デミックス・リサーチ


「次は…エクレシアになると、必ず医師免許を取らないといけないんですか?」

「リエさん達、お医者さんの仕事もしているよね。でも、神様の卵だけど、免許も必要なの?」



デミックスとシオンからの質問に、リーシェはすぐに口を開いた。



「お答えすると、世界毎の天界の方針によります。

【クロト=メグスラシル】を含めて、ヴァルハラではエクレシアであろうと神族や天使階級であろうと、

医師免許を取得するように義務付けられています。

ただ、古の時代に生きていたエクレシアの場合は、そういう資格は取っていなかったと思われます。

正式に医師免許を取る流れになったのは、レナスさんがエクレシア制度を復活させて以降ですから」



なるほど、免許取得を推奨しているのは最高神の方針だったのか。

手帳に書きながら、デミックスは「あれっ…?」とある疑問を覚えた。



「他の天界に所属しているエクレシアって、まだいないんですよね?」


「現段階では、ヴァルハラうちの天界以外でエクレシアを輩出している天界はありません。

ただ、いくつかの天界では素養のあるオーブを手元に置いているとの情報があります」


「うわっ…マジで」


「【大変動】以降、こちらはあちこち任務に駆り出されましたからね。

その影響ゆえか、エクレシアに有用性を見出したり、功績を再評価するところも増えてきた…そんな感じです」



あたかも、面倒くさそうな感じで語るリーシェ。

エクレシアの地位向上や名誉に繋がるのなら、良い傾向だとみるべきだが…



「そろそろ、法整備をしていかないと…」

「ほうせいび?」


「エクレシアの権利と尊厳を守るためにね。

古の時代では、エクレシアの処遇は世界毎に格差が激しかった…と伝承されています。

ブラック企業を上回るレベルで、過酷で凄惨な所業をしていた世界ところもあったそうです」



リーシェがこそっと小声で事例を紹介した。

その内容は―――どれもがあまりにも酷くて文面に残したくないものだった。

デミックスは恐ろしさのあまり、血の気が引いてしまう。

シオンは「ひどい…」と辛そうな表情で、感想を呟いた。



「だから、法整備を迅速に行います。

過去の悲劇を繰り返さないためにも…

エクレシアを不当に扱う構造を作らないように防ぐためにも、必要な事だから」


「うん、あたしも手伝いたいです!」


「ありがとう、シオンちゃん。その際は、母さんが声掛けするはずだから」



「期待しているよー」と返すリーシェに、シオンは「まかせてください!」と意気込んでいる。

デミックスは内心思った。



(これ、俺らを扱き使うフラグじゃないよね…?)



心なしか、ウサギの仮面の目元がギラギラと怪しい光を放っているように見えてしまう。

ざわざわする胸の感覚が嫌な方向に的中しないでほしいと願うデミックスをよそに、リーシェは言葉を続ける。



「ちょうど12時になりましたね」

「あ、本当だ」



壁に設置している丸い時計の長針と短針が12時の方向に合わさった。

軽やかな音楽が鳴り出し、正午が訪れた事を告げる。



「折角だし、出前を取りましょうか」

「え、い、いいんですか…?」


「どうせ、まだまだ質問続くでしょう?

それなら、食事しながらやった方が手っ取り早いじゃない」



「はい、どうぞ」といくつかの出前用のチラシを机に置くリーシェ。

代金も負担してくれるとの事で、あまりの破格な待遇に、デミックスは頬を抓ってしまう。

抓った頬の痛みを感じたので夢ではなさそうだ。



(りっちゃん先生、本当に機嫌良いんだ…すげー)



なんという幸運な事態。

明日辺り、天気がいきなり豪雪になるんじゃないか…!?



「おい。今、心の中で失礼な事ツイートしただろ」

「うえっ…ま、まっさかー」

「ま、いいけど」



すぐにチラシへ視線を戻したリーシェ。

デミックスはほっとしたが、心臓がバクバクとビートを続けている。



「ピザがいいです」

「なら、ピザにしようか。デミックスさんは?」


「あ、モーマンタイです」

「よし、決まりですね」



「好きなものを選んでください」と【ピザ・モット】のチラシをデミックスとシオンの前に出す。

色んな種類のメインのピザがずらっと掲載されており、サイドメニューもバリエーションが豊富だ。



「迷っちゃうなぁー」

「うーん、どれも美味そう…」

「なら、単品ではなく、色々と試してみましょうか」



スマホを取り出すと、リーシェは素早くピザ屋へ注文の電話をかけた。



「もしもし、クローチェです。ピザの注文したいのですが…」




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