【24】料理対決


「ふむ、これもまた上手く作れていますね」

「うん、おいしそう!」

そう言って二人はシーフードシチューならぬクラブシチューを食べる。

あぁぁぁ…、後で絶対お腹壊すなぁ……。
クラブの匂いの悪さは香辛料をぶっかけて誤魔化したし。
スープの味は濃めにしてクラブの味の悪さも誤魔化したし。

…私は味見してないから、誤魔化せてるかどうかも分からないけれど…。


罪悪感でおいしそうに食べる二人から目を逸らすと、意味ありげにこっちを見てくるアルヴィンと目が合った。

これは……。

「余計なこと言わないでね?」

多分、アルヴィンは気付いてる。
さっき私が呟いたことをバッチリ聞いてたのかもしれない。

「言わねぇよ。…けど、俺あれ食べなくてもいい?」

あー…、やっぱり気付いてた。

「あはは…。うん…、じゃあアルヴィンは私が作ったの食べてればいいよ」

さすがにクラブだって分かってるのに食べろとは言わない。
代わりに片手に持ってたトレイをアルヴィンの前に置いた。

「粗末なものだけれど……」

トレイに乗ってるのは豆腐の味噌汁と普通の白米、それと有り合わせの炒め物に海藻サラダ。
みんなの手伝いをしてたら時間がなくなっちゃって、本当に簡単なものしか作れなかった。

「おっ、うまそうだな」

それでもアルヴィンはそう言って笑ってくれて、目を見ればそれがお世辞じゃなくて本心だっていうのが分かった私は顔をほころばせた。


「いただきます」

なんて行儀よく手まで合わせるアルヴィンの前に椅子を引きずって来て腰掛ける。
昔はよくこうやってジュードが食べるの見てたっけ…。

その度に「おいしい」って必ず言ってくれるんだよね。

「ん…、うまい」

…ちょうど今のアルヴィンみたいに。

「ふふ、ありがとう」

そう言いながら本当においしそうに食べてくれるのを見て微笑むと、アルヴィンの目が優しく細められた。
いつまでたっても私にだけ向けられるその視線には慣れなくて、少しだけ照れる。

