第7章:真実が落とす影
クルスニクの槍があるのは、ラ・シュガルの首都、イル・ファンだ。
しかし、イル・ファンの海停は封鎖されたままであり、直接船で向かうのは不可能。
サマンガン海停へ行く方法もあるが、ガンダラ要塞を突破しないといけないため、このルートも現実的には無理だ。
「私の元に届いた情報によれば、ゴーレムも起動したとの事です」
「ゴーレム…?」
「ガンダラ要塞に設置されている、機械仕掛けの兵器の事だよ」
「ち、地の精霊を使って動かしているんですよ」
首を傾げるレイアに、ジュードとエリーゼが解説した。
「私達が逃走した後、ゴーレム二体は何かが原因で停止したそうですが…まだ起動している物は多数あります。
ガンダラ要塞を突破するのは師団規模の戦力があっても厳しいでしょう。ましてや、今の私達では…」
「それで…ア・ジュールに渡って、陸からイル・ファンへ行くの?」
「その通りです」
レイアが恐る恐る確認するように意見を言うと、ローエンは満足そうに頷く。
「歩いていくのは構わないが、《ファイザバード沼野》はどうすんのよ?」
アルヴィンが眉を潜めて疑問を口にする。
「えっと~…ファイザバード沼野って…」
「えと、そこは…」
「ファイザバード沼野は、イル・ファンの北にある広大な沼地の事だよ。ガンダラ要塞と対をなす、ラ・シュガルの天然要塞って言われてるんだ」
場所が今一つ解らないレイアとエリーゼを見兼ねて、ジュードが説明する。
「それそれ。あそこ霊勢がめちゃくちゃで、通り抜けられないって話じゃなかったっけ」
「はい。アルヴィンさんのおっしゃる通りですね。本来なら火場から地場になったこの時期であれば、沼地も落ち着いているはずなんですが…」
「…えっ、問題があるの?」
口を濁すローエンに、レイアが不思議そうに尋ねると…
「先程、カナンさんから聞いた話だと…霊勢がほとんど変わっていないそうです」
「さっき、船に乗ってた時に仲間…アンジールから連絡があったの」
「おじさんからですか!」
『アンジール君元気~?』
アンジールの名前が出た途端、エリーゼとティポが会話に入ってきた。
カラハ・シャールへ出発する前に分かれて以降、会っていないので、アンジールの消息が気になっているようだ。
「アンジールは至って元気よ。…彼は今、二・アケリアにいて、そこでイバル君からファイザバードの異変を聞いたみたい」
「イバルが…?」
「ええ、彼の推測だと『三精霊が姿を消している影響で、霊勢が不安定なままになってる』との事よ」
「……ノーム、事実か?」
ミラが静かな声で問いかけた、その時…空間から黄色の光の球が出現し、パァンと弾ける音が響くとともに、球体に乗ったノームが姿を見せた。
ノームが公に姿を現したのは、二・アケリアでの『四元精来還の儀』の時以来だ。
あれから消失したマナを取り戻すために休養していたみたいだが、実世界で具現化できるまでに回復したようだ。
『…その通りでし。他のみんながいないから、霊勢をコントロールできなくなたでし』
「そうか…四大が揃っていない影響が霊勢にまで及ぶとは」
『ごめんでし…力が及ばなくて不甲斐ないでしよ』
「気にするな。アレは不可抗力の事態だったのだから」
「ミラのおっしゃる通りです、ノーム様。私達は、これからイル・ファンを目指し、必ず三精霊様と私の仲間を救出します」
しょんぼりするノームに、ミラとカナンは元気づけようとする。
一方、ジュードとアルヴィンを除いたメンバーは驚愕し、興奮し、感慨深く見ていた。
「こ、この子が…ち、地の大精霊…!」
「かわいいです…」
『しゅごーい! 丸いボールに乗ってる~!?』
「まさか、この年齢で大精霊にお目にかかる機会に巡り合えるとは…有難い事です」
「そういえば…他の皆はノームを見るのは初めてだったんだっけ?」
「そりゃ、滅多にみれるもんじゃねえからな~」
『ところでどやて、イル・ファンへ行くでしか?』
ノームも、ミラ達がどうやって目的地まで行くのか方法が気になるようだ。
「海路は無理で、陸路も難しいとなると…もしかして空から行こう! なーんて…」
「正解よ。レイアちゃん」
「ええっ―――!?」
冗談めいて言った推測を、カナンが笑って肯定した事に、レイアは驚きの声を上げる。
『空を飛ぶでしか…シルフはいないでしよ?』
風の大精霊、シルフがいれば空を移動する事は容易いが、現時点で囚われの身であるため、彼の力を借りる事はできない。
すると、カナンはさらに言葉を続けた。
「空を移動する手段は他にもあります。―――『ワイバーン』を使ってね」
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