第6章:【青空と夜空の街】に残された手掛かり


「ジュード君!」


攻撃を仕掛けたのは、ジュードだった。

加速して威力をあげた蹴りを胴体に入れられたことで、巨大蜂はぐふぉッと悲鳴をあげ、地へと叩きつけられる。



「どうして此処に…」


「すみません…。除霊はカナンさんとアンジールさんの仕事なのは解っています。

けど…あんなに苦しんでいるあの女の子を…患者をみて、指をくわえて黙っているなんてできません!

この悪い霊が原因なら、医師の卵として僕は…取り除かなきゃいけない!」



ジュードは、真剣な顔で理由を述べた。

「怨霊」という未知なるものに恐怖を抱かずにはいられないはずなのに…

それすら微塵も感じさせない気迫だ。


医者の端くれとして、苦しんでいる患者を見過ごせない

―――それが、彼の勇気の原動力になっているのだろう。



「微弱ながらお手伝いいたします!」

「ジュード君…」

「心強いな」



ジュードの助太刀宣言に、カナンはジーンと感動し、アンジールはフッと喜びの笑みを零す。


『貴様らぁああ! 我等をコケにしおってェエエエ!!』


その空気が気に入らないのか、蜂は再び浮遊して詠唱しようとするが…


「真月閃!」

『グァアアアっ!?』


重なる斬撃により、邪魔されてしまう。

剣線を浴びせたのは…ニルスだ。


「…今更言い訳してもどうにもならない事は解っている。僕がやった事は明らかな裏切り行為だ」


けれど…とニルスは剣を構え直して顔を引きしめる。


「僕は、仲間であるアグリアと…カナン様を助けたい。この思いに嘘偽りはない!」

「ニルスさん…」

「ア・ジュール直属部隊 四象刃補佐 ニルス・フリーデン…参る!」


ニルスは、素早く敵の懐に入り、一直線に斬撃を繰り出す。

蜂は、それをよけようとするが…


「逃さない、流星掌波!」


その動きを予期したかのように、アンジールが腹部へ拳を連続で打ちつけ、アッパーをかけて上へ飛ばす。


「はぁああ、臥浪咆虎!」


そこへ今度は、ジュードが踵落としで地面へ叩きつける。

地面から這いつくばるように蜂は軽く浮かぶ上がる…しかし、反撃をする気配はなく、よろめきながら濃緑の液を口元から吐き出す。


『うげっ…ごぉ…の…まま…では…』


否応にも痛感したのだろう。

こいつらには勝てない…!

認めたくないが、圧倒的な力の差をその身に体感したことで、自らの身の危険を察した。


『く…そ…何か…ッ!』


蜂の目がとまった。

広場の外側…港のところで海を眺めている人物がいたのだ。

如何にもかよわそうで、美しい女性だ。

あの女にとりつけば…難をしのげる。

それどころか、上手くいけば人質として利用でき、反撃できるではないか。


保身をはかる蜂の行動は早かった。

動きを注視していた、カナン達に威嚇の咆哮をすると、隙をついて逃走するように飛び出した。


「まずいっ…!」「逃げて!」


蜂の標的がすぐに解ったのか、ニルスとジュードは大声で叫ぶ。


『そのみを…わたせぇええええ!!!』


蜂は決死の声をだし、女性に襲いかかろうとした。


「…愚かな選択を」


アンジールが憐みの眼差しで意味深気な言葉を呟いた。



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