第7章:真実が落とす影


レイアが調子を取り戻すと、ミラ達は改めてイザヤの方に目を向けた。


「紹介するわね、この人はイザヤ。私の友達で、アンジールの仲間よ」

「…よろしく」


カナンが紹介すると、イザヤもかけていた深い青のサングラスを外し、会釈する。


「イザヤか…私はミラ=マクスウェルだ」

「ジュード・マティスです」


「レイア・ロランド、よろしくね!」

「アルヴィンだ。現在進行形でカナンの傭兵をやってる」


「エリーゼ・ルタス…です」

『ぼくはティポ、エリーとカナン君の友達だよ~!』

「ローエン・J・イルベルトと申します」


ミラ達も自己紹介する。

イザヤは、彼等の顔を一人一人見ていく。


「ミラ、ジュード、レイアとアルヴィン殿、エリーゼとティポ、ローエン殿だな…」

「ところで、イザヤさんはどうしてシャン・ドゥに?」


ジュードが早速質問を投げかけた。

(カナンを除いた)全員が一番気になっている内容だ。


「…アンジールは今、別様で手が離せない。代わりに、俺がカナン達の手助けをするように頼まれた」

「そうか…心強いな」


カナンの知り合いであり、アンジールの推薦とあれば、かなり頼もしい助っ人だ。

理由を聞いて、ミラやジュード達も納得したようだ。


「ところで、ワイバーンとやらがいるところに行くんだろう?」


先程のやり取りを聞いていたイザヤがその件を指摘すると、ミラは「おおっ、そうだな」と思い出したように言う。


「イスラさんって人がこの先にあるって言ってたわね…行きましょうか」



◇◇◇ ◇◇◇◇◇ ◇◇◇



イスラに教わった通りに大橋を渡り、【王の狩場】と【ソグド湿原】へと別れる道付近に大きな階段があった。

そこを昇っていくと、岩壁を利用した大きな檻があり、そこにワイバーンが数匹いた。


「うわぁ…おっきいねぇ」

「僕も辞典で絵は見た事はあるけれど、本物を間近で目にするのとじゃ…やっぱり違うね」


レイアは珍しい動物を初めて目にした子どものように感激しており、ジュードも生で見るワイバーンに興味津々だ。


(ああ、あの時も…)


二年前―――城から脱走した際に、ガイアスがワイバーンに乗って追いかけてきた。

同じ魔物だと思うと、当時の…いい事や嫌な事…が頭をよぎり、少し心が沈む。


「……先に宿に行くか?」


複雑そうにワイバーンを見つめるカナンに対し、イザヤはぼそっと呟いた。

カナンは「えっ…」と声を漏らし、右隣にいる彼に視線を向けた。


「アンジールから聞いた。怖いなら…見ない方がいい」


そういえば、アンジールが既に事情説明してくれていたんだっけ…と、彼のその言葉で思い出した。

他の人に聴こえないよう小声で言ってくれたところに、彼なりの気遣いが感じられる。


「…ありがとう。でも、安心して…嫌な訳じゃないから」

「…ムリするなよ」


ほんのり笑って御礼を言うと、イザヤは心配そうに言葉を返した。

檻の中であまりにもワイバーンが大人しくしているので、ティポがにんまりと近づいて「へいへいへーい」と煽ってみた。

すると、その挑発に反応したワイバーンが大きく開口し、グォオオオオオと咆哮した。


『ギャアアア~、こわいよー!』


あまりの怖さに仰天したティポは、後ろにいたアルヴィンの顔にへばりついてしまう。


『たすけてー!』

「ばふぁは、ほへひふっくふはへ(だから、俺にくっつくなって)!」


ティポを両手でびょーんびょーんとはがそうとしているアルヴィン。

あまりにも滑稽な様子に、イザヤはやれやれ…と拍子抜けした感じで横目で見る。


「かなり頑丈な作りの様だな。ちと骨が折れそうだ…」

「ミラ、物騒な事言わないで…」


何やらとんでもない事をしでかしそうな雰囲気のミラに、ジュードが困った顔で『ヘンな事はしないで』と注意する。

そこへ数人の男女がやってきた。


「君達、そこで何をしている?」


真ん中にいる髪を後ろ手にみつあみした、紫色の民族衣装に身を包む体格のいい若者が不審そうに尋ねてきた。


「こいつを手に入れたいのだが、どうやって檻を壊そうかと…」

「すみません、キタル族の方ですか? ワイバーンをお借りしたいんです!」


すると、ミラは真顔でワイバーン強奪宣言をしかけたので、ジュードが慌てて言い直した。

…良くも悪くもミラは素直に自分の意見を言ってしまうタイプだった。

みているこちらはヒヤヒヤしてしまう。



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