【26】日常というぬるま湯の中で


side ヤムライハ


言うなれば、不審人物。
黒い髪と瞳に綺麗な顔立ち。
出身国も。
確かな身分証明も出来ない女性。
なのに、酷く彼女のことを気に入っている王に眉間にしわが寄った。
いつもは王をたしなめる、ジャーファルさんも彼女には甘い。


『私、貴女のことが嫌いよ』


告げれば、驚いた表情をした後、ともは納得したように頷いた。


『あ。やっぱりですか?』


どう考えても私って、怪しいですよね?

逆に問い返してくる彼女に、勢いをそがれた。
全ては話せませんけど。と言う前置きで始まったともの話。

煌帝国出身である事。
けれど、両親が死んでから十年以上国に帰っていないこと。
世界中を転々として、生物の調査をしていること。

話を聞いてさらに警戒を強めた私に、ともはさらに言葉を続ける。


『今、私のことをスパイか何かだと思いましたね?
 でも、政だとか。人間模様だとか、そんなこと爪の先ほども興味がありません。
 私が興味があるのはその土地の動植物たちなのですから!』


キラキラとした表情で告げられた言葉に、ウソは見つからなかった。
それどころか、対象は違えど、私と同じ“研究者”の香りがする。

中庭で集中し、一輪の花を模写するともの姿を見つめる。


「友達に、なれるかしら?」



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