デミックス・リサーチ


「まずはー…エクレシアには部下はいますか?」

「部下って、ダスクとかダンサーみたいな?」
 


デミックスの最初の問いかけに、シオンは疑問符を周囲に浮かべながら尋ねてしまう。



「【エクレシア】は、神様だから偉いポジションだろ。

そうなると、部下とかいても当たり前なのかな…と思ってさ。

シオンは、リエりんと行動する事多いけど、見かけた事ある?」



デミックスが聞き返すと、シオンはうーんと腕を組んで思案する。

数分思案してから、首を左右にゆらゆらと揺らした。

つまり、彼女はそういう対象者とは会った事はないようだ。



「いますね」

「あ、やっぱいるんだ…」


「正確には、最近になって上の方から作るように言われました。

異世界観察の際に、独自のコネを利用して協力者を得たり、現地で仲間を作る事はあれど、

直に仕えてくれる眷属や部下はいませんでした。

昨今の事件・事変を経た事で、エクレシアの知名度があがってきたのも要因です」



…意外だった。

てっきり、最高神であるレナスが良い人材を推薦したりしていると推測していたからだ。



「私はまだですが、加奈さんは秘書を雇いましたよ」

「ええっ!? いつのまに…」


「三年前の異世界観察に行った世界で見つけたそうです。

あと、アンジールさんも同様に現地でいい人材をスカウトしたようで…」



思いの外、スラスラと情報提供していくリーシェ。

デミックスは額から冷や汗を垂らしながら、驚愕を隠せない。



(や、やばい…情報の更新量が増えてないか!?)



リエを通じて必要な情報を仕入れたりしているが、自分の知らない内に情勢が大きく変動している。

これは書いておかないと…とペンを動かして、手帳にその事を記していく。



「リーシェさんも秘書さんを雇うんですか?」

「うーん…まだ必要性を感じないので、保留ですね」



シオンからの質問に答えたリーシェの様子から、眷属や部下を作るのは消極的なようだ。

「そもそも、この人についていける人材がそうそういないだろ」とデミックスは内心ツッコミを入れる。



「アンジールがスカウトした人って、どんな人?」


「オーブですよ。生前は、熊狩りの達人だった初老の男性。

正確に言うと、【エインフェリア】になった人かな」



返ってきた回答に、デミックスははて…と首を傾げる。



「あの…一個、質問いいですか?」

「はい、なんですか」


「【エインフェリア】と普通のオーブの違いって何ですか?

【エインフェリア】が地位的に上なのは分かるけど…」



デミックスは、前々から疑問に感じていた事を口にした。

リエを通じて、エインフェリアの複数名と面識を持った事はある。

大剣を駆使して戦う著名な傭兵や高飛車な一国の王女、魔術学園出身の天才女魔術師、気弱な優しい弓兵、

人間の血を引く人魚族の少女に、西洋の甲冑で身を包んだ素顔が謎な冒険者、魅力的な歌を奏でる盲目の歌姫…

幅広い職種や階級、種族が勢揃いしていた。


とはいえ、上記の項目に該当する一般的なオーブも存在しているため、何か基準があるのだろうか。



「あぁ~…そこから。その様子だと、母さんから説明してもらった事なさそうですね」


「うん、エクレシアよりも関わる事があんまりないから…

今までは特に気にしてなかったし、リエりんに聞く機会もなかったんだ」



素直にそう答えると、リーシェが「分かりました」と首を縦に振る。



「【エインフェリア】とは一言で言えば、『英雄のオーブ』

通常、オーブはそのまま輪廻転生の輪に加わりますが、彼等は英雄選定を受けた事により、

【エインフェリア】という存在として生きる事になった人達なのです」



ヴァルハラに所属しているエインフェリアは元々、レナスが最高神となる前…

戦乙女ヴァルキリーとして、活躍していた時に選定したオーブ達だ。

当時、神界ではアース神族とヴァン神族との争いが活発化しており、後に最終戦争へ発展してしまった。


英雄選定を受けた彼等は、その最終戦争を生き抜いた者達だ。

【クロト=メグスラシル】という新たな世界が創造されてから現在においても、

彼等はレナスにずっと仕えている。



「それじゃあ、エインフェリアの人達は、レナスさんと付き合いが長いんだね」

「ええ、それゆえに団結力もあります。一部、性格面で難がある人もいますが…」



エインフェリアとして選ばれる人間は高潔である者が大半だ。

だが、中には残忍狡猾であったり、犯罪者紛いであったりと不徳を持つ者も選ばれる事がある。



「もしかしなくても、【クロト=メグスラシル】の中央区の公園近くで露店を構えて、

観光客目当てに怪しい商売しているあのおっさんの事?」


「ご名答。というか…バドさん、懲りずにまたアレな事しているのか」



レナスが選定したエインフェリアの中で、まさにその部類に該当する人物がいる。

「バドラック」という中年に差し掛かった男性であり、生前はかなりあくどい事をしていた。

ただ、彼の事を説明するにはかなり長文となるため、詳細は別の話で語る事にしよう。



「本来はエインフェリアの選定は戦乙女ヴァルキリーの特権であり、仕事の一部でした。

しかし、レナスさんが最高神となったため、その特権はエクレシアへ譲られる事となった」


「そうなると、エクレシアは現在の新しいヴァルキリーになるんだね」

「そんな感じです」



なかなかレアな情報だ。

リーシェとシオンとの会話に耳を傾けながら、デミックスはいつになくペンを動かしていった。



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