を見た所…若干、眉を寄せていた。


(まずい…)


主の機嫌が徐々に降下してきている…。

この状況を打破するためには…と思考をめぐらすイタチの目にとまったのは、長机に置かれているリモコン。

さっとリモコンをとるや番組を変えた。


「あっ、イタチ! 番組変えただろ!」

「うりゅ、まだ続いていたのに~」


「いや…そろそろサスペンスが始まると思って」

「おい、イタチ…」


ヴァンスが、少し低音で名前を呼んだ。

イタチはポーカーフェイスを崩す事無く「はい」と返事に応答する。


「さっきの番組に戻せ」

「えっ…?」


思わず間の抜けた声を漏らしてしまうが…その隙にさくたろうがリモコンを持つと「うりゅ!」と言って元の番組に切り替えた。


『父親が子どもに愛情を抱くには、母乳がでなくても、自らの乳をすわせた方が良いです』


ちょうど、別のコメンテーターがアドバイスするようにその話題を説明していた。

テレビと主を交互にみながら、イタチは静かに口を閉じる。


「…これはあくまで一説を提示しているだけだ。過剰な気遣いはしなくていい」

「…失礼しました」


いつもと変わらずに冷静な表情で、そう呟いたヴァンス。

イタチはホッと胸をなでおろして、番組を最後まで視聴する事にした。


その数日後―――主の部屋をさくたろうと共に掃除していたら……


「あっ、日記がバラバラになってる!」

「ああ、片づけないと…ん?」


頁がバラけた日記をみつけてしまい、その件で少しショックを受けていた事が判明してしまう。





【おわり】


◇◇◇ ◇◇◇◇◇ ◇◇◇


【あとがき】


今回は、昨日のある情報・バラエティ番組をみていて突発的に二作品の小話をつくってみました。

リエ編は、幼い頃の娘とのやり取りを振り返りながらのほのぼの系。

ヴァンス編は、テレビ番組を通して少々ギャグ風味で。



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