第2章:長期任務の幕開け
ルドガーが放った槍がヴォルトを貫いた。
引き抜いた槍に刺さっていた黒い歯車が砕け散り、世界が割れていき、
空間の歪みへルドガー達は落ちていった。
「…あれ? ここって」
「通路口ですね」
『戻ったってこと~?』
アルヴィン、エリーゼ、ティポが言い合う中、ルドガーは片目を閉じて頭を抑えていた。
「ルドガー…?」
「あ…ああ、うん」
ジュードが恐る恐る名を呼ぶ。
ルドガーは愛想笑いをしながら答えるが…
(まただ…)
これで三度目。
あの黒い何かに取りつかれたモノに対し、無意識にルドガーは変身して攻撃を仕掛けてしまう。
これは、自分の隠された能力なのだろう…薄々そう感じてきた。
(…でも、このままじゃダメだ)
この能力はまだ制御しきれていない。
いずれコレを自在にコントロールしていかないと、取り返しがつかない事態を引き起こしかねない。
「ルドガー」
自ずと眉を潜めるルドガーに、エルが近寄る。
「ヘンなのになったけど…体とかヘーキ?」
「ああ、大丈夫さ」
「ホントに…? ムチャしちゃダメだからね」
リエさんも心配しちゃうんだから、とエルは苦言する。
「ありがとう…気を付けるよ」
エルの気遣いに、ルドガーはほんのり笑う。
「さて、ここが元の世界かどうか確かめないといけないな…」
「じゃ、屋上へ急ごう。バランに聞けば分かるはずだ」
シンの言葉に、アルヴィンが行って確かめようぜ…と提案したため、
全員それに賛同して屋上へ向かう事となった。
元の世界に戻ってきたならば、アルクノア兵がまだ徘徊しているだろうと
警戒して進んでいったが、不思議な事に遭遇しなかった。
「プレザさんは一度引き返して…あら?」
「あなた方は…」
その理由は…先の方にいた二名の先客だった。
「「「カナン(さん)!」」」
「プレザ…」
「噂をすれば…ナイスなタイミングだわ」
カナンは小さく笑ってそう言いながら、こちらへ近づいてきた。
「なんで、カナンさんとプレザさんが此処に…?」
「本日のスケジュールで、所長のバラン氏との会合があるからです。
ドクター・マティス」
ジュードの疑問に、プレザが眼鏡を指先でかけ直しながら答えてくれた。
「でも、到着したらアルクノアが占拠してて、親善団体も巻き込まれたって聞いてね
…居ても立っても居られなくなって、敵をこっそり鎮圧していたの」
『だから、敵がぜーんぜん出てこなかったのかぁー』
「カナンさん達が退治した後だったんですね…」
ティポとエリーゼが安堵の表情で納得する。
「エリー、ティポ君とアルさんも…無事でよかった」
「お久しぶりです。カナンさん」
『カナーン! 会いたかったよぉーvv』
ティポは、カナンの周りをクルクルと回り、エリーゼは嬉しそうに彼女と話す。
「サンキュー…プレザ、元気そうだな」
「ええ…貴方もいるなんて思わなかったわ」
アルヴィンはカナンに礼を言い、秘書のプレザに愛想よく声をかけるものの、
プレザはそっけない対応で済ませている。
この二人…顔見知りのようだが、過去に何かありそうだ。
「カナンさんが此処にいるのは…」
「研究所内のアルクノア兵を捕縛し終えたから、人質や隠れている人達を救出しているところ。
…ジュード君達も?」
「はい。この先にバランさんがいるんです」
「ちょうどよかった。彼と話したい事もあるし、私も同行するわ」
いいかしら、とお願いするカナンに、ジュードは「もちろんです」と快く了承した。
「ありがとう。プレザさんは他の護衛の人達と合流、陛下にこの事を報告して」
「かしこまりました」
プレザは頭を下げると、踵を返して逆方向へかけていく。
ルドガー達は目でそれを見届けると、改めて屋上へと繋がる階段を上がっていった。
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