【時和旅館】にて…


「…と言う感じで、すごかったんですよ」

「それは…大変でしたね」


サラサは、エリザベスが宿泊している部屋にお邪魔していた。

数時間前にあった出来事を彼女に語っている最中だ。


「それで、宿儺様と言う方はどうなられたのですか? 負けてしまわれたのですか?」

「いや、それがねぇ…」




*** ***** ***




「存分に効いたぞ」


キングダニャンの飛び跳ね攻撃を諸に受けただろうと思われた宿儺は…なんと生きていた。

かなりダメージは食らっているはずなのに、自信に満ちた笑みを崩していない。

隠れて見ていたサラサは「な、なんですと…!」と驚愕していた。

あんな巨体ぬいぐるみの大攻撃にも耐える事ができるなんて、どれだけ頑丈なんだ!


次の瞬間、宿儺は右足でキングダニャンの腹部を蹴り上げた。

「ぐにゃぶっ!!」とキングダニャンは台風に遭遇したかの如く、吹き飛んで倒れこんでしまう。

大きな生物を意図も容易くKOしてしまうなんて…どれだけ身体能力が優れているんだ、あの男性は…!?



「わぁああん! きんぎゅだにゃーん!」

「ふーちゃん、今は危険だから行ったらダメ」



倒れてしまい、きゅーきゅーと鳴き声をあげるキングダニャンがあまりにも可哀想で、

ふーちゃんは泣き出してしまう。

「後で、あの子のお腹を診てあげるからね」とリュンは、ふーちゃんをよしよしとあやす。



(うーん…見た感じ、大丈夫そうに見えるけどなぁー)



派手に蹴り飛ばされたにも関わらず、キングダニャンは足をジタバタさせてどうにか起きようとしている。

「おにょれー! 次はお腹で一気に押しつぶしてやるニャー!!」と副音声が聞こえてきたのは

…気の所為だと思いたい。


そんなデカ可愛いぬいぐるみがあがいている場面をバックに、宿儺は口角を吊り上げる。

彼の視線は、リュンと泣き止んで彼女に甘えるふーちゃんの姿を捉えている。



「やはり、あの猫童…伸びしろがある」

「当然だろう」



宿儺の背後に瞬時に回ったDIOが手刀を仕掛けるが、宿儺はそれを払い落とす。



「だが、あやつは先約済だ。私の側近になる予定だからな」

「フン、【予定】ならば大いに変更可能だろう」



そんな会話のやり取りをしながら、両者は目にも止まらぬ肉弾戦を繰り広げていく。

見ているこちら側も、ハラハラとドキドキが止まらない。

…ちょっとだけ、スマホで戦闘場面を撮影しても許されるだろうか。

サラサがそろぉ~と動こうとしたその刹那、事態がまたしても大きく動く事になる。


DIOが宿儺の腹部に拳で強力な一撃を与え、宿儺が片膝をついてしまう。

チャンスを逃がすまいと、DIOはとどめを刺そうとするが…


「ケヒッ」

「ぐあっ!」


宿儺が近づいてきたDIOに目掛けて、地につけていた手で掴んだ土を投げつけた。

土による目潰し手法…なんと古典的かつ卑怯な手段!

正統な決闘を重んじる騎士であれば、憤慨するに違いない。

ただ、あそこにいるのは、明らかに外道なスメルがプンプンしている野郎二人なので問題ない…のかもしれない。



「なかなかいい運動になった、感謝するぞ」



宿儺はそう告げると、DIOの顔面をがっと掴んだ。



「にゃぐー!」

「なっ…」



そんな魔の手を追い払おうと、ふーちゃんのスタンドのワンダニャンが宿儺の腕に噛みつく。

DIOの顔面を掴んでいた手を開放すると、腕に噛みついているワンダニャンを地面へ叩きつけようとしたが…


「ぐっ…」


次の瞬間、背後から攻撃を受けてしまい、動きを止めてしまう。


(またか…不快な奴め)


レクセウスが拳から衝撃波を放ち、遠隔攻撃をしたのだ。

先程から、己の至高の機を邪魔ばかりしている巨体の男。

傍らにいるリュンが、彼の事を気にかけているのが猶更気に食わない。

あの男を先に始末するか…と宿儺は指先で術を発動させようとした。



「チェックメイトだ」



…一瞬のよそ見は命とりだぞ。

視線を戻すや、宿儺の全身に激しい打撃が絶えず襲い掛かってくる。

視界に映し出されるのは、DIOと…彼の隣に出現し、攻撃の嵐を巻き起こしている【存在】

その【存在】こそ、DIOの最大の決め手なのだと察した。



「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄―――っ!!!!!!!」



傍から見れば、勝利する側が決定した瞬間だった。

サラサもスマホを片手に動画を撮りながら、DIOの勝利を疑っていなかった。




*** ***** ***




「それは…思いもよらない事が起きたんですね」

「その通り! あれは本当にトンデモ展開だったんですよ」

「ところで…」


エリザベスの目がちらちらと別の方へ向けられる。


「私…現場にいた訳ではないのに、女将さんの部屋にお邪魔してよかったんでしょうか?」



エリザベスとサラサは現在、リュンの自室にいる。

「別部屋へ移動しませんか」というサラサの提案でこちらへ移ったのだ。

同じく、部屋内にはふーちゃんやピヨに戻ったDIO、レクセウスと…事件の当事者が勢揃いしていた。



「その理由が…話の続きに繋がるんですよ」




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