【時和旅館】にて…
(部屋でダラダラしてたらよかった…)
辿り着いた先で、とんでもないアクシデントに遭遇するなんて…誰が想像できるか!
サラサは東屋の陰に隠れるように、向かい側にある花畑で繰り広げられている戦闘風景をちらちらと観察する。
遡る事…30分前、旅館を出たサラサは外の風景を見ながら「ふはぁー」と感嘆の声をあげた。
旅館の中からも景色を見る事ができるが、歩きながら直に眺めるのはまた格別だ。
(一日ごとに風景が変わるところがいいんだよね…)
スマホでパシャパシャと風景の写真を撮りながら、サラサは歩を進めていく。
(ちょっと疲れたな…おっ、いいところに東屋発見!)
目と鼻の先に東屋があるのを見つけた。
そこで休憩しようと近づいたら、二人の人物の会話が聞こえてきた。
(あれ? 女将さんだ。それと…誰?)
そっと東屋の陰に隠れて、様子を窺う事にした。
聞こえてくる話の内容が…どうもやばい匂いがプンプンしている。
要約すると、黒髪の男性の方は女将であるリュンを狙っているようだ。
「呪ってやる」とか「贄」とかところどころ、物騒な単語が飛び交っている。
その発言の主である複眼の男性…宿儺は、いかにも裏社会の上位に君臨しているオーラを放出しまくっていて…端的に言うと怖い。
一方のリュンは怯える様子はなく、普通に男性の問いかけに受け答えしている。
…すげー、肝が据わっていやがる。
この場に、同郷の古馴染みであるウボォーギンがいたらそう言うに違いない。
(んんん? あの男の人…)
話の流れを聞いていると、男性…宿儺の発言に何やら含みがあると気付いたサラサ。
リュンを見つめる視線もどこか熱が籠っている。
(もしや、もしや、もしや…そういう事?)
二重の意味で目が離せなかったが、宿儺が何か言いかけた際に、乱入者の登場により事態は一変する。
猫のベビー服の幼女やら、変わった服装の妖艶な美貌の男性やら、巨体の宿泊客やらが途中参加してきた。
結果、現在進行形でハードなバトルを展開中だ。
(やばすぎでしょ…)
あまりの凄さに圧倒されるとはこういう事だろう。
キン、キン、キンと刀の鍔迫り合いのような音が響くたびに、遠くの木々が倒れたり、地面に裂け目が生じる。
あの現象は、おそらく宿儺の攻撃によるものだろう。
あんな強力な斬撃を食らったら、こっちは一瞬でミンチにされてしまう…確実に!
そんな斬撃を紙一重に回避しながら、多数のナイフで攻撃を仕掛ける金髪の妖艶男性もかなりの強者だ。
リアルバトル漫画の世界を間近で見ている事に興奮と高揚感がMAXになりつつある。
(くぅ~…近づいて動画を撮りたいのにぃー…!)
あのバトルを映像に残して、今後の作品に是非とも活用したい。
漫画家として、絶好の参考資料をゲットしておきたい!
そんな気持ちが高まる一方で、近付いたら速攻で黄泉の門へ一直線になるのが明白なので身動きが取れずにいる。歯痒い思いから、サラサは地団太を踏んでしまう。
その時、猫のベビー服の幼女…ふーちゃんが喋り出した。
「ふぅー、いきゅよー(いくよー)!」
青空色の透き通った妖精に似た光翼を羽ばたかせ、リュンの目線と同じ高さで浮くと…
ふーちゃんは、小さな両の手をあげて声を上げた。
すると、空からキラーンと光が多数出現し、徐々にこちらへ何かが接近してきた。
「なんだ…?」
「WRY…ステラめ、このタイミングか」
宿儺は訝し気に目を細める一方、ふーちゃんが何か術を発動させた事を察したのか、DIOは眉を顰める。
ここで解説しておこう。
ふーちゃん…ソラ・アウリオンはヴァルハラ所属のエクレシアである。
一度独立して、現在は名誉顧問となっているリエを除いたヴァルハラ所属9名の中では最年少であり、まだ正式に異世界観察ができる年齢ではない。
水子であるソラは人間とは異なり、成長スピードが遅い。
事例を挙げると、ある世界の時間軸では五世紀に近い年月で、ソラは【一年】の年齢を重ねる事となる。
そんな事情から、ソラはエクレシアとして活動できるまで、安全な世界(クロト=メグスラシル)で他の子ども達と同じ生活をする流れとなった。
彼女は主神レナスの御膝元で、同年代の友達と共に健やかにゆっくりとすくすくと過ごしていた。
しかし、レナスや育ての親であるエクレシア達にとって予測外の出来事が生じた。
ソラはお散歩が好きな子どもだった。
ここでいう『お散歩』とは、世界の壁を超える【大移動】と言う意味である。
本人が無意識の内に術を発動させて世界を移動してしまうため、気付けば大冒険をしていたという事もしばしば。DIOとの出会いもそんな一例だったのだ。
そんな経験を積み重ねていき、ソラは徐々にレベルアップしていった。
現在のソラは、スタンド能力を筆頭にいくつかの魔法も使用できる。
まだ一歳の幼女だけど…中身を侮ることなかれ。
「みんにゃー、あちゅまりぇー(みんなー、集まれー)!!」
ソラ…ふーちゃんは、大人でもなかなか習得が困難とされている独自の【秘奥義】を使用できるのだ!
そして、彼女の掛け声に導かれる形で、遥か彼方の空から凄いスピードで降りてきたものは…
「なにあれ、ぬいぐるみ…!?」
「あれは…ふーちゃんのスタンド?」
「いや、違う。あれは…」
本来は夢の世界でしか生息していないはずの…たくさんのドリームイーター達であった。
「もやもや、めっしゅる!(悪い事する人をお仕置きするぞ!)」
―――秘奥義【ファンシーフェスティバル】
・
