第7章:真実が落とす影
話がまとまったので、夕食まで各々自由行動となった。
カナンは、アルヴィンと共に情報収集をするため町を廻る事となった。
「おっ、アルじゃん!」
「よっ、久しぶり~」
さすがに地元(本人曰く第3の故郷)であるためか、町の人達の多くは、アルヴィンと顔馴染みのようだ。
そのため、情報収集がしやすいが…
「アル君、後ろの子彼女かい?」
「違う違う、俺の依頼人だって」
何かとご年配や中高年のマダムから、親しい間柄かどうか訊かれる確率が半端ない。
その都度、アルヴィンは慌てて訂正するが、果たして信じてもらえているか…。
カナンが苦笑いしつつも、相手チームの情報を集めていく。
「そうそう、アル。帰ってきたならレティシャさんに会ったのか?」
七人目……地元の商人で、アルヴィンと同年代ぐらいの男性からそう指摘された。
アルヴィンは、あっ…と言われて気が付いたという顔になる。
「まだだった…」
「お前、一度町離れるとなかなか帰ってこないだろ。早くレティシャさんのとこ行ってやれよ」
ほら、これもってきな…とナップルをおまけしてくれた。
「レティシャさんって…」
「おふくろの事だよ。うーん…」
それを受け取ったカナンが誰なのか尋ねると、母親の名前であると本人が答えてくれた。
「あ~、厄介な仕事抱えてる時に帰っていいもんかな」
「別にいいと思うけど…地元にいるのに、お母様と顔合わせないと逆に心配かけるわよ」
カナンが遠慮しないでいいのに…と言うが、アルヴィンは悩んで答えが出せないようだ。
いつもは自分の意見はさらっと言うのに…。
「アルヴィンさんらしくないわね」
「そーか?……俺、こうみえてあれこれ悩むタイプなのに」
それから案外繊細だぜ、と言うアルヴィン。
まっさかーと、カナンはクスクス笑う。
「アルヴィンさん…そんなタイプに見えないわ」
「冗談じゃねえんだけどな~…」
「あの、お話の途中申し訳ありませんが…」
談話している最中、誰かが口を挟んできた。
パッと声がした方を振り向くと、黒いコートに身を包む人物がいた。
「黒コート…!」
「貴方…13機関の人?」
「はい。お初にお目にかかります」
その人物は、深く被っていたフードを両手で外した。
小さく首を左右に振り、露わになる顔。
青銀色の髪で、中性的な顔立ち…まだ10代後半の青年だ。
「13機関、№6 ゼクシオンと申します」
◇◇◇ ◇◇◇◇◇ ◇◇◇
青年…ゼクシオンは、道を歩きながら二人に対して語る。
現在、13機関はリーゼ・マクシア内に半数以上きているらしい。
ゼムナスを筆頭に、多数のメンバーは各地で行動しており、うち数人はイル・ファンに潜入して、内政を探っているとの事だ。
リエは無事、彼らと再会して行動を共にしている、とゼクシオンは言う。
「両国が戦争をする可能性が高まり、リエさんからア・ジュール内の動向も探る様に言われました。そのため、僕と他二名が要人の警護及び情報収集にあたっています」
「あと二名来ているのね…私の知っている人かしら?」
カナンは、頭の中で今まで接触したメンバーの顔を思い浮かべる。
「おそらくご存知ですよ。貴女の事も話してましたし…」
ゼクシオンが微かに笑みを浮かべ、そう答えてくれた。
既に顔見知りのメンバーなら、一から自己紹介はせずに済む。
それにしても…一体、誰がきているのか?
(ゼムナスとシグバールさんだったら、まずいわね…)
カラハ・シャールにいた頃、ミラは二人の事を快く思っていなかった。
彼女の警戒対象が、単に二人だけなのか、13機関すべてに対してなのかは微妙なところだが、彼等は、極力ミラとは接触しない方がいいだろう。
「ところで、さっき《要人》って言ってたけどよ…この町にそんな護衛つかせる有名人でもきているのか?」
アルヴィンが、訝しげに目を細めて尋ねる。
カナンも、その《要人》にあたる人物が気になった。
13機関がわざわざ警護する程のレベルという事は、こちら側の味方なのだろうが、どんな人物なのか?
「この町の人からみれば、《一般人》です。但し、僕等にとってはリエさん同様に守らなくてはならない方です」
きっぱりと言い切るゼクシオン。
シャン・ドゥの住民であり、13機関にとって護衛の対象である…つまり、この世界における『協力者』という事だ。
「勿体ぶった言い方するな。ストレートに言ってくれりゃ有り難いんだけど」
さっさとその《要人》とやらの人物の名前言えよ、とアルヴィンは暗に文句を言う。
「百聞は一見にしかず―――その人物とあった方が話が早いでしょう」
ゼクシオンは視線だけ後ろに向けてそう言葉を続けると、こちらへ…と、その人物が待つ場所へと二人を案内した。
「こちらです」
目的地に辿り着くと、ゼクシオンはそう言ってその場所を手を差し示す。
見たところ、シャン・ドゥの一般家庭…此処に《要人》が住んでいるようだ。
「おい…うそだろ」
隣にいたアルヴィンが顔を青ざめてあんぐりと口を開けて言葉を漏らした。
あまりにも驚愕に満ちている彼の様子に、カナンは「どうしたの?」と尋ねようとしたその時、キィ…と扉が開いた。
【『要人』= 身近な人!?】
「ゼクシオンさん、お帰りになったの…まあ!?」
銀の長い髪を後ろで上品にひとまとめにした、30代くらいの女性が扉から顔をひょっこりだした。
すると、彼女はゼクシオンが連れてきた二人を目にして驚きの声を上げる。
「アルフレド…おかえりなさい!」
表情はすぐに満面の笑みへ変化し、扉を大きく開けて挨拶した…アルヴィンに向かって。
「アルヴィンさん、この人は…」
「…た、ただいま…母さん」
カナンの問いに答える前に、ぎこちない笑みをつくって女性に挨拶を返すアルヴィン。
それにより、此処が彼の【実家】であると明らかになった。
【つづく】
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