【25】陛下、ホワイトデーのギフトを相談する
マキバ・セツヤは、とある事情で数多の世界を渡る術を得た。
そのお陰で異世界の、種族や社会的立場に問わず、個性豊かな友人が沢山出来た。
現在眼前にいる男もその1人だが…。
【陛下、ホワイトデーのギフトを相談する】
「アポイントメント無しで来たのはすまないと思っている。少し、相談したい事があるのだが…」
そう言って、とある異世界のとある国の王たる男 ガイアスは、セツヤの元へやって来た。
幸いにも、今日は休日。
今は保護者代理は家に居らず、居候もアルバイトに行っていた。
セツヤは微笑んで「構いませんよ」とガイアスを招き入れた。
「今日はどうなさったんですか?」
紅茶と、先ほど出来たばかりのクッキーをテーブルに置き、ガイアスに訊ねる。
「カナンへのホワイトデーのプレゼントを考えているのだが…、何か良いアイディアはあるか?」
「ホワイトデー…ですか…」
ガイアスの相談内容に、セツヤは考えた。
ホワイトデー。
バレンタインデーのお返しをする、某島国とその周辺国独特の文化である。
セツヤとしても、友人としてカナンに喜んで欲しいし、ガイアスにも満足する結果を残したい。
考える仕草をし、ガイアスに訊ねる。
「ガイアスさんはどんな物が良いと考えましたか?」
「ああ」
ガイアスは首を縦に振った。
「…高級品を送ろうと考えた。だが、カナンは装飾品など欲しがるような性格ではないだろう?」
「…確かにそうですね。『装飾品なんかを貰うなら、一緒に何か食べたい』と言い出しそうですね」
「なら、高級料理店…。いや、しっくりこないな…」
ガイアスは眉を顰めて考えこんだ。
セツヤは溜息をつき、神妙な顔つきで言った。
「…こうなったら、最終手段です…!」
すると、お菓子のレシピの山をテーブルにドンッ!と置いた。
ガイアスは突然の行動にやや驚いた。
「手作りお菓子でカナンさんのハートをゲットです!」
テーブルを叩き、ズビシッ!とガイアスに指差して言った。
セツヤの様子に、ガイアスはやや狼狽えた。
「………な、なるほど、手作りか。だが、俺は料理経験は皆無だぞ」
それもその筈。
ガイアス陛下は、一族での立場、何より現在は一国の王。
料理経験などあるわけない。
「大丈夫です。私が教えます。…今回は料理ではなく、お菓子ですけど」
「思ったのだが…何故、菓子だ」
「女性は甘い物が大好き。これは万国共通森羅万象の摂理なんですよ」
いや、セツヤさん。嫌いな人もいますよ。
「ゴキは黙ってください」
「何に言っているんだ?」
「今この世界を統べているダメ人間です」
(…これ以上の追求はよそう)
「だが、何故手作りで?」
「女性は手作りの贈り物が1番喜ぶんですよ」
「胸中の殿方からのものなら尚更です」とフフフと笑って付け加えた。
それを聞いたガイアスは、真剣な表情で頷いた。
「よし、手作り菓子の案に乗ろう。指南のほどを頼む」
「お任せください!」
セツヤは胸を叩いて、ウインクして自信あり気に言った。
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ア・ジュール王が何を作ったかは想像に任せるが、初めてにしては結構上手く出来た事だけは言える。
その結果はというと…後日、ガイアスに訊ねた時、僅かに微笑みを浮かべていた事で、想像は容易いであろう。
-完-
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