【時和旅館】にて…
「にゃっふにゃーん!!!」
氷漬けにされていたふーちゃんのスタンド…ワンダニャンが氷から抜け出して飛び出してきた場面だった。
「にゃぶろーっ!」
「くっ、この…離れろ!」
ワンダニャンが裏梅の顔に張り付いた。
お腹をスリスリさせながら、裏梅から離れようとしないワンダニャン。
宿儺は鬱陶しそうに眉を顰めて、ワンダニャンを排除するために指を横に振ろうとしたその時、
微弱な殺気を感じ取った。
その直後、小さな物体が弾丸のように飛んできて、宿儺の頬を直撃した。
ぐっ…と呻き声をあげつつも、宿儺は指を振る。
「―――【解】」
近くにあった氷の山が一瞬に粉砕されてしまう。
光に当たってキラキラと輝く氷の粉を背景に、小さな存在は別の氷の山へ華麗に降り立った。
「間抜けな姿になったものだ」
「くくっ…その間抜けに一撃を食らわされたのはどこのどいつだ?」
宿儺の嫌味に対し、金色のもふもふ…もとい、ピヨの姿に戻ったDIOが失笑して皮肉を返す。
ワンダニャンを引き剝がした裏梅は目を疑った。
あの男と言い、掴んでいる犬猫モドキと言い…己の術で完全に動きを封じたはずなのに、何故脱出できたのか?
視線を巡らせていき、ハッとした。
(あの大男の仕業か…!)
宿儺の視線がリュンへ集中している隙を見計らい、レクセウスが遠隔で地属性の魔法を発動させていた。
DIO達が封じられていた氷を地面下から少しずつ削っていき、崩したのだ。
さらに、彼はドリームイーター達が閉じ込められている氷に近づいて炎属性の術を用いて溶かしている最中だ。
裏梅は指先から氷のナイフを作り、レクセウスへ投げ飛ばしていくが、彼はそれに気付き、俊敏な動きで回避していく。
「そろそろ、他の者共も出てくるぞ」
「それがどうした? 鏖殺するだけだ」
(『おうさつ』ってどういう意味? わっ…こ、こぇえええー!)
DIOと宿儺の会話のやり取りで、聞き慣れない単語が出たのでスマホで意味を調べるや、サラサは仰天する。
やはり、宿儺はその筋の人間なのだと確信した瞬間だった。
このままでは全滅する可能性が出てきた…と思った矢先、宿儺に異変が生じた。
「……チッ」
「ほぅ、どうやらその姿でいるのは有限のようだな」
宿儺の身体が薄らと透明になりかかっている。
DIOがニヤリと笑みを浮かべて推理を披露するが、宿儺はそれをたわいもないと無視して、
リュンにこう言い放った。
「伊織、話はまた後日だ!」
「それは、当宿へ予約するという意味でよろしいでしょうか?」
リュンが訝し気に質問すると、宿儺はそれを否定した。
「通いだ。最低でも三日は通う」
「えぇー…」
宿泊したくないのは、お金を落としたくないからなのか…意外とケチだ。
微妙な表情を浮かべるリュンを気にする様子もなく、宿儺はさらに言葉を続けた。
「それと、三日目は餅を食べるから準備しておけ」
「…? すーさん、お餅が好きでしたか?」
「さてな、自分で考えろ」
そう告げると、宿儺は踵を返す。
「詳細は追ってご連絡いたします。それではまたお会いしましょう」
裏梅も会釈すると、彼の後を追いかけるようにその場から姿を消した。
「どうしましょう…」
「リュン殿」
「お餅はどんな味がいいのかしら? せめて、リクエストを言って頂かないと困るわ」
「いや…問題はそこではないだろう」
頬に手を添えて、困った表情でピントの外れた悩みを口にするリュン。
レクセウスは、冷や汗を流してさらりとツッコみを入れたのだった。
【観光スポットでの壮絶なバトルの後にて…(VIP客達の奮闘と、呪いの王の意味深気な要求)】
「…という経緯で、いつその極悪人…いやいや、宿儺さんが奇襲…いやいやいや来訪するか分からないので、
女将さんは、私達を守るために動き回っているんですよ」
後から聞いた話だと、宿儺はとんでもない危険人物だと判明した。
サラサの読みは、大体当たっていた。
裏社会の重鎮以上に、怖い呪いの王様だったのは予想の斜め上だったけれど…。
宿儺と長い付き合いがある事から、リュンは彼の性格をよく知っている。
そのため、現在宿泊している人達の身の安全を確保するために、結界の魔法を個々人に施している最中だ。
「エリザベスさんをこの部屋に呼んだのは、此処が一番安全圏内だから。
女将さんは最終的に此処に戻ってくるから、その際に魔法をかけてもらえば一石二鳥かなーと言う私の個人的な判断です」
「そういう事だったんですね。サラサさん…色々とご配慮くださり、ありがとうございます」
御礼を言うエリザベスに、サラサは「いえいえ」と謙遜する。
「折角、旅先で仲良くなった人が危険な目に合うのは見過ごせないですよ。
(こうして距離を縮めていって、ブルジョアなマダムと友達関係になる!
