第6章:【青空と夜空の街】に残された手掛かり
「エクレシア―――【ユーシス・ディアルマンテ】の名のもとに、トラヴィス家の本妻および子四人に、判決を言い渡す」
厳かな雰囲気の中、カナンはトラヴィス家の者達に判決を下した。
「彼の者達を―――10の世界の地獄の流刑と処す」
彼女がそう言った直後、凄まじい風が吹きあがった。
ジュードは目を瞑り、ニルスは顔を腕で防御する中、突如出現した大きな門に目を見開く。
「あれは…!?」
「【地獄の門】―――生前、罪を犯した者が手続きを終えて必ず通らなくてはならない贖罪の地へ導く扉だ」
アンジールが腕を組んで、平静な態度で二人に語る。
門はゆっくりと開いていき、中から顔に包帯を巻いた黒装束を纏う者が複数でてきた。
彼等は、首輪の付いた鎖を所持しており、それを目にも止まらぬスピードで投げつけた。
シュッ、ガチャン、ガチャンッ!
首輪は、トラヴィスの者達の首に嵌った。
「あっ…あああああ…」
「やっ、やめてくれ…」
「いっいきたくない」
「ひっぃいいいいい!?」
「た、頼む…金ならいくらでも出す! だから我々の罪を…」
恐怖に彩られた顔で叫び声をあげて、助けを請うトラヴィスの面々。
しかし、カナンは感情の伴わない表情で口を開く。
「貴方達が苦しめてきた人達は、今の貴方達と同じ声をぶつけたはずよ。その人達の必死の懇願を聞きいれた事があるの? その胸に聞いてみなさい」
彼女の指摘にトラヴィスの者達は固まったり、口を噤む。
長女と三男は、助かりたい一心で必死で考えているようだが、全然思い浮かばないようだ。
カナンは、はぁ…とうんざりしたように溜息をついて冷めた目を向ける。
「私からは何も言う事はないわ。その報いを…たっぷりあちらで受けてきなさい」
カナンは踵を返して、ジュード達がいるところへ歩いていく。
トラヴィスの者達は大声で許しを請うが、カナンは振り返る事はない。
「一応、言っておくが…お前達には、既に生前の地位や財産はないぞ」
「っ…!!」「なっ…なんだと!?」
彼女の代わりにアンジールが告げた言葉に、本妻と長男は驚愕する。
「魂(オーブ)となる事は、特殊な事情がない限りは生前の形式的な繋がりを断たなくてはならなくなる。つまり…今のお前達は大貴族ではない。
―――罪を犯したただの『罪人』だ」
その事実を突きつけられた瞬間、本妻は糸が切れたマリオネットのように動かなくなった。
他の子ども達は現実を受け入れたくないのか絶叫したり、笑いながら正気を失ってしまう。
「嘘だ嘘だ嘘だ…!」
長男は、絶望に染まった顔で両手を頭を押さえながらブンブン左右に振る。
ゴーン…ゴーン…
巨大な門の向こうから、薄気味悪い鐘の音が鳴り響く。
「時間だ…」
アンジールがそう言った時、黒装束の使者達は、その鎖をぐいっと引っ張る。
「「うぁあああ!」」
「いやぁあああ!?」
ジャラララッと耳障りな金属音を鳴り、首輪のついたトラヴィスの者達は次々に門の中へ引きこまれていく。
最初に無気力となった母親…それから三男…長女…次男の順に。
「ウァアアアアア!!!」
そして…地に這いつくばって逃れようとした長男も、黒装束の使者二人に両腕を掴まれ、引き摺られて行った。
ギィ…バタン!
凄まじい風の収束とともに、地獄の門は閉ざされてしまい、闇に溶けるように姿を消した。
「「その身をもって償え…憐れな咎人達よ」」
カナンとアンジールは、重なる様に同じ台詞を言った。
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