コゼットの日記


私は今、とある国の宿屋にいる。

このたび、シン君とその仲間達が見事ダンジョン攻略に成功。

ダンジョンへは、私もついていったけれど、あくまでサポート役に従事した。


宝物庫を開けて、ジンが出現する光景を目にするのはもう見慣れてしまった。

初めて、ジンを見た時は驚いたけど…慣れって怖いものだわ。



《おお、貴女様は……!》



必ずといっていいほど、ジンが…彼らが私をみると驚愕、歓喜に満ちた表情を浮かべる。

中には感極まって涙を流してしまう人(?)もいた。

あたかも、昔の旧友のように…目上に対する敬愛のように…。


彼らに理由を聞いても、明確な答えを言ってはくれない。

ただ、第6迷宮にいたブァレフォールさんが密かに教えてくれた気になる言葉が頭から消えない。



『若きエクレシア……君は、僕等の王が愛した【あの御方】とよく似ているよ』



ジンを総べる王…どんな御方だったのかしら。

王が愛した方と似てる…? その御方もどんな人なのだろうか。

悩んでいても答えが導き出せないのだから仕方ないけれど、モヤモヤした気分で、どこかスッキリしない。

枯れ葉を全部箒で集めたと達成感に浸る直前に、強風がきてまた新しい枯れ葉が

わんさか落ちてきた時の心境みたいな感じだわ。



幸いなのが、この世界ではエクレシアの存在が好意的にみられている事。

母さんと私達の活動が実って、ようやくエクレシアの存在を肯定するところが増えてきたとはいえ、

まだ根強い偏見が残っている世界も少なくないのだから。


人間にもその存在が知られたら、どうなるか分からない。

過去に、私の正体を知った人達は、ありのままの私を受け入れてくれたけれど、

すべての人がそうとも限らないのだから。



……実は、シン君達にはもうバレてしまっている。

アル・サーメンが妨害してきた際に、彼らによって暴露されてしまったためだ。

彼らは、多分私の本当の姿を明かせば、シン君達と距離ができると目論んでいたのでしょう。



『例え、コゼットが人間じゃなくても、コゼットは俺達の仲間だ!』



しかし、彼らにとって予想外の展開が起きた。

シン君は…私を突き放すどころか、仲間だと断言した。

ジャーファル君も…ドラコーンさんも…ヒナホホさんも。


皆、私を…『エクレシア』の事も受け入れてくれた。

ホッとした…それからすごく嬉しかった。



『コゼットさん、貴女はエクレシアである事に誇りをもってください。

例え、誰かに否定されたとしても…私にとって、貴女は自慢の弟子です』



まだエクレシアに成りたての頃、自信のなかった私に…

師匠であるハヤテさんが言ってくれた魔法の呪文のように。


ハヤテさんは、外見は少し病弱そうにみえる。

でも、見た目とは裏腹に剣技と幻術などに長けていて自分の目標をきちんともった誠実な人だ。

彼は、生前同業者の闇討ちにあってオーブになった。

当時、お付き合いしていた恋人の女性を残して先に魂となった事を後悔しているって言っていた。


ハヤテさんの気持ちに共感した。

私も…妹のように、大事に思っていた姫君を残してオーブになったから。


同時に、私はその恋人の女性が羨ましいな…と思った。

これって…やきもちになってしまうのかしら。


はぁ~とため息を漏らして、バルコニーに出て外の空気を吸っていたら、シン君が声をかけてきた。



「コゼット、どうしたんだ?」



何か悩みでもあるの、と心配でたまらなさそうに瞳を細めて見つめてくる。

年下の子にまで気を遣わせてしまうなんて…私もまだまだ頼りないな。

なんでもない、少し昔の事を思い出しただけ…と笑って誤魔化した。


満点の星空……あの星のどこかに、クロト=メグスラシルがある。


ハヤテさん……貴方は今、何をしていますか?

同じように星空を眺めていますか?


貴方の心に、愛おしい人がいるように…

私の心の中に…貴方がいてもかまいませんか?


私のありったけの素直な気持ちをこっそり歌で捧げます。


 
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