第6章:【青空と夜空の街】に残された手掛かり


海停にある広場のベンチに腰をおろして、カナンは星空を見上げていた。

不思議と今日の夜空はいつもより、星の数が多い気がした。


「いい星日和だわ…」


宝石のように輝きを放つ星々を眺め、カナンはそう感想を呟く。

あれから、結局ローエン達にエクレシアの事をカミングアウトした。

彼らもまた、レイア達の時同様に驚いていたが、ジュードとミラのフォローもあり、カナンの事を受け入れてくれた。


(ミラも、ジュード君も…皆、理解のある人達でよかった)


旅を始めてから今までの事を振り返る。

もし、イル・ファンのラ・フォート研究所の騒動で、ミラとジュードと出逢っていなければ、今頃どうなっていただろうか?

きっと、普賢真人を探す為に単独か、アンジールに同行していただろう。

その道中で、ガイアスと再会して…捕まっていたかもしれない。

13機関がいてくれたおかげで、強制連行を免れたが、あの場に彼等がいなかったら、ア・ジュールに軟禁状態だったはずだ。


(思えば…色んな人と会ったわね。いい人との出逢いもあれば、嫌な人物との遭遇もあって…)


暴君ナハティガルと、側近のジランド。

…うちはイタチ。

彼等とはいずれ決着をつけなければならない。


(それから、あの子とも距離を縮める事が出来た…)


四象刃のアグリアと、ウィンガルの側近であるニルス。

彼等とはこの街で再会し、紆余曲折の末に分かりあう事ができた。


(ガイアス…)


思い人の顔がちらりと脳裏を掠る。

あの崖以降、目立った動きは起こしていない。

カナンにとって、それが奇妙に思えてならなかった。


(…近い内に、あの人…きっと何か仕掛けてくるはず)


彼女の内なる能力、超直感が働く。

ほぼ100%間違いない。

もし、ガイアスが予想通りの行動をするなら…


「…逃げる訳にはいかない」


過去に二度、彼から逃げたのだ。

今度は、正々堂々と話しあわなくてはならない。


「大丈夫…きっと大丈夫よ」


瞼を閉じ、手を祈る様に握りしめて魔法の呪文を唱えて、己に言い聞かせる。

三度目に、ガイアスと接触する…その時が、カナンにとって“最後のチャンス”となるかもしれない。



彼女が祈りを捧げる様子を、遠目から眺めている人影があった。


(カナンさん…)


母、ソニアの手料理を食べて、後片付けの手伝いをしていたレイアは、ふらりと外へ出て行くカナンを見かけて、こっそりついてきた。

星空を見ながら、切なそうに何かを願っている姿を見て…レイアは胸に熱いものが込み上げてくる気がした。

カナンがア・ジュールの王に追われている事情は、ジュード達から聞いた。

人間とは異なるエクレシア…という種族がどんなものなのかは、本人が直接話してくれた。


…重たかった。

ミラと同じく綺麗で格好いい女性なのに、カナンの抱えている問題は…胸が痛む位に、ハードなものだった。

それでも、カナンはそんな苦労を表に出す事無く笑っている。


ミラもそうだ。

精霊の主であると告げられて驚いたが、身近で彼女の意志の強さを目の当たりにしてきて、ああそうなのかと心のどこかで納得できるものがあった。

リーゼ・マクシアを守るために、彼女は足の犠牲を諸ともせずに、ラ・シュガルの王へ立ち向かったそうだ。

他人から見れば、無謀とも思えるその行動。

でも、ミラはそれだけ世界を大事に思っていて、精霊や人間を守るために覚悟を決めているのだと、レイアは感じ取った。

二人は、自分の目標を…使命をもっていて、それを成し遂げようと突き進んでいる。


(すごい…私も、あんな風になれたら…)


幼馴染であるジュードもまた…彼女達を見習う様に、一歩ずつ前進している。


(なんだろう…近くにいるのに、ジュードがどんどん遠い存在になってる…)


少しずつ成長している彼の姿を目にして、レイアは疎外感を感じていた。


―――“自分だけが取り残されていく”


そんな気持ちが心に深い不安と焦りを生みだしていく。


(…私も…私にもできる事ないのかな? なんでもいい。ミラやカナンさんの…ジュードの役に立ちたい!)



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