【10】敵陣的新年会
【敵陣的新年会】
年が明けてから一月三日。
リエは、トライライトタウンのアパートで寛いでいた。
一日目に、身内とエクレシア仲間、親しい人達との間で新年会を行った。
二日目には、王様から招待を受けてパーティに出席した。
そしてとうとう正月最後の日…。
12月後半から多忙だったため、リエはゆっくり休みたいな…と思い、アパートで身体を休める事にした。
(寒い…ちょっとお昼寝しましょうか)
厚い布団が敷いてあるベッドにもぐりこむ。
ふわふわした肌触りの布団が心地よく、うとうとと眠気に誘われる。
すぅーと寝息を立てて、夢路へ誘われていった。
その10分後…瞼を閉じてスースーと眠るリエをみて、ハァと息を吐く一人の男。
「……呑気なものだ」
そう呟くと、寝ているリエを慎重に抱きかかえて瞬時にアパートから姿を消した。
◇◇◇ ◇◇◇◇◇ ◇◇◇
「ん……ここは…」
瞼を開けると、そこはアパートとは異なる和室の一部屋だった。
脱力感を感じながら身体を起こして、目を擦る。
両目を瞬きしながら、辺りを見回すと襖が少しだけ開いて暗い部屋に一筋の光を差していた。
その襖の隙間からみえる光景をそっと覗きこんでみた。
―――《大広間》
この屋敷の主が上座の真中に足を組んで座っている。
周囲には、主の知人や関係者が横に並ぶように座り、談話したり、食事や酒をつまんでいる。
(あっ、ヴァンスだわ)
自分をかどわかしたのは、夫であった。
酒を飲みながら、傍らにいるブルネットの上品そうな男性が笑いながら話かけている。
少し視線を別方面へ逸らすと、イオンが中央に並べられている山盛りの肉団子パスタを
誰かと取り合っているようだ。驚くべきはエドワードが生前の姿に戻っていた事だ。
ヴァンスの力か、はたまた鍛錬を積んだ事で人の姿を形成できるようになったのか…。
「ひゃほーう、あけましておめでとう! ヴァンス覚悟ぉおおお!」
突然、何やら可愛らしい口調の物騒な発言が聞こえてきた。
障子が開くや、まるでターザンの如く上につけた縄を片手に飛び込んできた奇妙なクマのぬいぐるみ。
片手にもったナイフをヴァンスに投げつけるが、ヴァンスは器用に箸でそのナイフを受け止めた。
「……随分な新年のあいさつだな、モノクマ」
「うぷぷ、見事な箸捌きだね。
新年早々の僕からの初ナイフが額のど真ん中にあたらないなんて…
…不服だね!」
【モノクマ】とよばれるぬいぐるみ。
左半分は白い可愛い雰囲気だが、右半分は黒い邪悪な表情を浮かべている…。
ヴァンスに本気で襲いかかり、それが不発に終わったのが悔しかったのか、
額に青筋を浮かべ手から生える爪をシャーと立てた。
ヴァンスはそんなぬいぐるみの凶行に涼しい態度で言い返す。
「フン…」
「あー、バカにしてるでしょ! 小馬鹿にして笑ってる!
ふーんだ。いいもん、この鬱憤と怒りはさくたろうにあげるから!」
「うっ…うりゅ! 嫌だよ、僕いらないよ!」
モノクマが隅っこで雑煮を食べていたさくたろうに標的を変えてナイフを投げつけた。
だが、イオンがさくたろうを片手で掴みあげたため難は逃れた。
「やめろ。このめでたい日を壊すつもりか…」
黒いローブのような物を身に纏けた、顔面に縦断する大きな刺青のある男性が顔を歪め、苦言を呈する。
「まあまあ…彼は少々酔ってるんだ。そういう事にしておいたらどうだい?」
ブルネットの髪の穏やかな風貌の男性が、クスクスと笑いながら、ガラスに入ったワインを一口飲む。
「ヴァンスー、こいつどうするのさ。こいつがいると宴会が殺人現場になっちゃうよ!」
「こら~、暴力反対!」
イオンが迷惑そうな顔で、モノクマの頭を鷲掴みしてヴァンスにつきだす。
モノクマはジタバタ抵抗して凶器を振り回そうとするが、凶器は床へ叩き落とされてしまい、
怪我する心配はない。ヴァンスは、刺身を咀嚼し終えると「押し入れにいれておけ」と隣の部屋を指さす。
イオンはコクッと頷くと、相変わらず抵抗をやめないモノクマを掴んだまま隣部屋へ行った。
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