prologue 2 ― 噂の会社


―――陰影の港《ドヴォール》


エレンピオス随一の町【トリグラフ】から南東に位置する街だ。

昔は港町として盛んだったようだが、現在は海岸線が後退し、雑多な雰囲気を醸し出した

…どこか排他的要素をはらんでいる。


また、怪しげな自治組織が裏で牛耳っており、治安があまりいい印象を受けないのが、

初めてきた人の感想だ。


そんな町の片隅にあるバー【プリボーイ】で、まだ陽が昇っている時間帯にも関わらず、

大人達がカードゲームを興じていた。

ここ、エレンピオスに住む人達は、日常的に行うほど賭け事が好きな気質だ。

それ故に、一夜にして破産してしまう事態に陥る人も少なくないため、

エレンピオス人のある意味短所ともいえる。



「フラッシュ」

「ストレート」

「ちっ…ワンペアかよ」



そんな事すら気にならない程、賭け事が日常の一部と化しているようだが…。

四人の内、三人の男性がカードをテーブルに放っていく。


最後の一人…短く刈られた金色の髪に、きれいに整えている顎髭、色素の薄い水色の瞳の男性。

同じくゲームをしている他の男性達とは異なり、どこか貫禄があり、少し着崩しているものの、

上等なスーツをきこなす…落ち着いた紳士に見える。

男性はふむ…と顎の髭を擦りながら、考える仕草をする。



「…もったいぶらずにさっさと見せろよ」

「くくっ…その様子だと外れを引いちまったか?」


「すまないが…確認のためにもう一度聞いてもいいかな?」



男達がからかってくるが、男性は気にする感じもなく彼らに話しかけてきた。

ああ、なんだぁ? と訝しげに見つめる男性陣に、その男性は言葉を続ける。



「この勝負に勝てば、君達が儲けた資金全額をもらえる約束…だったね?」

「ああ、そうだ」


「勝敗の結果を一方的にナシにしないよう、バーのマスターが証人。

どちらも不利益をこうむらないルールだ」


「今更、なんだー? まさか全額渡したくねえっていうんじゃないだろうな!」



睨み付ける少し強面の中年に、金髪の男性はふっ…と口元に弧を描く。



「安心したまえ。俺はルールを無碍にする程、金に執着するタイプじゃないんでね」

「じゃあ、とっととカードを見せろよ!」



ニヤニヤと悪意混じりの笑みを浮かべる男性達を前に、紳士はふぅ…と息をつくと

自らのカードを表にした。それを見るや…三人の男性達の顔から笑みが消え、

今度は驚愕の色を浮かべる。



「「「ろ…ロイヤルストレートフラッシュ…」」」


「悪いね、全額いただいていくよ」



顔面が蒼白になる彼らに対し、その男性は優雅な笑みを浮かべて言った。


札束の入ったアタッシュケースをバーのマスターがカウンターに置く。

中身が本物であるか確認すると、男性は開いていたケースを閉じて片手に持つと、バーを出ようとする。



「あんた…プロの賭博師かい?」



別の席に座っていた常連の男性が何気に聞いてきた。

金髪の男性は立ち止まると、その常連に対してこう言った。



「いいや、探偵さ」



去り際に、片目を閉じて得意げな顔でいう決め台詞も、様になっていた。



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