第6章:【青空と夜空の街】に残された手掛かり


  シャァアアアア



突如、人が増えた所為か怨霊達が暴れ出した。

それに反応するように、寝ているアグリアがうぅ…と苦悶の表情を浮かべて唸りだす。

ニルスが、咄嗟に剣の鞘に手をかけようとするが、アンジールが「よせ」と制する。


「表だって攻撃姿勢を見せれば、逆効果になる」

「…どうすれば…!」

「此処は、カナンに任せろ」


アンジールがそう言って、カナンに視線を向ける。

カナンは、ブツブツと呪文を詠唱しながら右手の人差指と長い指を空気を切る様に動かす。

指先で光の線が描かれていき、魔法陣をつくりあげると、そこから光が放たれる。


「彼の者を縛りし魔の呪縛よ、光の加護により浄化せよ、【レリーズ・ブライト】」


 ギャァアアア


光は怨霊の群れに直撃し、それらは痙攣しながら絶叫をあげ始める。

黒い霧は徐々に晴れていく。

負の感情にとりつかれたオーブが正気になり、浄化されていっているのだ。


(あともう少し…!)

(油断するなよ)


残すは、根本となっている【オーブ達】のみ。


「あれ、カナンさんと…ジュード。何やってるの?」

「…ッ! レイア開けちゃダメ!」


カナンがさらに術の威力を強めようとしたその時、病室の扉を開いてレイアが顔を見せた。

ジュードが顔色を変えて声をあげる。

何事かと戸惑うレイアだったが、視界に黒い霧が見えるや、口元で手を覆って息を飲みこむ。



 グァアアアァアアア!



苦しみから逃れようと怨霊の一部が隙をついて、レイアに襲いかかろうとした。



 バシュッ


「逃しはしない」


アンジールはすかさず、腰に装備していたナイフでその怨霊達を斬って退けた。

大丈夫か、と背後にいるレイアに声をかけると、彼女は「は…はい」と呆然とした感じでコクコクと頷く。



 ヴァアアアアアア



業を煮やしたのか、怨霊の大本が超音波のような声を発した。

あまりにも不快で耳障りな音に、カナンとアンジール以外の人は耳を抑える。

その音波により、ぱりーんと窓が割れてしまい、そこから黒い霧は素早くでていってしまう。





【カミングアウト】





「外へ逃げたぞ!」


アンジールのその一声の直後、カナンは窓を開けると俊敏な動きでそこから外へ飛びだす。


「すまないが、彼女を頼む」


アンジールは、レイアに目を向けるとアグリアの傍にいるようにお願いした。

開いた扉をくぐると、足を音を立てずに俊足で診療所から出て行った。


「僕達もいきましょう。ニルスさん!」


ジュードの言葉にニルスは少し逡巡するが、「…ああ、そうだね」と同意した。

ジュードは、レイアに視線を向けると、その意味を察した彼女は「了解した」と頷く。

そして、アンジールを追跡する様に、二人は診療所を後にする。


「気をつけてね…」


その後ろ姿を見ながら、レイアは彼等の無事を祈った。





【つづく】

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