第7章:真実が落とす影
二の鐘がなる頃に、イザヤ指導の下で行われていた一通りの鍛錬が終了した。
「あとは体を休めたり、個人でトレーニングするなり好きにして構わない」
「ああ。イザヤ、指南してくれた事、感謝する」
「とても参考になりました」
「ありがとう…ございます」『サンキュー!』
「イザヤのおかげで自信がついたよ! この調子で明日も頑張るね!」
「また、当日の作戦面でアドバイスしてくださると有難いです」
一行が御礼を言うと、イザヤは「こちらこそ」と会釈する。
「ねぇ、カナンさん。これからどうするの?」
レイアが予定をさりげなく訊いてきた。
「アイテムとか旅に必要なモノは購入したから…ゆっくり観光でもしようかしら」
「あ、それ賛成! ジュードもいっしょにどう?」
「そうだね。気分転換したいし…」
レイアの誘いに、ジュードは快く頷く。
「私も…いいですか?」
『どうこーさせてぇー!』
エリーゼとティポも同行したいと申し出る。
「じゃあ、一緒に行きましょう。ローエンさんとイザヤはどうする?」
「私は宿で寛ごうと思います。ジジイゆえに体調管理をしないといけません」
「ローエン殿、小耳に挟んだ情報だが、宿で整体師がマッサージをしてくれる期間限定のサービスがあるらしい」
「おおっ…それは素晴らしいですね! イザヤさんもいかがですか?」
「いや、俺は遠慮しておく…」
「貴方もゆっくりしたら? この先、休める機会に恵まれるとは限らないわよ」
誘いを断ろうとするイザヤに、カナンが休むよう勧める。
「しかしだな…」
「私の方は大丈夫。団体で行動するから」
「イザヤが心配なら、私もカナン達に同行する」
「ミラ…」
「精霊の主がいるもの。心強いと思わない?」
だから、貴方も気を楽にして、身体を休めてちょうだい。
言外にそう告げられ、イザヤはハァと軽く息を漏らす。
「…分かった。だが、気を付けて行動してくれ」
イザヤは注意を含めて渋々了承した。
「みなさん、お気をつけて」
ローエンとイザヤに見送られ、五名(と一匹)は宿を出た。
シャン・ドゥは、人口が多い事と大会が近い事もあって、人の賑わいが絶えない。
大橋のところで、ジュードが「みんなはどこに行きたい…?」と尋ねてきた。
「お土産屋さんに行っていい?…母さんに黙ってきちゃったから」
「そうだね…ソニア師匠、怒らせたら大変だし」
「私、露店がみたい…です」
『きれいなアクセサリーとか、串焼きとかおいしそー』
「歴史建造物や像とか見物したいわね…ミラは?」
「私はもう一度広場を見てみようと思う」
そう答えたミラに、カナンはもしかして…と再度質問を口にする。
「昨日の岩が落ちてきた件、気になるの?」
「ああ、少しな」
「じゃあ、順番に行く?」
「いや、ジュード。ココから分かれて行動しよう。あの事故の現場を見たくない者もいるだろう」
ミラの視線が、レイアとエリーゼに一瞬向けられる…二人を気遣っての提案なのだとカナンとジュードはすぐに察した。
「だったら私もミラと行くよ!」
「レイア…大丈夫なの?」
昨日の事故で、精神的に傷ついていたのに…とジュードは気に掛けるが、レイアは首を緩慢に左右に振る。
「もう平気だよ。元気が私の取り柄だし!」
「私もついていくわ。ジュード君」
そこまで言われたら、レイアを無理に止めるわけにもいかない…それにミラとカナンも一緒なら心配いらないだろう。
「エリーゼとティポはどうする?」
「ジュードと一緒に行きます」
『街中探検しよー♪』
行動するグループは決まった。
ジュードは「お願いします」と一礼すると、エリーゼと手を繋いで大橋を渡って行った。
彼等を見送り、カナンはミラとレイアと共に例の事故現場へ足を進めた。
・
