ルシュの思い出メニュー
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
*** ***** ***
「うーん…」
機関の城の厨房で、シオンは難しそうに唸っていた。
ぺらぺらと本の頁を捲りながら、思案している。
「うーん…どうしよう」
「お困りかぁ~?」
「きゃっ!?」
後方から声をかけられ、シオンは思わず驚きの声を出してしまう。
「…もぅ、シグバール。いきなり声かけないでよ」
ビックリしたよ~とシオンが胸を手で抑えながら抗議する。
「わりぃわりぃ…ところで、しーちゃんは何を悩んでるんだ?」
軽く謝りつつ、シグバールは厨房にいる理由を尋ねると…
「スイーツを作りたいの」
今日は休み(余談だが、13機関の勤務体制は変化し、週に二回休日を取れるようになった)だ。
各メンバーは自分の趣味に没頭したり、買い物をしたり、熟睡したりと…ストレス発散している。
そんな中、シオンは普段はできない事に挑戦してみたい気持ちに駆られた。
「…で、菓子作りか」
「そう! でも…いざ料理本を見るとね、どれも難しそうだなって思って…」
開いた頁をちらりと見ると、そこに記載されているレシピは【ザッハトルテ】
「…おいおい、初心者にはこのレシピは無理だろ」
「えっ、そうなの?」
試しに最初の方から頁をさっと読んでみて、シグバールは眉を顰めていく。
「…つーか、この料理本ってレベルが高いヤツ専用のじゃねえか。誰のだ、これ?」
「書庫室にあった一冊、借りてきたんだけど…」
素直に答えるシオンに、シグバールはハァ…と軽く溜息を吐く。
「これは、今のしーちゃんには難しすぎるってハナシ。
もっと簡単なヤツにしねえと…」
「そっか…でもカンタンな物ってどういうのがあるのかな?」
「ほら、リエの嬢ちゃんがいる時に料理と一緒に菓子もついてくるだろ」
この場にいないリエが食事を作る時は、必ず食後のデザートも用意してくれる。
シオンは、今まで食べたデザートの数々を思い出して「なるほど!」と頷く。
「なんとなく分かったよ。
…ところで、シグバールはどうして此処に?」
「小腹が空いたから、なんか足しになる物はねえか探しに来たのさ」
そう言いながら、シグバールは冷蔵庫にめぼしい物はないかと探してみる。
「…うまそうな材料はあるが、酒を今飲む気分じゃないから後回しだ」
「甘い物とかどう? チョコならあるよ」
「おっ、サンキュー」
シオンが戸棚に置いてあった一口チョコの入った籠を持ってきた。
差し出された籠の中から、ビター味のタイプを選んでパッケージを取り除いて口内へ入れる。
「パンケーキにしようかな…」
シグバールが咀嚼しながら味を楽しんでいると、シオンが作りたいデザートを決めたようだ。
「んー、いいんじゃねえか?」
「よし、決まり!」
パンケーキのレシピを探そう、とシオンはハミングしながら厨房から出ていった。
「そういや…あの時もパンケーキだったな」
*** ***** ***
「パンケーキって不思議ですよねー」
フライパンでパンケーキをじゅーと焼いている最中に、マリエがそう語りかけてきた。
「なにが?」
「みんな知っているポピュラーなメニューで、ふわふわで甘くて何枚食べても飽きない、
まさに不朽の名作…みたいなスイーツじゃないですか」
言われてみれば、確かに…と思った。
使命を果たすために、この時点で五回ほど器を変えて、異なる世界へ渡航して生活する事が
日常の一部となっていた。
世界に食文化の違いはあれど…
今まで過ごしてきた世界の大半では【パンケーキ】は存在していた。
「ある国では、パンケーキの事を『ホットケーキ』という名称で呼んでいるみたいですよー」
「へぇー…」
ちなみに、俺とユーゴはマリエの調理の手伝いをしている真っ最中だ。
俺はイチゴ、バナナ、リンゴなどの果物を適当な形に切っていく担当。
ユーゴはというと…
カットした果物や生クリーム、ジャム、カスタード、チョコレートクリームなどを
別の机の上に置いていっている。
セッティングが完了すると、ユーゴは自分用の出来立てのパンケーキに飾りつけをし始めた。
「マリーさん、おにいちゃん! みてみて!」
「おっ、いい感じに仕上げたな」
「えへへ…」
三段重ねのパンケーキは、パンケーキ一枚ずつ生クリームを万遍なく塗り、
一番上にいちごジャムをかけている。
その上から、さらにイチゴとブルーベリーを綺麗に並べており、皿の周りに
バナナとチョコレートクリームでトッピングしている。
五歳児にしては、なかなかのデザインだ。
「ママがね、パンケーキ、つくってくれるとこういう風にしてくれるんだ」
母の料理の見た目を真似てみたのだと力説するユーゴ。
その様子から、彼は母親の事が大好きのようだ。
「なるほど…良いママだな」
「うん!」
母親の事を褒められて、ユーゴは得意げに胸を張る。
・
