第7章:真実が落とす影
…イル・ファンにあるラ・フォート研究所
この研究施設の最深部にある巨大な結晶石を前に、うちはイタチは片膝をついて傅いていた。
『…鍵を奪取し損ねたか』
「申し訳ございません。マクスウェル一味の者に邪魔されました」
『別にかまわん。予想の範疇内だ』
結晶石に封印された主は、テレパシーを通じてイタチと会話できるまでに回復していた。
時間をかければ、この忌まわしき封印術は解かれ、主…ヴァンスは完全に復活する。
しかし、此処まできてアルクノアsideで不穏な動きがあった。
イタチの不在時を狙い、研究員が結晶石を利用して、【クルスニクの槍】の威力を試す実験が行われていたのだ。
この勝手な行いに対し、イタチは自らの瞳術【写輪眼】を用いて、研究員に幻術をかけたところ…
『ジランド様から…破壊神の生命エネルギーがどれだけの威力を持つのか、極秘で調べよ…と命じられました』
虚ろな目で事の真相を語った研究員。
やはりか…とイタチは極めて冷静だった。
あの男…ジランドール・ユル・スヴェントは狡猾で、目的のためには手段を選ばない奴だ。
あちら側が初めて接触した時から、イタチはジランドのその本性を見抜いていた。
当時、結晶石を外敵から守るための場所を探していた事や、リーゼ・マクシアの情勢を把握する必要があった。
そのため、イタチを含めたメンバーはアルクノアと利害一致で手を組んだが、もう潮時かもしれない。
おそらく、ジランドはヴァンスが封印されている内に、その莫大な力を利用しようと目論んでいる。
ヴァンスが復活した場合も考慮して、黒匣を用いた封印を用いて、使役しようという魂胆だろう。
イタチは自らの推測とともに、ヴァンスにその旨を伝えたところ…
『フン、権力にしがみつくコバンザメ共の思想は万国共通か…』
「始末しましょうか?」
『いや…まだ捨て置け。むしろ…その男には働いてもらおう』
長年封印されていて、表情が固まったままだったヴァンスの口端が大きく吊り上がった。
◇◇◇ ◇◇◇◇◇ ◇◇◇
「此処がア・ジュールか~…」
「レイア、観光に来たんじゃないんだから…はしゃがないでね」
「もぉー、分かってるよ! 感想ぐらい言ってもいいでしょ」
ミラ達は、ア・ジュールの入り口であるラコルム海停に到着した。
初めての外国に、レイアは目を輝かせてあちこちを眺める。
あまり目立った行動はしないで、とジュードが苦言を呈するが、彼女は頬を膨らませて言い返す。
「そういえばここって、二・アケリアから割と近いんだよな。ミラ、どーする? ちょっと寄ってくか?」
「いや、今は村に用はない」
「ま、今は事情が事情だからな…でも時々でいいから村には顔を見せといた方がいいぜ」
アルヴィンはいつもの飄々とした雰囲気から一点、真面目な顔つきになり、そう言った。
「何故だ?」
「村の皆があんたを待ちわびていると思ってさ。あんた、一応あの村の象徴であって、村の人達にとったら心の支えでもあるんだ。
いくら、従者のイバルがいるからといっても、長く留守にしてたら…住民の不安が溜まっていくだろ」
アルヴィンがそういうアドバイスをするのが予想外だったのか、ミラは目を見開いた。
「使命も大事だが、あんたを心から慕ってる奴らの気持ちも考えとけよ。気付いた時に、居場所がなくなってたら…後悔するのはあんたなんだからな」
「なるほど…アルヴィン、貴重な助言をしてくれて感謝するよ」
ミラは素直に「ありがとう」と言うと、アルヴィンは「どーも」と若干苦笑交じりで返事した。
「ところで、私達どこに行ってるの? 旅の目的地は、イル・ファンじゃなかったっけ?」
レイアが不思議そうに尋ねる。
「今更…?」
「船の中で話聞いてなかったんだよ! 旅に一緒についていくって決まった時は、海停が目の前だったし…」
「ほほ、なら解り易くこのローエンが解説しましょう。まずは場所を移しましょうか…ここですと、会話が筒抜けになりますので」
気を効かせたローエンが街道へ移動しようと誘う。
人気のないラコルム街道へ場所を移すと、彼は一から説明を始めた。
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