第2章:長期任務の幕開け


「…さーて、時間ですな」



頃合いを見計らったのか、リーシェがソファーから腰を上げた。



「リーシェさん、どちらに…?」

「ユリウスさんを探しに。トマト野郎…いやあの人は一応、私の患者ですから」



カナンの問いに、リーシェは面倒くさそうな感じで答えた。



「あっ、待ってください」



行方知れずのユリウスを探しにまた出かけようとするリーシェを、シズクが呼び止める。



「私も行きます」

「だーめー」



リーシェは、軽げな口調で彼女の同行を拒否した。



‟リーシェさんを見張れ”

…団長の命令です。だから、『ダメ』って言われても行きます」


「今は、盗賊家業を休止して探偵業してるじゃないですか。

なら、そっちの方優先してくださいな」


「…屁理屈」



シズクは眉を潜めてぼそりと文句を漏らす。

リーシェはくくっ…と可笑しそうに喉を鳴らして笑うと、ルドガーに視線を移す。



「ユリウスさん発見したら連絡入れますよ。はい、これ」



電話番号とメールアドレスが書かれた小さなメモをルドガーに渡した。



「じゃあ、またの機会に会いましょう。では…ごきげんよー」



ひらひらと手を振ると、シュッとリーシェは部屋から立ち去った。

あたかも神隠しにあったように姿を消した事に、エルは「えっ、ウサギ仮面さんどこ?」と

目をぱちくりさせて驚いている。



「もぅ…振り出しだよ」



シズクは頬を膨らませて「私、行ってくる」と言い、部屋から出て行った。

あっ、とルドガーは追いかけるべきか悩むが、シンに肩を掴まれて止められた。



「多分、時間を置いたら戻ってくるさ。

それに、今のシズク君を止めない方がいい」



探し人を見つけたかと思ったら、また失踪してしまったのだ。

標的に逃げられる事は、任務の失敗を意味する

…そんな事は彼女のプライドが許さないはずだ。

そんな微妙な女心を察しろ…と助言するシンに、ルドガーは納得した様に頷く。



「リーシェ師匠(せんせい)、昔からああなのよ。

あの人を止められるのはリエさんかもう一人の師匠だけ」


「カナンさん、もう一人センセイがいるの?」



エルが興味津々に尋ねると、カナンは「ええ」と苦笑する。



「どんな人、どんな人?」


「リーシェ師匠とは…そうね、双子のお姉さんにあたるかしら。

顔も似ているけど性格はしっかりした気立てのいい人よ」



…双子の姉がいるのか。

カナン曰く、リーシェよりも話しやすい人柄のようだ。



「へぇ…双子だったのか。ところで、カナンさん」



ルドガーが二人の会話を聞いていると、途中でシンが会話に参加してきた。

シンは、内容を深く掘り下げるある質問をしてきた。



「その双子のお姉さんの名前は?」

「名前?―――名前は…」



  ピンポーン



カナンが答えを言いかけたその瞬間、インターフォンが鳴り響いた。

あっ、お客様ねとカナンの視線がそちらへ向く。

誰が来たんだ…とリゾットが訝しげにジュードの時と同じく、扉越しに問いかけた。



「どちら様で?」

『失礼。こちらにルドガー・ウィル・クルスニク君はいらっしゃるかな?』


「……この声は!?」

「おいおい…」

「あれ…どっかでききおぼえあるっぽい声…?」



渋みのある男性の声音…ルドガーとシンはその声の主に一度だけあった事がある。

エルは思い出せそうでその該当する人物の顔がまだ浮かんでいないようだ。



「ルドガー…どうする?」



リゾットは静かに問う。

ルドガー達の反応次第で、扉を開けるか否かを決めるようだ。



―――《選択肢発生》―――



◇俺達の知り合いの人だ。…開けてくれ。

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◇…上手く誤魔化してくれないか?

 ⇒ 【3】(4)【選択:…上手く誤魔化してくれないか?】

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