デミックス・リサーチ
「ありがとうございました~」
一時間後、注文した商品が届いた。
店員に御礼を言うと、リーシェは届いた品々をよいしょっと両手で運んでいく。
「ピザは久々だけど、良い匂いがしますなぁー」
「うん、そうだけど、でも…」
「この数はさすがに多すぎない!?」
注文した商品は…以下の通り。
【ピザ・マルゲリータ】
【ツナとフレッシュトマトのピザ】
【明太子とポテトのピザ】
【シーフードピザ】
【ミックスピザ】
【たっぷりチーズとずっしりミートソースのピザ】
【ごろごろポテトグラタンピザ】
【アスパラベーコンのピザ】
【濃厚オマールエビソースのカニピザ】
【骨なしチキン詰め合わせ・大】
【チキンナゲット詰め合わせ・大】
【フライドポテト・大】
……etc
「有り体に言いますと、久々に体がジャンクなフードの成分を求めているから。
医療従事者として、それを言ったらダメだろ~…的な言い分はありますけど、我慢しすぎもダメなんですよ」
「りっちゃん先生…これさ、俺達全員で頑張っても、さすがに食べきれないっスよ」
「余ったら勿体ないと思います」
「平気平気。余ったやつは冷凍とかして、別の日に食べますからご安心ください」
「さあさあ、食べよう、食べよう♪」と促されるので、仕方なく言葉に甘える事にした二人。
デミックスは【たっぷりチーズとずっしりミートソースのピザ】を…
シオンは【ツナとフレッシュトマトのピザ】をそれぞれ一切れずつ手にした。
「うまぁああああい!?」
「おいしーい♪」
一切れを食べ終えるや、二人はピザの美味しさに絶賛の声を上げる。
「な…なんだ、このピザは…!?
いつも、城で注文している店のものよりも格段に味が良すぎるッ!」
劇画タッチな表情でその美味の威力を語るデミックスに、リーシェはこう告げた。
「ふふふ…【ピザ・モット】はクロト=メグスラシルで、最初にピザ屋を始めた創業店ですから。
素材にこだわっていて、独自で農園を経営していますからね。
味は勿論、従業員の接客態度も含めて一流なのは確かです」
「すげー納得! 俺、此処の常連になる!!」
「ロクサスとアクセルにも食べさせてあげたいな…」
ピザの味に感動して、リピーターになる宣言をするデミックス。
シオンの方は、ピザを親友二人に手土産にしたいと考えているようだ。
「これ、どうぞ」
彼女の気持ちを汲み取ったのか、とリーシェが【ピザ・モット】の住所と電話番号が書かれたメモを渡した。
シオンは顔を輝かせて「ありがとうございます!」と御礼を言った。
「うん…今回のナゲットのソース、悪くない」
ウサギの仮面を外して、リーシェは素顔を曝け出す。
ナゲットの期間限定ソース(クラムチャウダーソース)をつけたナゲットを咀嚼しながら、その感想を呟く。
(こうしてみてると、本当にリエりんと似てるなぁー…)
ダークな毒を孕む雰囲気の印象が強いが、料理を味わっているリーシェはいつもより大人しい。
ナゲットとソースの味が気に入ったのか、ふふっと穏やかに微笑を浮かべる姿を見てしまった。
普段のギャップと相まって胸がとくんと鳴る。
も、もしや…これが噂の「ギャップ萌え」では!?
(黙ってたら、きれ可愛いのに…)
「さっきから凝視していますね、なにか?」
「っ! いやいやいや、なんでもありませーん」
「まあ、別にいいけど」と左程気にする事もなく、リーシェはピザを一切れ手に取るとそれを食べ始める。
心臓が別の意味でバクバクしてきた…
デミックスは冷や汗を流し、顔を引き攣らせながらぐいっと炭酸飲料水を飲み干した。
ピンポーン
「誰か来たみたい」
「出る前に、誰か見といた方がよくない?」
リンゴジュースを少しずつ飲んでいたシオンが、チャイムが鳴る音に気付いた。
インターフォンを確認しようと、デミックスが腰を上げたその時…
「見なくていいです。あと、出ない方がいい」
ピザをもぐもぐと咀嚼しつつ、リーシェが待ったをかけた。
「どういう事? 押し売りとか、宗教勧誘の類?」
「そういうタイプとは違うベクトルでやばい奴ですから」
リーシェの言葉が気になったのか、シオンは恐る恐るインターフォンの画面を見ると…
「クロロさんだ」
「ええ”っ!?」
デミックスは思わず驚愕混じりの声をあげてしまう。
幻影旅団の団長とリーシェが昔馴染みの関係であるのは知っている。
同時に、仲は微妙である事も知っている(※リーシェが一方的に避けている)。
何故、団長であるクロロ・ルシルフルが此処を訪れたのだろうか?
「あいつ、しれっと此処の住所を突き止めたな。
教えた情報屋は後で調べて…段階的に仕置きするか」
ブツブツと物騒な事を呟いているリーシェ。
あんまり親しくしたくない幼馴染に住所が見つかってしまった彼女よりも、名前も顔も不明な情報屋の
今後の安否の方が心配になるのは自分だけだろうか…とデミックスはブルブルと背筋が震えてしまう。
居留守が功を奏したのか、画面からクロロの姿が消えた。
「念のために結界も貼っていますが、警戒はしておこうか」
「クロロさん、何の用だったんでしょうか?」
「大方、『形式契約、結ぼうぜー』的な要望を話しに来たんでしょう」
「え、あの人、りっちゃん先生と契約したがってんの?」
「前々からそんな話をほのめかしてましてね…
ま、答えは【断固拒否】一択ですが」
形式契約をするためには、まずは契約したいエクレシアの了承が必要となる。
肝心の本人に拒否されているのに…
しぶとく契約をお願いしに来る時点で、クロロの執念を感じずにはいられない。
「ま、この件は忘れてください。次に質問あるならどうぞ」
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