第2章:長期任務の幕開け
夕食後、シズクは一番に入浴した。
今日の任務は、久々にハードなものだった。
このところ、デスクワークが多かった事もあり、身体を動かした事で流れた汗と疲れをとるために、
いつも以上に長めに湯船に浸かった。
(…明日から早朝運動しよう)
本業をしていた時よりも身体が鈍っている。
筋肉痛など目立った反動はないものの、以前はもう少し動きにキレがあったはず。
これだと、いつ戦闘で支障がでるか分からない。
(まずはランニングかな。それからデメちゃんで素振りして…)
大まかなトレーニングメニューを考えながら、シズクは大きく伸びをした。
お風呂から出て、Tシャツとハーフパンツのラフな格好で自室へ向かおうとしていると、
窓からある人物が目に入った。
(シンさん…?)
時刻は午後11時半。
こんな夜中に散歩に行くなんて…些か不自然だ。
絶(念の四大行のひとつ)を使って気配を完全に消すと、シズクはこっそり後をつけていった。
◇◇◇ ◇◇◇ ◇◇◇
庭にある樹の裏側へシンは隠れるように回った。
取り出した手鏡を地面に置いて呪文を唱えた。
手鏡から液体が溢れてきて、その液体が人を映し出す画面へ早変わりする。
『や、シン。ひさびさー』
「こんばんは。そっちの方は?」
『至って平和さ。いやぁー、シンドリアの料理はうまいなぁ!
特にパパゴラスの丸焼き、さいこーvv』
そう言いながら、そのパパゴラスの丸焼きとシチューをモグモグ食べているサラ。
あちらでは夕食の時間帯のようだ。
「ところで、サラ。今日は傍に誰もいないようだが…」
いくつか世間話をした後、シンはふとサラの周辺に一般兵を除いた側近がいない事を不思議に思った。
このところ、定期連絡の際には八人将の誰か一人がいるのが当たり前になっていたため、
どこか違和感を覚えてしまう。
『このところ、実務で忙しくってそれどころじゃねえみたいだよ』
「ああ~…そういや繁忙期だっけ。
他の文官達もせわしなく働いているだろうな」
『気になるか? もしアレなら書類送っても…』
「うん、今はいい。こっちの仕事で精一杯だ!」
シンは爽やかな笑顔で『余計な事するな』とサラの申し出を断った。
分かりやすい奴よのぅ…とサラは生温かい眼差しでほくそ笑む。
「本当はジャーファルあたりに、各国の情勢を聞きたかったんだが…仕方ない。
また今度にしようか…って、おっ!」
『ん?』
「すまない…サラ。今日はこの辺で」
『ふーん? ま、いいや。体調崩すなよ~』
通信を終えたシンの視線は、玄関口に向けられる。
そこには、そぉーと辺りを見回して、外出しようとしているルドガーの姿が見えた。
【真夜中のお誘い】
(ルドガー…?)
シンの一部始終を盗み聞きしていたシズクも、同じ人物を視界に入れていた。
時刻は日を越して0時45分。
外出するなんて…何か裏がありそうだ。
シンが、こっそりとルドガーを尾行しようと動いた。
(…リエさん、ごめんなさい。無断外出します)
シズクは事務所内で就寝しているリエに内心謝罪をして、二人の後を追った。
【つづく】
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