スッとさりげなく目を逸らす私に、アルヴィンは笑った。

「…ジュードが言ってたことの意味が分かったぜ」

「?」

「このメンバーの中でお前にしか出せない隠し味があるって」

「え?」

隠し味……?
そんなもの入れてないけれど…。

普通に作っただけなのに。

そう思ってるのが分かったのか、アルヴィンが私の頭を撫でて言った。

「愛情」

「は?」

「セレナの料理って愛がこもってる味がする」

「…なにそれ、どんな味なの?」

そんなの隠し味でもなんでもない気がするんだけれどなぁ…。

今一つ腑に落ちないでいると、アルヴィンがジュードとローエンを呼んだ。

……ら、ジュードがアルヴィンに向かって勢いよく机に乗ってた本を投げ付けた。

「うぉっ!?」

ギリギリの所で避けるアルヴィン。
私は手を伸ばして本が壁を破壊する前に受け止めた。

「ジュード、物を投げる時は人に当たらないようにしなさいって言ったでしょう?」

「ごめんね、姉さん。ちょっと手元が狂っちゃって」

「いやいやいや、今の明らかに俺を狙ってただろ!」

抗議するアルヴィンはスルーして、ジュードも私が作った料理に口を付ける。

…どうやら、自分より先にアルヴィンが私の料理を食べたのが気に入らないみたいね。
ふふ、かわいいヤキモチじゃない。


そう思って口元を緩めなていると、口をもきゅもきゅさせるジュードに続いてローエンも一口食べた。

「おや、これは…」

「ね?おいしいでしょ」

「ええ。なるほど、母親の愛情ならぬ姉の愛情が詰まっていますね」

愛情ねぇ……。
特に意識してないのに。

「ローエンまでそう言うの?さっきアルヴィンにも同じこと言われたの」

「姉さんの料理って昔から愛情こもってるよ」

「え、そうなの?」

全然自覚なかったなぁ…。


そう思って首をひねっていると、ローエンが聞いてきた。

「セレナさんは料理を作る時、何を考えながら作っていますか?」

考えること……。

「そうね…。みんなの疲れが少しでも休まるようにーとか、みんなが喜んでくれたらいいなぁとか、かな」

そう言うとローエンは笑った。

「ほっほっほ、その思いこそ愛情でしょう。そんな考え方を普段から持てる人でないとこの味は出せませんよ」

だからジュードさんはセレナさんにしか出せない味だとおっしゃったんですね、と続ける。

そういうことね…。
なんとなく、みんなが隠し味だと言った意味が分かった気がした。


「――それで、結局誰のが一番おいしかったの?」

三人が料理の味を吟味してると、さっきからそわそわしてたレイアが待ちきれなくなったみたいに口にした。

ふふ…、レイアが気になってるのはジュードの結果だけじゃないかな。
いいよね、青春って。

「俺はセレナの料理が一番うまかったぜ。毎日食べたいぐらいだな」

「ふふ、ありがとう」

アルヴィンににっこりと微笑むと頭を優しく撫でられる。
後ろでミラが「アルヴィンがセレナと結婚したら毎日でも食べられるだろう」なんて、とんでもないことを言ってるのが聞こえたけれど聞こえないフリをした。

「私もセレナさんの料理に一票ですね。他の女性陣の料理もおいしかったのですが、やはり気持ちのこもっているセレナさんの料理が一番でした」

「あら、ローエンはもっと若い子の料理が好みかと思ってたのだけれど」

少しからかうようにそう言うと、ローエンも茶目っ気たっぷりに片目をつむってみせた。

「若すぎてもいけないのですよ。じじいにしてみればセレナさんぐらいが理想ですね」

「それはどうもありがとう。ローエンも私の理想の紳士像だよ」

そう軽く返して笑う。

そしたらエリーゼが「…セレナは私の理想の大人です!」って言うのが聞こえて、つい抱き付いちゃった。

えへへ…なんて照れたみたいに笑いながらぎゅうっと力を込めて来るのもかわいい。

あぁ、娘ができるならこんな子がいいなぁ…。


「で?おたくはどうなんだ?」

…すりすりしてたらアルヴィンがそう言うのが聞こえて振り返る。

アルヴィンに聞かれたジュードは「決まってるよ」なんて言って笑った。

「姉さんの料理が僕の一番好きな食べ物だって言ったでしょ?」


……つまり。

「満場一致でセレナの勝ち、だな」


その言葉に私は少しだけ困った。

私の料理が選ばれたのは嬉しいけれど…、みんな頑張って作ってたのに。


――けれど、そんな私とは裏腹にみんなはそんなに気にしてないらしい。

「やはりセレナの勝ちか」

「すごいです…!」

「やっぱりセレナには適わないかぁ~」

口々にそう言う三人は笑顔で。
少しだけ不思議だった。

「…何だか、みんなあまり驚いてないのね」

「あぁ。私たちもセレナが勝つことは予想していたからな」

「そうだったの?」

初耳だよ。
いつの間にそんな話してたの。

「セレナって料理すごい上手だもん!対決したいっていうのもあったけど、実はセレナと料理したいだけだったんだ~」

へへ、と笑ってそう打ち明けるレイア。

全然気付かなかったけれど……、

「ありがとう、レイア」

そう言われて嬉しくないわけがない。


「じゃあ、次は一緒にご飯作りましょうか」

「!うん!!」


今までは作った料理を喜んでもらえるだけだったけれど…。

「一緒に作ることをそんなに喜んでもらえるなら、これ以上嬉しいことはないね」

そう微笑んで、私より少し低い所にあるレイアの頭を撫でた。



―――――――――――――――

終わり方微妙(^q^)
でも付き合う前とは違って、アルヴィン→→←(←)主人公ぐらいの甘さにはなってたらいいなぁ。
ちなみにジュード君のシスコンは健在です(笑)←

とも様ごめんなさい、返品可能ですっ!!
こんな作品で申し訳ないですが、相互ありがとうございました!



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