【30】SF(少し不思議)な世界へようこそ



「……………」


高杉は報告書を片手に持ちながら、周辺を見渡し、山の中の森を歩く。

夕日はすっかりと沈み、辺りは真っ暗で視界が悪い。

それでも高杉は闇の中の道を歩いた。



---その先にある微かな光を探すように…




「…………」


サキの暖かな優しい笑顔が。

サキの柔らかな優しい声が。

脳裏を過っては離れない。

身体全身が。

心が、魂が。

サキを求めて止まない。


「---サキ…」


愛しきヒトを呼ぶ声は…

発した声は震えていた。




晋助…




「---!」


声が聞こえた。

愛しくて、恋しくて止まない大切なヒトの声が。

高杉は声が聞こえた方へ目を向ければ、其処には愛するヒトの姿が。


「ッ…!」


高杉はサキの名を呼び、駆け寄ろうとした。

しかし…




---違う。



高杉は踏み止(とど)まった。


「…………」


違う。

彼処にいるのはサキじゃない。

自分に向けられる優しい笑顔。

自分に掛けられる柔らかな声。

微風により、鼻を擽る彼女の薫り。

身体が、全身が。

彼処にいるのはサキだと告げる。

だけど…



---違う。と…

彼処にいるのはサキじゃないと。

心が、魂がそれを否定する。



「………(ハァ~…)」


高杉は息を吐いた。

息を吐く事で、自分を落ち着かせた。


「…………」


高杉は鋭い眼差しでサキを見据える。

周りからよく言われる、獣のような眼でサキを見る。


「---随分と…
味な真似をしてくれるじゃあ、ねぇか。」


---霧が出始めた。


ユラユラと…

霧が両足膝の辺りを舞う。




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