デミックス・リサーチ


「リーシェさん」

「うん、なんですか?」


「さっき、『嬉しい出来事があった』って言ってましたよね?

どんな事があったんですか?」



シオンが興味津々に、リーシェが冒頭で話した事を尋ねた。

そういえば、『嬉しい出来事』の詳細は語られていなかった。

どんな事があったのだろう…?



「ああ、それについて」

「話せます?」

「んー、ああ…別に大丈夫。どうせ隠していてもいずれはバレそうだし…」

(やけに意味深な言い方だなぁー)



ジュースを飲みながら、デミックスは二人の会話に耳を傾けていると…



「先日、妹が生まれました」

「ぶふぅー!? ごふごほっ…って…ぇええええええ!?



思わず口からジュースを吹き出してしまい、デミックスは絶叫してしまう。


「こら、吹き出すな」

「五月蠅い、吐くなら厠へ行け」


金色と薄茶色のピヨがブーイングしてくるが、それどころではない。

公開された情報に、デミックスはあわ、あわわ…と慌てふためいている。



「あの…リエりんはいつ頃から…」

「昨年の冬頃に判明しました」



リーシェ曰く、リエは昨年の11月頃に妊娠していた事が発覚した。

安定期に入るまで、定期的な検査以外は異世界で過ごしており、一週間前に無事に出産したそうだ。



「うわぁー…おめでとうございます!」

「ありがとう」


「ちょっと~…なんでそんな大事な事、連絡しなかったんだよー!?」



リーシェに新しい家族ができた事に、笑顔で祝いの言葉を紡ぐシオン。

対照的に、デミックスは重要な事が伝達されていなかったと不満を口にするが…



「貴方のところの上司が騒ぐからですよ。

あの男、私の可愛い弟が生まれた時も色々と五月蠅かっただろ。

情報をシャットダウンしないと、阿呆な事しでかすのが目に見えてるでしょう」



リーシェは呆れた顔で理由を告げる。

あ、確かに…とデミックスは逆に納得してしまった。

以前、リエが男児を出産した時も、ゼムナスがかなり暴走した事を思い出したからだ。



「ちなみに…お相手は?」

「それを聞くのは野暮ですよ」



ですよねー…とデミックスは冷や汗を流しながら、視線を別方向へ逸らすしかなかった。





【デミックス・リサーチ⑧】





どうしよう、予想外の形でとんでもない情報を入手してしまった。

ゼムナスにこの事を報告したら…と想像すると、気が重くなってしまう。


「はぁ…どうしよう。どうしたらいいと思います?」


デミックスは現実逃避したくなった。

オレンジジュースのプールに浸かるDIO、ナゲットを食べる宿儺に思わず悩み相談をしてしまうくらいに。



「悩む必要はないだろう。ありのまますべてを報告しろ。

上司が文句を垂れるならば、こう言ってやればいい…

『貴様は【机上の空論】しかできない無能な働き者か』とな」


「どうでもいいわ。それよりも、そこのピザをよこせ」


「火に油を注いで意味がないじゃん! つーか、まだ食べるんかーい!!」



DIOは、思いっきり逆効果なアドバイスをしてきた。

宿儺は「くだらん」と端から非協力的で、食事に集中している。

デミックスはがっくりと項垂れてしまう。



「デミックスさん」



名前を呼ばれ、反射的に顔を上げたデミックス。

リーシェは口元に綺麗な弧を描いてこう告げた。



「あの銀髪男に伝言お願いします。

『余計な事したら、××××××(規制音)するからな』と」


「爽やかな笑みで怖いこと言ってるし!

えげつない脅迫、混ざってるよ!?

それストレートに言ったら、俺が消されちゃうから!!」




デミックス、二度目の絶叫。



「リエさんにどんなお祝いしたらいいかなぁー…」



【混乱状態】【思考回路ショート寸前】という名のステータス異常に陥っている音楽青年とは対照的に、

シオンは大好きな人に贈るお祝いのプレゼントを「何にしようかな~」とワクワクと思案していた。





その一週間後、リエ宛に親友や仲間達からのプレゼントが続々と届けられ、彼女は満面の笑みを浮かべていた。

一部の贈り物の中には、分厚い日記に近い厚さの手紙まで同封されていたようだが…

リエがそれを一通り読み終えるとすぐに、たまたま幼い子ども達の様子を見に来ていた旦那の手によって

焼き芋を作る燃料にされてしまったのだった。





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