第2章:長期任務の幕開け
「んまぁーい! このサンドイッチやばすぎー!」
くぅーと目を閉じて、リゾット特製のサーモンサンドイッチの味を堪能する徐倫。
あのテレビ中継から約15分後に、徐倫はマンションフレールへ無事辿り着いた。
「うまみー?」
「うん、うまみうまみ…マジでやばい」
彼女を真っ先に出迎えたのはソラだった。
空色の光翼を広げて、勢いよく徐倫に飛び込んでいった。
久方ぶりの契約者との再会が嬉しかったのだろう。
「まさか君が来るとはな…」
「以前、トラサルディーで会った時に宣言したじゃない。忘れたの?」
腕を組んで、複雑そうな顔を浮かべるリゾット。
徐倫は、ソースで汚れた口周りを指先で拭いながらニッと口元を吊り上げる。
「二度と故郷に帰れなくなる覚悟でって言ったのは貴方でしょ?
その気で此処に来たんだから」
「……その様子だと、家族や親友とは話はついたようだな」
「うん。けっこー苦労したけどね…」
◇◇◇ ◇◇◇◇◇ ◇◇◇
徐倫は苦笑いしてこれまでの経緯を振り返る。
家族に内密でイタリアのギャング組織の幹部とメールで情報交換していた事がバレた時は大騒動だった。
『じょ…ジョリーンが…』
『……しっかりしろ』
母は魂が口から出てくる程に卒倒して父に支えられていた。
『まったく…君の行動力は承太郎譲りだね』
父の親友である花京院からは冷や汗混じりで感想を言われた。
『ワシの可愛い曾孫を…どこのスケコマシじゃ!』
『裏社会の人が恋人なの!? きゃぁああv』
曽祖父はどこの馬の骨が曾孫を唆したとか騒いでいたし、
曾祖母なんて、曽祖父とは真逆の黄色い声援をあげていた。
『気持ちは分かるけど、あまり無茶しちゃダメよ』
父方の祖母だけは苦笑して、徐倫の行動を窘めた。
祖母は、徐倫とは異なるエクレシアと契約しているため、孫の諸事情を誰よりも理解しているからだ。
大変なのはその後だった。
“異世界に行きたい”
その事をありのまま伝えたら、案の定反対された…特に父から。
それでも、徐倫は粘った。
“待っているだけじゃダメなの…こっちから行動しないと…きっと後悔する”
異世界の門(ゲート)を通過する条件は、精神力の高さが要求される。
その上、門を潜り抜けられる人数も限定されている。
一年に異世界へ行き来できる人数は七名。
イタリアギャングの【パッショーネ】が、定期的に選抜された構成員を送り込んでいる事を考えると、
チャンスは限られてくる。
そのためにも、出来るだけ早く扉を潜りたい。
『そんなに行きたいのか?』
そんな徐倫の強い思いを察したのか、父親である空条承太郎がある提案をした。
『なら…俺が課題を出す。それに合格したら好きにしていい』
意外だった。
てっきり、反対一直線で通すと思っていた父が手を差し伸べたのだ。
『一年以内に50万ドル(約5000万円)を自力で稼げ』
…前言撤回。
やはり、父は最大の難関だった。
でも、徐倫はその無理難題を受けて立った。
むしろ、彼女の闘志に火をつけた。
“やってやるわ、その課題…半年でクリアして見せる!”
承太郎の…家族と友人がいる前で、徐倫は堂々と宣言した。
その五ヵ月後、彼女はその課題を成し遂げ、単独でこの地へ降り立ったのである。
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