【26】日常というぬるま湯の中で



side ジャーファル


また、酷く集中している。

中庭にいるともの姿を見て思わず息を吐き出す。
動植物を観察する際、彼女は驚くほどの集中力を発揮する。
それは、どんなにシンが話しかけても反応一つ返さないほどに。

初めてともに出会った時のことを思い出して、頭を抱えたくなる。
あれは外交が終わり、シンと共に帰るための船を待つために港町に一泊した時のことだった。

私の目を盗んで姿を消したシンを探し回っていた時のこと。
宿の主人の目撃情報を頼りに、一室へ踏み込み、目に飛び込んできた光景は今でも忘れられない。
勝手に部屋のベッドで眠っているばかりか、その腕に女性を抱き込んでいたのだから。


『貴方が悪いわけではないので頭を上げてください』


シンをたたき起こし、必死に謝る私に対してともがかけてくれた言葉。
胸の辺りが軽く締められたかの様な感覚を覚えた。
きっと、すぐに立ち去りたかったのだろう、ともを引き留めシンは会話をはじめた。
彼にしては珍しく、裏もなく純粋に彼女に興味がある様子に驚きを隠せなかったが、その一方で良く

やったと内心でシンのことを褒めている自分に首をかしげた。

一度はそこで別れたものの、ともとの再会はあまりにも唐突だった。

政務から逃げ出したシンを探し待っていた私は、「王が女を連れて帰ってきた」というマスルールか

らの報告。
何があったのかと、慌てて帰ってみれば、食客として迎えられたともの姿だった。


『お久しぶりです、ジャーファルさん。
 ・・・しばらくの間、お世話になります』


苦笑と共に差し出された手の感触に酷く動揺した。
彼女の人当たりの良さから、あっという間に宮殿に、シンドリアに馴染んでいった。

真っ直ぐと花に注がれるともの視線。
あからさまに見ている私の視線に気づかないほどの集中力。


「・・・羨ましい」


こぼれ落ちた言葉に首をかしげた。
一体、何が羨ましいというのだろう?



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