第2章:長期任務の幕開け


駅でアイテムや昼食用の弁当を購入すると、ルドガー達はヘリオボーグ行きの列車に乗り、

他愛もない話題を喋りながら目的地までの道程を過ごしていた。



「さっき、購入した雑誌にジュードの故郷が載っているぞ」



シンが購入した週刊の芸能雑誌を広げて、その頁を皆に見せた。



「ドクター・マティスの故郷特集……へぇ、青空と星空が見られる町なんだな」



ジュードの故郷、ル・ロンドはリーゼ・マクシア特有の気候、夜域の終わりに位置している。

そのため、朝の青空と夜の星空…双方が合わさった不思議な風景が生まれる。


リーゼ・マクシアの有名な観光地、イル・ファンや首都カン・バルクと比べると見劣りするが、

空気は清浄で食べ物も美味しい。

最近では、ジュードの知名度により、一種の観光スポットと化しているようだ。



「ははっ…何の変哲もない田舎町だよ」


「でも、宿泊施設の料理は絶品で、親切な人が多いって好評だと書かれている。

両国の関係に隔たりがあるとはいえ、エレンピオスにも公平な目で物事を見る人がいるようだ」



雑誌の特集を組んだのはエレンピオス人だが、独断と偏見な一方的な見方ではなく、

きちんとした公平な視点で書かれている。

その点は、シンと同じくエレンピオス人であるルドガーもまた好感を抱いた。



「おいしいモノいっぱいなんだ…ジュードのコキョーに行ってみたいな~」

「うん。その時は僕も案内してあげる」



エルがウキウキしてル・ロンドにいつか行きたい気持ちを告白すると、ジュードは快く承諾してくれた。

やったーと喜ぶエルの隣に座るシズクが口を開いた。



「リーゼ・マクシアって、こういう風景…というか現象が多いんだよね」


「はい。『霊勢』と言って、精霊の力のバランスによって気候や季節が違います。

霊勢が偏ると、イル・ファンのようにずっと夜のままだったり、一部の地域も常に夕方が

続いていたりする現象が起こるんです」


「精霊と共存した世界か…御伽噺で読んだ内容が現実にあるのって、不思議な感じがするな」


「エレンピオスの人からすれば、そんな感覚なのかもね。

一度行ってみたらまた違った気分になれると思うよ」



ルドガーの言葉に、ジュードはリーゼ・マクシアに行く事をさりげなく勧めた。

彼の言う通り、百聞は一見に如かず。

もしも、任務で…もしくは休暇が取れるようになったら、マクスバードを経由して

行ってみるのもいいかもしれない。



「シズクー、どんなお弁当買ったの?」

「鳥そぼろ弁当。お肉がちょっと甘めかな…」


「おいしそー、ねぇねぇ一口ちょーだい!」

「じゃあ、私はそっちのお弁当のゆで卵が一つほしい」



時間的に空腹になってきたので、各自、駅で購入した弁当を開けて食べ始める事にした。

シズクが購入した鳥そぼろ弁当をエルが興味を抱き、味見したがる。

シズクは、エルの買った可愛い子ども用のキャラ弁当のおかずとの交換を条件に

彼女に一口食べさせてあげた。



「ジュードは海苔弁当か」

「うん、こういうシンプルなものが好きなんだ。ルドガーは?」

「ちょっと奮発した」



ルドガーは普段、ジュードの同じようにスタンダードなタイプを買う。

でも、最近給料もでた事だし、たまにはワンランク上のものを選んでもいいかな…という欲が出て、

ちょっと高めのステーキ弁当をチョイスした。



「ステーキ…すごー!」

「いい匂い…」


「それ、トリグラフ駅で人気のメニューだよね?

この間、僕の知り合いも『美味しい』って言ってたよ」



エルとシズク、ジュードからの反応も好評だ。

プチ贅沢も悪くないな…と少し優越感がでてくる。



「シンさんはサンドイッチにしたの?」



シズクが視線をずらして、窓際で景色を眺めながらサンドイッチをほうばっている。



「ん? ああこれ、美味そうだから買ってみたんだ」



シンはそう言いながら、サンドイッチ弁当のパッケージを見せてくれた。



―――《リーゼ・マクシア産、新鮮魚サンド》



「あっ、一週間前から発売されたサンドイッチシリーズの新製品じゃないですか…

うわぁ、僕初めて見ました!」


「『リーゼ・マクシアの業者から直輸入! フレッシュなフィッシュを劇選した、お得なサンドイッチ』

…謳い文句も凝ってるな~」



どうやら、シンもまたプチ贅沢なメニューを選択していたようだ。




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