第7章:真実が落とす影
ジュード達が出入り口の扉を潜ると、ユルゲンスと…アルヴィン、カナンが出迎えてくれた。
「やったな! 素晴らしい戦いぶりだったよ」
ユルゲンスは満面の笑みを浮かべて、ジュード達を称賛する。
どうやら、先程の戦いでこちら側の実力を高く評価したようだ。
「お疲れさん」
「水分補給のドリンクよ、どうぞ」
アルヴィンが労いの言葉をかけ、カナンは用意していた特製ドリンクを、ジュード達に渡していく。
「ぷはっ~! おいしー!」
「うん、カナンの作ってくれたこのドリンクは本当に美味しいな」
レイアとミラは、すっかり特製ドリンクが気に入っているようだ。
「後半戦は…午後からだったな」
イザヤの確認の問いかけに、ユルゲンスは首を縦に振る。
「ああ、まだ時間に余裕はあるし、身体を休めてくれ」
後半戦も期待しているよ、と言うとユルゲンスは同じ部族の男女二人と共にその場から離れていった。
「前半の戦い、フォーメーションが上手くいってたわね」
「ローエンとイザヤが考えてくれた作戦のおかげだね!」
カナンの言葉に、レイアがその理由を熱く語る。
「うむ、そうだな…それと、アルヴィンが事前に入手してくれた情報がなければ、前半戦は此処までスムーズにはいかなかったはずだ」
レイアの言葉に同意すると同時に、ミラはもう一人の功労者の名前を口にする。
「感謝している、アルヴィン」
「どーいたしまして」
素直に礼を言うミラに、アルヴィンは満更でなさそうな感じだ。
「ところで皆、後半戦への体力回復も兼ねて食堂へ行かないか?」
『そうだね~、ぼくお腹ぺっこぺこ!』
アルヴィンの提案に、ティポはクルクル回りながら大賛成する。
周りを見ると、試合を終えた他の参加者達も食堂の方向へ足を進めているようだ。
「早くしないと席が埋まっちゃいそう!」
「行きましょう!」
『レッツゴー♪』
「ちょっと、レイア、エリーゼ…ティポも。走ると危ないよ」
食堂へダッシュする二人と一匹をジュードは窘めながら、小走りで後を追う。
「ほほほ、皆さん元気いっぱいですね」
「ハードな試合だったもの…尚更、空腹には勝てないんじゃないかしら」
微笑ましそうに言うローエンに、カナンも笑って同調する。
「此処にいても、いい匂いがプンプンしてくるかなぁ、腹に直撃しても仕方ねえだろ」
なぁ、とアルヴィンが横にいるミラに同意を求めるように話しかけた。
「………」
「ん、おーい…ミラ?」
「…ッ! そうだな。私達も早く行かなくてはな」
アルヴィンに呼ばれて、ミラはハッと我に返ったかのように話すと、食堂へ足を進めていく。
…どうも、様子がおかしい。
いつもなら、涎を垂らして食事が楽しみだと言わんばかりの歓喜の色を顔に出すはずなのに…。
(一段落着いたからホッとした、って感じじゃなかったわね)
…別の事で悩みがあるのだろうか?
カナンは心配そうにミラの背中を見つめる。
「だんだん人の行き来が多くなってきたな」
「そうですね、私達も合流しなくては…」
選手のみならず、大会関係者までもが世話しなく行き来している。
次に行われる団体戦に向けて、調整をしているのだ。
邪魔をしない様にこの場から離れた方がよさそうだ。
「そうね…って、イザヤ」
カナンが二人の意見に同意したその時、イザヤが別の通路口へ行こうとしている事に気付いた。
「どこに行くの?」
「すまないが、先に食べててくれ。…空気を吸ってくる」
試合時間までには戻る…そう告げると、イザヤは反対方向の通路へ去っていった。
「なんつーか、マイペースなヤツだなぁ」
「彼なりに気分転換したいのよ」
…イザヤの事だ。
きっと、後半戦に備えて精神集中したいのだろう。
「私達も食事を済ませましょう。こうしている間に時間は経ってしまうもの」
「ご尤もです」
「そうだな」
そうこうして、三人が食堂へ駆け足で移動する事となった。
この時、彼等は待たせている仲間と合流する事や後半戦の事を意識していたためか、注意が逸れていた。
行き交う人々に紛れて、いくつかの鋭い視線が己らへ向けられていたのに…。
食堂は、思っていた以上に喧騒に包まれていた。
大広間のような場所で、参加者達が一堂に会する形式になっているため、自ずと他のチームの人々とも顔を合わせる形になってしまう。
「アルヴィン、ローエン、カナンさーん!」
『こっちこっち~♪』
レイアが手を振り、ティポが中に浮かんだ状態で中大の声で呼びかけてきた。
左端の隅の付近の席を確保してくれていたようだ。
「おや、イザヤの姿が見えないが…?」
「リフレッシュしたくて散歩しにいったぜ」
人数が足りない事に気付いたミラ。
アルヴィンが肩を竦めて、イザヤが不在の理由を言うと、ミラは「そうか」と素直に納得した。
「イザヤさん、食事しなくていいのかな?」
「こっそり買い食いしてたりして…」
試合途中でスタミナが切れなければいいけど…とイザヤの体調を心配するジュード。
対して、レイアは「きっとどこかでおにぎりとかサンドイッチを購入してるよ」とジュードと比べて楽観的に考えているようだ。
それぞれ空いている席に腰を下ろすと、従業員にメニューを頼む。
頼んだ料理を待っている間、カナンはふと周りにいる参加者へ視線を巡らせる。
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