コゼットの日記
ムスタシム王国は、花と泉の楽園と言われている。
その名の通り、綺麗な花々が咲き、自然に包まれた豊かな国だ。
でも…この国には差別があった。
この世界は、ルフという大いなる力が全てを動かしている。
そのルフを普通は見ることも出来ないけれど、「魔導士」である人間は生まれながらに見る事が出来るのだ。
魔導士は王国に仕えていたけれど、周囲の人達からは怪しまれて、うとまれていた。
この国は外部からやってきた私や行商人でさえも、敬遠する傾向がある。
茨の檻の中で、魔導士の人達はどれほどの苦痛を日々、味わってきた事だろう。
考えるだけで…胸が痛い。
そんな中でも、魔導士の人達は必死に国に尽くしている。
屋台によく訪れる常連の父子もそうだ。
「魔導士には魔導士にしかできない事がある。
魔法はたくさんの人を助けられる。
きっと、この世をよくするために、自分達にはこの力があるんだ」
お父さんのマタルさんがそう熱弁してくれた。
彼の纏うオーラは、とても真っ直ぐで綺麗な色をしている。
ああ、この人と娘さんの苦労が報われる時がきますように…。
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1年ぶりにムスタシム王国を訪れるや、緊急事態が起きていた。
国中に伝染病が広まっていたのだ。
その上、病の元凶が魔導士達にあると、とんでもない噂まで広まっている。
今まで、魔導士を頼りにしていた人達が掌を返して、彼等を恐れ、憎しみ、攻撃する。
一人の魔導士が石を投げつけられているのを助けた。
そしたら…その子はマタルさんの娘さんだった。
彼女は涙を流しながら言った。
ありもしない噂の所為で、魔導士は酷い目にあっている。
国王は、それを鵜呑みにして魔導士を投獄していった。
その中には、父さんの弟子や、親しい友達もいた。
どうして、どうして…私達ばかりがこんな目にあうの!
顔から血の気が引いてくるのが解った。
同時に、この理不尽な状況に沸々と怒りが込み上げてきた。
多分、噂を流した犯人は魔導士達を快く思わない勢力だ。
でも、その証拠を見つけるにしても、時間がかかってしまう。
仮に、見つかったとしても上流階級であればシラを切って罪をうやむやにするかもしれない。
そうなれば…問題を別の視点から解決へ導くしかない。
そう考えた私は、娘さん…サーナちゃんに、ある事を頼んだ。
お父さんの研究室を貸してほしい、と。
マタルさんは、突然の頼みに少し戸惑っていた。
何故…と不思議がるマタルさんに、私はその理由を説明した。
今、蔓延している伝染病を治す薬を開発する。
そのために、マタルさんと他の人達にも手伝ってほしいと頼みこんだ。
伝染病の原因をつくったのが魔導士だと、人々は信じ込んでいる。
なら、その噂を相殺する事実をつきつければいい。
魔導士が、治療薬をつくって病にかかった人を治せば、少なくとも噂がデマだという事を、
人々は認識するはずだ。
この方法がうまくいくとは限らないけれど…やってみるしかない。
私の作戦にマタルさん達は協力してくれた。
それから、感染症にかかった人のもとに行き、私は検査をしていく。
勿論、「月光屋」の私は知られているから、異国からきた医師という風に設定で変装しました。
マタルさんも傍にいたからか、顔を潜める人もいたけれど…
「魔導士が民を救うために積極的活動をしていた」という事実を作らなければ意味がない。
その都度、住民の人達に噂にまどわされないで、と説得は忘れずにね!
途中で、誰かにやとわれた暗殺者に狙われたりしたけど、退けてやったわ…剣術で。
あと、その暗殺者の一人を捕えて、供述もゲットしておいた。今後の為にね。
三日後、検査の結果、採取した血液から細菌を特定した。
類似した細菌を病院の資料で見た事があったので、今度はそれに対する特効薬をつくる事にした。
マタルさんの仲間の一人が、薬草学に詳しい人でよかった…。
つくった薬を、比較的協力的だった住民の一人に飲ませて、三日後、症状は軽快していった。
それから、伝染病にかかった人達に薬をあげていき、完治させる事に成功。
住民の人達も、マタルさん達にデマを信じた事を謝罪していた。
囚われていた魔導士の人達も解放されて…一段落したな~と思ってホッとした。
マタルさんや魔導士の人達からも御礼を言われて…少し照れちゃった。
その後で、この国の王様と謁見する事になった。
正直、人さまの悪口は言いたくないけれど…人格的にあまり好ましくない人だった。
あの暗殺の件と背後にいた犯人の事を申告したけれど、そっけない対応。
私と謁見したのも、魔導士たちと協力して民を救った事ではなくて、他の国々で有名人だから、
と堂々と言ってたし…なにそれ、と耳を疑ったわ。
まあ、確かに…
剣術を極めるためにレームの闘技場に参加して、いつの間にか上位ランクになっていたり、
攫われそうになっていた少女を助けて…
その子…いえ、その御方がレームの最高司祭だったって事もあったけど…。
その上、司祭様の専属料理人になったっていう見当違いな噂も流れているし…こっちも困っているのに。
この点に関しては、反省していたのだけれど、それで謁見できるなんて…予想外で、かなり複雑な気分だわ。
溜息をつくのを抑えて…明らかに、自分の都合の悪い事に目を背ける王様に忠告しておいた。
“ 検証もなく、噂に惑わされているようでは…今後、国のあり方に支障をきたしますよ”
案の定、良い顔をしていないけど、覇気で黙らせました。
他の貴族の人達も一緒にね。
こういうやり方はスマートじゃないけれど…この人達にはちょうどいいと思う。
そろそろ、他の国に移動しようと支度をしていたら…サーナちゃんが改めて御礼を言いにきた。
今度、国を訪れた時は、美味しいパンプキンパイをたくさん買ってくれる約束をしたの。
指切りをして、一緒に笑顔で…。
きっと、来年もいくからね。
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