第6章:【青空と夜空の街】に残された手掛かり
海停での再会後、エリーゼとローエン、ティポを連れて【宿泊処ロランド】へ場所を移した。
食堂で、五人(+一匹)でテーブルについて、ミラ達がウォーロックにメニューの注文をしている中、カナンは手紙の封を開いた。
「この手紙は…」
その手紙を書いた主は、カナンのよく知る人物からだった。
「カナン、元気か?」という文面から始まり、その人物の近況が書き記されていた。
…カナンやアンジールが置かれている状況を、加奈から聞いた事。
…その件をある古き親友に相談した事。
…つい最近になって、リーゼ・マクシアへ降り立った事。
文面を読み終えると、カナンは向かい側の席に座るローエンに訊いた。
「この手紙を渡した人って…黒髪のツンツン頭の人でした?」
「いいえ、違う御方です」
「長い銀色の髪に、エメラルドの色の瞳で、きれいな人でした!」
『めっちゃかっこよかったよ~!』
あれっ…と小首を傾げる。
てっきり顔見知りの青年かと思ったら、意外な人物が浮上してきた。
「(えっ…え~…!? まさか…《あの人》なの…?)それで、その人は何か言ってました?」
「カナンさんの体調を気遣っていましたよ。無茶をされていないか、落ち込んでいないか…と」
とても優しい男性でしたよ、とローエンは穏やかに笑って言う。
それを聞いたカナンは「そう…」と呟くと、なんとも言えない顔になる。
「その手紙渡した奴って、もしかしなくても知り合い?」
アルヴィンは、カナンの様子からなんとなく手紙の主が関係者なのだと勘づいたようだ。
うん、そうなるかも…と返答した時、食堂の扉が開いた。
「ただいま~。あれ…お客様?」
「…えっ、エリーゼ、ローエン…ティポ!」
丁度、買いだしに行っていたレイアとジュードが帰ってきたのだ。
カナンとミラ、アルヴィンが、見知らぬ少女と老紳士、ふよふよ浮かぶぬいぐるみと談話している光景に、目が点になるレイア。
一方、ジュードはカラハ・シャールで別れた仲間との遭遇に驚く。
『ジュードく―ん!』
ティポが嬉しそうに飛んでいき、ジュードの視界を覆う様に顔面にへばりつく。
「ふごッ!?」
「ちょっ…なにこれ!?」
突然の事にレイアが慌てふためき、ジュードはティポを両手ではがそうとしている。
久々の光景だな~、さっき俺もやられたよと乾いた笑みを浮かべるアルヴィン。
カナンもそう思った。
こうして、旅の面々が揃うのは一カ月ぶりだ。
ローエン達とカラハ・シャールで別れて、そんなに時間は経過していないけれど、随分と長く感じてしまう。
「ミラさん、足の方は大丈夫ですか? まさかもう歩かれているとは思いませんでした」
「まだ足に響く事もあるが…大分調子は戻っている。ジュード達のおかげだ」
ミラはそう言うと、ジュードとレイア、カナンとアルヴィンにそれぞれ目を向けた。
「凄いのは医療ジンテクスを適合させたミラの方だよ」
「三旬で、リハビリがてら剣をふるってるんだぜ? なかなか大したもんだよ」
ジュードとアルヴィンがミラの回復力とタフさを賛辞する。
カナンもその意見にコクリと頷く。
「成程…この装置のおかげで、わずかな期間で歩けるまでに快復したのですね」
「きれいな石です…」
ローエンが、ミラの足に装着している医療ジンテクスに視線を向け、関心を示している。
精霊の化石は色あせる事無く輝いており、傍からみれば装飾品にも見えなくはない。
綺麗な輝きに、エリーゼは見惚れているようだ。
「ねぇ、ローエンは暫くこっちにいるの?」
ジュードが尋ねると、ローエンはええ、まあと答えて頷く。
「クレイン様から、暫く御暇を頂く事になりました」
「そりゃまたなんで?」
アルヴィンが訝しげに問う。
レイアを除いて、この場にいる面々も彼と同じ疑問を持っていた。
ローエンの性格からして、主人の反感を買ったり、失態をするような真似をするなんて想像できないからだ。
「エリーゼさんが、ミラさんやカナンさんに会いたいとあまりにも申されるものですから」
ローエンが理由を言うと、レイアにぐにぐにと引っ張られていたティポがむぅーと顔を膨らませる。
『ぼくたちのせいじゃないぞー! この頃、ローエン君がぼぉーとしてたからじゃないか!』
「ほほほ、バレてしまいましたね」
ティポの反論を、ローエンは笑いながら受け止める。
「…何かお悩みですか?」
「この年になっても、悩む事はいっぱいあるのですよ。…少し私も考えるところがありまして…」
カナンが心配そうに訊くと、ローエンの顔は真剣な調子を帯びたものに変化した。
もしかして…ナハティガルの事だろうか。
口に出して言わずとも、ガンダラ要塞でのナハティガルの発言と、あの二人の間に漂っていた空気からそんな気がした。
何より、超直感が強く囁いている。
ローエンとナハティガル、二人の間に何があったのだろうか…?
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