【9】Black×white×rain


「止めれなかった。」

「救えれなかった。」

「護れなかった。」

「…-オレは、無力だ。」



「…そんなことは、ありません。」

「………」


青年は、静かに俯いていた頭を動かし、リエを見る。


「何があったのか、存じませんが… 私にはそうは思えません。」

「何故、そう言い切れる…」


「貴方の瞳…」


リエはそっと、青年の右頬に触れる。


「とても、優しい瞳をしている…」

「……………」


「…貴方の名前は…?」

「……イザヤ………」


「イザヤ…“十六夜 イザヤ” とても、良い名前です… 貴方のお母様は、良い名前を貴方に送りましたね…」

「オレに、母はいない。 母とは、思いたくない。」


「“母はいない” “母とは、思いたくない”… 貴方は哀しくて、寂しくて、辛い想いをしたのですね… ですが、イザヤさん。 これだけは、覚えていてください。」

「…何をだ…?」



「“名前”とは、親が子供にくれる最初の“愛情”なんですよ。」

「…最初の…“愛情”…」


リエは目を閉じ、頭を下を向き、囁く。


「ええ… 私は、それに気づきました。 素敵ですね、名前があるだけで愛されてない子はいないんですね。 だから…」


リエは目を開け、頭を上に上げる。


「分かってあげてほしい。 信じてあげてほしい。 貴方のお母様はちゃんと“名前”をくれたのですから。」

「……アンタ……」


「私、こう見えて二人の娘がいるのです。 だから、こう言われると正直、哀しいですわ。」

「っ!?」


イザヤは顔には出さないが目を見開き驚いていた。


「…先程、貴方は『自分は無力だ。』とおっしゃっていましたね…」

「っ! ああ…」


「人は、互いを支い、支え合いながら生きています。 それは何故か、分かりますか?」

「……?」


「《“人”との“道筋”は途切れることなく“繋がって”いくから》。」



ある方の受け売りなんですけどね。と笑顔を見せるリエにイザヤは黙って聞いていた。



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