デミックス・リサーチ
この質問はアウトか…とヴィクセンも若干残念そうな顔で諦めかけていた。
だが、意外な答えが返ってきた。
「まあ…特徴はいくつかあるかな」
「えっ、あの…もしかして教えてくれるの!」
「こらっ、デミックス! ため口になっとるぞ!」
いつもの口調に戻っているデミックスにヴィクセンが注意をするが、普賢は「いいですよ」と言った。
「そんなに畏まらなくてもいいですよ。初対面でもないし、いつもの口調で構いませんよ」
「マジで! それじゃあ、特徴を教えて!」
「お前の場合はくだけすぎだ!」
調子づきそうになっている後輩に、ヴィクセンは素早く突っ込む。
二人のコントにクスクスと笑いながらも、普賢はある条件を足してきた。
「すべての特徴は言えないけれど…一つだけなら教えます」
「あー、全部じゃないのか…」
「口を慎め! いやいや構いません。こちら側のお願いなのですから…」
二人が要求をのんでくれた事に「助かります」と礼を言うと、普賢は服の袖を捲り、右腕の露わにする。
その二の腕部分には、変わった形の紋様が薄らと光を帯びて表れる。
「これは【エイコーン】と呼ばれる紋様。エクレシアにしか現れない特有の「印」です」
「おおー」
「これは…三つ巴の紋様ですか」
「僕の場合は三つ巴だけど、エクレシアによって紋様は違って、それぞれ身体のどこかに現れます」
「いつもこの【印】はでてるの?」
デミックスが紋様の個所を指さして尋ねてみたが、普賢は首を小さく左右に振る。
「普段は光らないからあまり目立たないかな。
何かしらの力を感じ取ったりすると自然に光を帯びるけれど…」
普賢は服の袖を戻しながら言っていたが、ふと手荷物から鳴り響く携帯音に気付く。
「すみません」と断りを入れて携帯にでた。
「もしもし、ああ…望ちゃん! えっ…今、ちょっとインタビューの途中なんだけど…」
『望ちゃんって誰?』
『私が知るか! おそらく、普賢殿の知人だろう』
デミックスとヴィクセンが小声で対話する一方、親友と通話中の普賢の表情が気難しくなる。
「うーん、そうなると…僕も行った方がよさそうだね」
会話の内容はあまり分からないが、少なくても…普賢の表情からあまり歓迎しないものだと暗に分かった。
横に座るヴィクセンも「まずいな…」という感情が顔に出始めている。
15分後、通話が終了するやヴィクセンの予感は当たってしまう。
「大変申し訳ありませんが…急用が入ったので、インタビューをここでお開きにしてもいいですか?」
普賢は申し訳なさそうに謝罪を口にする。
デミックスは「えー」と嘆きと困惑が交った声が漏れてしまう。
インタビューする側にとっては、寝耳に水だ。
それ以前に、インタビューよりも親友の要請を最優先する当事者の姿勢もある意味問題があるが、
普賢にとってはかなり緊急事態な事なのだろう。
ヴィクセンは仕方ない…と思い、インタビューを終了する事に同意した。
「すみません…。お詫びとして、次のエクレシアのアポイントメントをこちらで進めさせていただきます」
「えっ…マジで! 本当に!」
「落ち着かんか! いや…本日はご多忙の中、つきあってくださり誠に感謝いたします」
「いえいえ、大した事を言えませんでしたが、とても楽しかったです。
また、こういう企画があれば連絡下さい」
爽やかに微笑みながら言うと、普賢は立ち上がる。
「それじゃあ、失礼いたします」
軽く会釈して部屋を退室していった。
「…ふぅー、どうにか終わったな」
「でもさ、普賢って人、いい人だよね。俺達の代わりにアポ取ってくれるだなんてさー♪」
「それよりも、デミックス! お前は途中からため口になりおって!」
当事者がいなくなった途端に、ヴィクセンは溜まっていた不満を解放していき、
デミックスはそれから数十分ほど小言を受ける羽目になった。
《おまけ》
店を離れようと会計に行った所……
「お会計でしたら、先程のお知り合いの方からお支払いいただきました」
「なっ…本当ですか!?」
「マジでいい人だ~!」
普賢のささやかなサービスに、思わず感動してしまった二人だった。
【つづく】
◇◇◇ ◇◇◇◇◇ ◇◇◇
【あとがき】
デミックス・レポートの最新版です。
今回の相手は普賢ですが、かなり苦戦しました。
残っている三人に比べて、どんなやり取りへ発展させていくべきかでまとめるのか…難しかった。
今回のパートナーにヴィクセンを選んだのは、突っ込み役にふさわしいと思ったからです。
彼の性格なら、デミックスが調子に乗ってもすかさず指摘できますからね(笑)
次回は、反機関派ふたりのどちらかになります。
・
