【片翼の天使】シリーズ
「と、とりあえず…捕まって良かったですね」
加奈が場の空気を変えようと、笑って取り繕う。
…少し後味が悪い気分が残る。
エクレシアは、ああいう感じで罪人を裁いていくのかと思うと精神に負担がかかる割合が半端なさそうだ。
「それに、今日の三時からこの中庭で保護院の子ども達のお遊戯会が行われる予定だったんです」
「えっ…?」
「もし、あの男の人が見つかるのが遅かったら…ふーちゃんや子ども達が危険な目にあってたからも…。よかったぁー」
ホッとする加奈。
彼女の説明を聞いたイザヤはざわざわと胸が落ち着かない。
(…加奈の言う通り、あの犯罪者が捕まった事は幸いだった)
けれども、まだ捕まっていない者が残っている。
一匹と一人はすんなりと捕まえられたが…何故だろう?
凄くイヤな予感がしてならない。
(この感覚…ああ、あの時もそうだった…思い出したくないのに…)
「イザヤさん?」
額を抑えて、小さく首を左右に振るイザヤを心配そうに覗き込む加奈。
ブゥウウウウン、ブゥウウウウン!
加奈の携帯が激しく鳴り響いたのがその時だった。
…警報のような着信音が、二人に不安を煽らせた。
「最新のアプリヘンデのデータが届いたようです。てっ…」
画面を開いた加奈は言葉を失った。
どうした? とイザヤが言いかける前に、加奈の携帯が再び鳴りだす。
「はい……ダンさん?」
『加奈、単刀直入に言う。今から第6以降の病棟を閉鎖する』
「…それって…もしかしなくても…!」
『ああ、侵入しているぞ…“あいつ”が』
スピーカーがオン状態になっていて、彼等の会話がイザヤにも聴こえていた。
此処を含める病棟を閉鎖する?
その内容から、只事ではないのは第三者のイザヤにも十分伝わってくる。
「イザヤさん…早く第5病棟へ行ってください!」
彼女の態度から…理由を話す余裕がなさそうだ。
分かった、と小さく頷こうとしたら…
ピンポンパンポーン…
《あー、あー…!…マイクテス、マイクテスッ! 本日はこーよーびより、こーよーびより…》
突如、病棟からのアナウンスが流れだした。
《聞こえてますか~? 聞こえてるよねー!》
こちらの状況とは裏腹に能天気な声が中庭まで流れてくる。
それゆえに、イザヤはその声に不快感を抱いた。
例えるなら…火事の現場でどよめく人の中で遠慮なく笑う非常識さだ。
「…ど、どどどどど…どうしよう…!?」
そのアナウンスを聞いた加奈が大量の汗を流し、動揺している。
彼女の反応から、アナウンスの声の主が何者なのか想像できた。
…そう、最後の【アプリヘンデ】だと。
「…おい、加奈。さっき連絡が届いたんだろう? 最後の指名手配犯がどんな奴なのか…教えてくれ」
「…その人物は優秀な才能の持ち主でした。でも、万人には理解しがたい思考で…『絶望』をこよなく愛していました」
「……『絶望』…だと…!?」
「その人物はやがて、己の意思に共感した一部の人間を唆したり、取り込んでいき…世界を破滅へ追い込みました。
…その仮の姿は白と黒のクマのぬいぐるみ。
名前は…『モノクマ』です!」
【アプリヘンデ】
《うぷぷぷッ、ドッキドキのワックワクの時間の始まりだよ~vv》
【つづく】
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