あわよくば、漫画の新キャラのモデルになってもらえるかも…)」
うししっと密かな企みを心の中でツイートするサラサ。
漫画のネタ収集は、いつでもどこでも欠かさない…漫画家の鏡(?)である。
「あの者が近日中に訪れる可能性はあるだろうか?」
「十分あり得る。早くて一週間以内には姿を現すはずだ」
「その根拠は?」
「あれだけ長時間の戦闘をしたにも関わらず、あの男に決定的なダメージを与えられなかった。
あちらが万全の状態を戻すのに、そんなに時間はかからないはずだ」
「なるほど…」
「厄介な事に、あの男は防御力と耐久性も高い。その上、回復能力もあるようだ。
私が与えたはずのいくつかの致命傷をも軽傷レベルにまで癒していた」
DIOの言葉に、レクセウスは目を大きく見開く。
まさか、宿儺は回復の術式も使用できるのか…!
「おそらく、あちらは全力を出していない。
決め手となるモノを隠しているとなると、こちら側が不利な状況なのは明白。
分析するにせよ、回避するにせよ、私達はあの男の事をほとんど知らない…これが現状だ」
「圧倒的な情報不足だ」と指摘するDIOに、レクセウスは同意せざる負えない。
本来の姿に戻ったDIOも慎重になるレベルで、宿儺の戦闘能力は卓越していた。
また、戦う事になれば、無事でいられる保障がない。
「仲間を召集すべきか…」
「準備するに越した事はないが、一番の問題はあの男の目的だ。
女将に何か仕掛けるのは確実だが、それにどう対処すべきかも考える必要がある」
確かに…宿儺はどんな目的でリュンを狙ったのか?
彼女への復讐か、はたまた別の思惑からか…
「すみません」
その時、エリザベスが徐に手を上げて会話に参加してきた。
「お話を聞いていて思ったのですが、その方が仰っていた事にヒントがあるのではないでしょうか?」
彼女の意見に、その場にいる面々は宿儺が去り際に残した台詞を思い出す。
「『最低でも三日は通う』と言っていたか…」
「『餅を食したい』とリクエストしていたな」
「ふーたん、おもち、たべてええん?(ふーちゃんもおもちを食べていい?)」
「ふーにはまだ早いな」
「お前はたまごボーロで我慢しろ」
「あーい!」
話が脱線しかかっていたところ、スマホで情報収集していたサラサが「うあっ!?」と驚き混じりの声をあげた。一体に何事か…と全員が彼女の方へ視線を向ける。
「あ、あの~…まだ情報が揃ってないから確定とは言えないんだけど、キーワードを調べたら
…こんな情報が出てきました」
顔を引き攣らせて笑うサラサが、スマホを差し出す。
そこに記載されていた情報とは…?
※次頁は【補足説明】となります ⇒
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