ルシュの思い出メニュー
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「ところで、今日のメニューなんですけれど…」
話題を切り替えるように、マリエが夕食の事で質問してきた。
「実は、午前中に実家から荷物がきまして、食材が届いたんですよ」
「そうなのか…どんな物が入っていたんだ?」
「お菓子類、香辛料、野菜とオリーブ油に…あとは大量のパスタですねー」
相槌を打っている最中、後半の単語に耳を疑った。
「…パスタが大量?」
「好物なんで、両親…特に母が気を利かせて多めに入れてくれたんですよー。最高だなぁー」
「んふふー♪」と周囲に小さな花を咲かせて、嬢ちゃんは嬉しそうに笑った。
その話から、両親は健在である事が分かった。
娘のために食材を送る辺り、良好な関係を築いているようだ。
「…と言う訳で、夕食はパスタ料理でいいですか?」
「あぁ、構わない」
個人的にパスタは嫌いではなかったので、了承した。
「よーし、なら今日のパスタはボリュームたっぷりの物にしましょう!」
いつになく気合が入っているマリエ。
そんなにパスタが大好物なのか…。
その時の俺は、ほんわかした雰囲気を出しながら張り切る嬢ちゃんの姿を見てほんのりと心が癒されていた。
「早速ですけれど、ルシュさんはトマト、オイル、クリーム…どのタイプのソースがいいですか?」
「うーん…どれでもいけるけど」
腹に溜まる物であれば、ソースがなんであれ構わない。
だが、その日の俺は気分的に肉が食べたかった。
肉と合うソースは…と考えて、俺は答えを出した。
「…トマトソースかな」
「トマトですねー。りょーかいしました」
マリエは大きく頷くと、キッチンの方へと移動していった。
(そういや、トマトと言えば…)
トマト関連で、俺は昔の事を思い出した。
*** ***** ***
師は本業の傍ら、個人的な趣味の一環として小規模な家庭菜園をしていた。
『うーん、豊作だねー』
『…見事に赤一色ですね』
その時は、トマトがたくさん実っていた。
師の隣にいた俺は感想を言いながら、トマトを収穫している仲間二人…アヴァとグウラを傍観していた。
『そもそも、なんで野菜を作るんですか?
町に行けば、買えるじゃないですか…』
『一から育てた野菜は美味いぞ。
ほらー、自分で作ったケーキが格別に美味しいじゃん、あれといっしょ!』
『…そういうもんなんですね』
師の言葉にいまいち共感ができなかったが…
素直に言ってもアレなので一応どっちともとれる返事をした。
すると、師は置いてあった専用の籠を俺に渡してきた。
『ほらほら、お前も参加しなさい。
二人だけに仕事押し付けてたら可哀想だろ~!』
『…えぇー』
結局、俺もトマトの収穫を手伝う羽目になった。
仲間二人と他愛もない雑談をしながら、作業を進めていった。
『今日の夕飯はトマトがメインだね』
『当番は、インヴィだったな』
『よかった…アセッドだったら、絶対に濃い味付けばかりになってたよ』
修行していた頃は、料理は弟子である俺達が交代で作っていた。
グウラは好き嫌いはそんなになかったが、味付けにはこだわりがあった。
だから、アセッドが当番になった時は必ずサラダを多めに摂取していた。
『おつかれさまー、三人とも』
作業が一段落した時、師が丁寧に切り揃えたトマトを盛り付けた大皿を長机の上に乗せて待っていた。
『頑張ったご褒美に、新鮮なトマトを食べたまえ。美味いぞ~』
『うわぁ…あまーい!』
『うん、いける』
師に勧められて、アヴァとグウラはトマトの味を絶賛していた二人を見ながら、
指で掴んでそのトマトを食べてみた。
…あの味は、器を変えた今でも忘れられない。
*** ***** ***
「あれ、どうしました?」
昔の事を思い出した所為か、気付けば嬢ちゃんがいるキッチンまで足を運んでいた。
白い調理用の頭巾を頭に被り、シンプルな水色のエプロンをつけたマリエは
不思議そうに来た理由を尋ねてきた。
「いや…何か手伝えることがないかと思ってな」
よく考えてみれば、いつもマリエに一人で料理を作ってもらっている。
ハヤシライスの一件以降、何かと美味い物を食べさせてもらっているため、
食費を事前に支払うようになった。
だが…作る側の負担は大きい。
食器の配膳、材料の下拵えを含めた調理、さらに後片付け…
これらを一人で行う事はとても体力がいるのだ。
改めて、金銭だけでは釣り合わないと思った。
「んー…それじゃあ、お言葉に甘えましょうかー」
マリエは顔を緩めて、俺が手伝う事を許可してくれた。
「ちょっとお待ちくださいねー」
そう告げると、俺が身につけるためのエプロンを探しに行った。
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