色々噺(その他)
【ちょこっと里帰り】
その日、ヴァンスは隠れ家にて久方ぶりにゆったりとした時間を過ごしていた。
世界を渡り歩くのが日常的である故に、こうした一か所での休養は非常に貴重だ。
座布団を枕代りにして、頭をのせて熟睡するヴァンス。
すると…耳元で何やら話しかける声が…。
「じーちゃん、あしょぼー」
「にーたん、ねんねー」
薄らと瞼を開けると、そのわずかな視界に薄紫色のこねこにんと白いこねこにんが映る。
「月華、ソラ…何しに来た?」
「あしょびに、ばーちゃんと」
「りったん、あっち」
御丁寧に、こねこにんズはこの隠れ家を訪問した理由と同伴者の名前まで暴露してくれた。
ヴァンスは眉根を寄せつつ、起き上がって隣の部屋の襖を開けた。
「ヴァンス、こんにちは」
「……ああ」
もう一人の侵入者…もとい妻は、にこやかに笑いながら日常挨拶をした。
洗濯物をさくたろうといっしょに畳んでいる最中だ。
「私は今、手が離せない状態だからふーちゃんとくーちゃんの遊び相手になってくれませんか」
「……それ以前に、何故ここにいる?」
「たまには、妻も夫に甘えたくなる事があるんですよ」
何気に男を酔わせるような殺し文句だ。
せっせとまっ白いタオルをたたむ妻を見つめていると、肩に何かがのしかかる。
ちらりと目を横にやると、ソラが糸目で乗っかっていた。
「にーたん~」
「じーちゃーん、おかしー!」
同時に、月華が足元にしがみ付いて甘えてくる。
だが、二人の幼子に眉を顰める事無くフッと口元を少し緩める。
「ちび共、ついてこい」
ヴァンスはそう言うと、足元にいた月華を拾い上げる様に抱きあがると、そのまま自室へ戻って行った。
「あらあら、すっかり《おじいちゃん》が板についてきたわね」
リエがクスリと笑いながら、旦那が内心、孫たちの訪問に破顔している事を見抜いていた。
今日は、御馳走にしようかしら…と晩御飯のレシピを思案していた。
【おわり】
◇◇◇ ◇◇◇◇◇ ◇◇◇
【あとがき】
突発的に思いついた番外編の小話です。
孫煩悩なおじいちゃん(ヴァンス)と、それを見守るおばあちゃん(リエ)を描いてみました。
孫達は、勿論二人の事が大好きです。
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